はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

ミズカマキリ

2023年07月31日 | 昆虫類+αのお話

 代表的な水生昆虫の1種「ミズカマキリ」。

 名前にカマキリと付いていますが、カメムシ目の昆虫で、陸生のカマキリとは全く別の昆虫になります。

 ミズカマキリの体長は40~45mm、体は細長く、体の色は灰褐色~暗褐色で、前脚は捕獲用、中後脚は遊泳用になっています。

 肉食性で、捕獲用の前脚を使い、オタマジャクシや小型の魚類、水面に落下した陸生昆虫などを捕獲し、体液を吸い取ります。

 体液を吸い取る食事の方法は、アメンボやマツモムシといった肉食性カメムシ目の昆虫だな~と思うので、陸生のカマキリとは全く異なりますね。

 

 ミズカマキリは、日本全国に分布し、水田や池、沼などに生息し、ある程度の水質汚濁には耐性があるものの、農薬に対しては弱いので、減少傾向にある水生昆虫の1つです。

 最近は、無農薬や減農薬でお米を育てる方も増えているので、少しずつですが、ミズカマキリを見かける機会も増えてきました。


 ミズカマキリは、常に水の中で生活しているわけではなく、天気の良い日には、水中から飛び出し、空を飛ぶこともあります。

 僕自身、飛び立つ姿を見たことはありませんが、ある日、車の上で亡くなっているミズカマキリがいました・・・。

 何が起こったのか、分かりませんが、水の中から飛び出して、着陸した場所が車の上だったのかな・・・。

 そして、あまりの暑さで、亡くなってしまった、のかな (T_T) 。

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ルリタテハ

2023年07月30日 | 昆虫類+αのお話

 瑠璃色の模様が素敵なチョウ「ルリタテハ」。

 ルリタテハはタテハチョウ科のチョウで、名前のとおり「瑠璃色の模様がある」ところが名前の由来となっています。

 体長は25~45mm、森林の中でも平地やその周辺に生息し、森林以外にも里山や農地、都市部の公園や緑地と幅広い環境で出会うことがあります。

 瑠璃色の模様が特徴的で、その上、ルリタテハに似たチョウがいないので、すぐに覚えられるチョウですね。

 しかし、瑠璃色の羽の裏は、落ち葉や樹皮に似た模様なので、見失うほど景色に溶け込んでしまいます。

 瑠璃色の派手な模様が目立つ分、羽を閉じると全く目立たないので、そのギャップを利用して、外敵から身を守っているのかもしれませんね。

 

 次はルリタテハの幼虫。

 ルリタテハの幼虫は、サルトリイバラやユリ科の植物の葉を食べます。

 森林の中では、サルトリイバラの葉を観察すると出会えると思います。

 農地や公園などでは、ユリをターゲットに観察すると、出会えると思います。

 見た目は刺々しく、毒をもっているイラガのような姿にひるみますが、毒はないので、触っても大丈夫です。

 

 本ブログ恒例、毛虫を触る (^_^;)。

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樹木の蛍光物質 × ブラックライト

2023年07月27日 | 樹木・草花のお話

 バットに使われる樹木で有名な「アオダモ」。

 その「アオダモ」や「マルバアオダモ」を水に漬けて、ブラックライトを当てると青く、美しく光ります。

 

 なぜ、樹木は、このような蛍光物質をもつのか。

 光合成の関係で、蛍光物質が光エネルギーの伝達に役立つそうですが、それは一部らしく、積極的に蛍光物質を備える理由は、明確になっていないそうです。

 

 まー、そんな難しい話は置いといて、気になるのは、「他の樹木も光るのか?」ということです。

 

 いろいろ試してみたので、その動画がこちら ↓ ↓ ↓ 

 

 

 ご覧いただいたウメ、ウバメガシ以外にも、アカメガシワ、ノグルミ、ウツギ、クサギも光りました。

 それでも、やっぱり、アオダモが一番美しいですね !(^^)!

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合意形成

2023年07月20日 | 人材育成・コミュニケーションのお話
 今回の講義は「合意形成」。

 そもそも、合意形成とは「チームメンバーや関係者の意見を一致させること」であり、相手を説得したり、相手を説き伏せたりする行為ではありません。

 お互いの意見を納得いく形に導き、その上で、合意を取り、その合意の下で決定された意見や提案に対しては、各々が当事者意識(自分事として意識する)をもつことも重要です。

 不満や不安を残したまま、力業で合意させたものは、合意形成をとは言いません。

 

 合意形成は、お互いに意見を出し合い、納得いく形で合意することが重要です。

 なので、合意形成には「論理」と「心理」の両方が重要です。

 

 今回、和歌山県農林大学校林業研修部(以下、和歌山林大)において、合意形成についての講義を行いました。

 和歌山林大の学生さんたちには、合意形成には論理と心理が重要であることを体感し、理解いただくため、ゲームを通じて、合意形成を学んでいただきました。

 

 さて、合意形成を進めるうえで、一番大切なことは、「目的の共有・共感」です。

 目的が明確にないと、合意形成は進みません。

 目的はゴールです。

 このゴールに向けて進むからこそ、方向性を見失わず、合意形成が図れます。

 そして、そのゴールに対して、双方が共有・共感していないと、一緒にゴールへ向かうことは出来ません。

 

 次に大切なことは「目的を達成するための具体的なアクション」です。

 目的(ゴール)に向かって、どのようなアクションを起こすべきか。

 目的達成に向かう起こすべき行動を具体的に提案しないと、またまた合意形成は進みません。

 イイ感じの行動やアクションを提案できても、目的達成に向かわなければ、意味がありません。

 明確な目的があって、具体的なアクションが立てられ、合意形成を進めることが出来ます。

 

 余談ですが、僕自身、目的が不明確なまま進む会議やミーティングを何度も見てきたので、正直、そういうのは気が滅入ります(^_^;)。

 会議やミーティングを開くことが目的になっているので、そこで行われている内容の大半は意味がないんですよね・・・(´▽`)。

 

 そして、合意形成のポイント! 

 実は、チームビルディングにおいても重要な「心理的安全性」が、合意形成でも重要になってきます。

 心理的安全性が保障されるからこそ、合意形成に必要な「心理」が満たされます。

 何より、「自分の意見が真逆であっても、発言していいんだ」という安心があるか否かで、チームの雰囲気が大きく異なります。

 

 合意形成を進める中で、もしも、意見が食い違ったら、

 さて、今回の講義の中でも発生しましたが、多数派は「まぁまぁ、少数派の意見も聞こうよ」と上から目線で言いがちです。

 実はこの行為、少数派の意見は聞くけど、意見は聴かないんです。

 多数派は、意見を変えるつもりはなく、通過儀礼として少数派の意見を聞きがちです。

 しかし、大抵の物事は、事前に正解や結果はわかりません。

 なので、必ずしも多数派の意見が正しいとは限らないし、少数派の意見が正しいとも限りません。

 

 だからこその合意形成です。

 

 仮に、チームとして、多数派の意見で方向性がまとまり、結果、少数派の意見が正しかったとしても、少数派の人間は、「ほら、やっぱり私たちの方が正しかったじゃない!」と言ってはいけません。

 なぜなら、多数派の意見で進めるという合意形成を図ったわけですから。

 それを言ってしまったら、「少数派の意見で合意形成を図れなかった」という点を責められても仕方ありません。

 合意形成を図り、チームとして結論付けたなら、それはチームの責任です。

 

 人それぞれ、視点や価値観、考え方が異なります。

 それが人の多様性です。

 人の多様性を受け入れ、互い違う意見があるからこそ、様々な視点で議論できます。

 ただし、目的が明確でないと、正しいか正しくないか的な本質的ではない議論になってしまいます。

 だからこそ、目的の明確化が必要なのです。

 

 合意形成には、明確な目的・人の多様性を受け入れる・心理的安全性の要素が不可欠です。

 こうした要素が整うことで、「論理」と「心理」が満たされ、合意形成を図る・進めることが可能になります。

 

 「心理」が満たされないと、「言ってることは正しいし、分かるけどさー」の「・・・けどさー」が出てきます。 ( ゚Д゚)

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林業視察ー宮崎県 再造林ー

2023年07月19日 | 株式会社はぐくみ幸房のお仕事

 前回の報告からだいぶ経ちますが(^_^;)、宮崎県の林業視察~再造林編~。

 

 16年間、素材生産量日本一の座に輝き続けた宮崎県。

 再造林という問題に直面しています。

 一番の問題は「人手不足」。

 伐採量に対して再造林が追い付かない。そして、造林作業はマンパワー。

 それでも、各地域で工夫して取り組み、再造林率100%を掲げる地域もありました。

 あと「地拵え」も大切にされていました。

 それについては、強く共感できるので、いずれ「無地拵え」なんて言葉は死語になるんじゃないかなと思います。

 まー、そもそも、地拵えの目的が果たせていない無地拵えに価値はないと思います。

 

 加えて、「機械地拵え」は出来るところで実施して、基本的に「人力地拵え」は0にならないという考えも共感しました。

 そうです、「人力地拵え」は無くなりません (´▽`)。

 

 紀伊半島で林業に関わってきた者からすると、宮崎県の地形は羨ましい。

 緩い、緩い。

 一方で土質・地質は、紀伊半島と比べると軟らかい傾向にあり、その上、水が流れる川・小川・谷が多く(よく目立つ)、大雨が降った時に崩土するリスクが高いという一面もあります。

 

 もう1つ、紀伊半島と比べて宮崎県の良かったところ。

 伐採跡地や再造林地に「茨(イバラ)」がほとんど生えていない。

 キイチゴ類、サルトリイバラ、カラスザンショウ、タラノキなどトゲトゲ系の植物がほとんど見当たらない。

 ジャケツイバラなんて、影も形もない!!

 これは羨ましいと思いました。下刈りの時にチクッとしないし、イラっとしない ( ゚Д゚)。

 

 再造林にあたって、土地ごと購入する場合もあり、今後、再造林を進めるうえで、土地を含めて森林所有者になるという案件・動きが表面化されるのではないかなと思いました。

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林業視察ー宮崎県 大型製材工場ー

2023年07月11日 | 株式会社はぐくみ幸房のお仕事

 久しぶりの林業視察。

 今回は宮崎県。

 まずは、宮崎県に作られた大型製材工場。

 規模がすごい!の一言に尽きます。

 製材品だけでなく、見渡す限り丸太。

 月50,000㎥の材が動いているそうです。。。

 

 大量の丸太が次々と製材されていきます。

 

 ズラッとならぶ高温乾燥機。

 

 このような大型製材工場が、地域の木材需要を生み、国産材供給を支えている。

 的なことを、世間一般的によく言われますが、支えているのは工場ではなく、ここで働く人たちです。

 ここで働いている一人一人の従業員さんが、工場を支え、それが地域の木材需要を生み出し、支えています。

 大切なのは、この工場で働く人たち

 製材工場を見学させていただき、改めて、「従業員は大切」だと思いました。

 まだまだ暑い日が続くけど、熱中症に気を付けてください!

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林分の発達段階

2023年07月06日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 僕の中で、森林は樹木が集合した空間であり、森林を育てることは、木を育てることという認識を持っています。

 樹木医という立場からすると、健康な樹木の集合体が健康な森林であり、不健康な樹木の集合体が不健康な森林です。

 森林の基本構成は「樹木」であること。 

 

 というわけで、その樹木の成長に応じるように、森林も発達していきます。

 このことを「林分の発達段階」と言い、藤森隆郎先生が提唱したもので、森林づくりを進める、森林施業を体系化する上で、非常に重要な知識です。

 しかし、色んな講座で、「ご存じですか?」と尋ねても、残念ながら「?」という顔をされる方が多いです。

 林業大学校や林学の大学を卒業された方でも、「?」という顔をされる方もおられ、「遷移のことですか?」と混在される方も・・・。

 

 森林づくりや森林施業に関する講義の依頼を受けたときは、室内外関わらず、「林分の発達段階」をお伝えし、現場で応用するように心がけています。

 目標とする森林、目指すべき森林をイメージする上で、「林分の発達段階」は分かり易いので、理解しておきたい知識ではないでしょうか。

 なお、この投稿に載せている絵や表は、「森林生態学 持続可能な管理の基礎(藤森隆郎著)」を元に、作成したものです。

 

 動画でも紹介しているので、併せてご覧下さい。

森の知識はぐくMOVIE「林分の発達段階」

 

 林分の発達段階は、4つに分類されます。

 なお、( )書きの林齢は、イメージを持っていただくための目安の林齢です。

 この林齢に達すれば、その段階になったということを示すものではありません。

 発達段階は、地域・環境・樹種などによって異なり、じっくり、森林を観察し、その変化に気づかないと発達段階を判断することは出来ません。

 机上の数値ではなく、現場重視です。

 

 林分発達段階は、次の4段階に分けられます。

 1「林分初期段階(おおむね10年生まで)」

 2「若齢段階(おおむね10年生~50年生まで)」

 3「成熟段階(おおむね50年生~150年生)」

 4「老齢段階(おおむね150年生以上)」

 

 次に、それぞれの段階における森林の特徴についてです。

 

「林分初期段階」

 林分がスタートする段階です。

 人工林だと、人が山に苗木を植栽することで、林分がスタートします。

 天然林だと、風で種が運ばれて発芽するなど、自然に植物が芽生えることで、林分がスタートします。

 

 特徴として、

・林床まで光が直接当たる明るい環境。

・様々な種が侵入するため、種間競争が激しい。

人工林では、下刈り、つる切り、除伐といった育林施業が必要な林分。

  → 植栽木を激しい種間競争に勝ち残らせるため、下刈りや除伐を行う。

 

 この段階の森林のイメージです。

 人工林。

 天然林。

 

「若齢段階」

 樹木の成長が旺盛な時期で、樹木同士が接する様になる段階で、林冠が閉鎖する森林です。

 樹木の成長が盛んなので、人工林だと、間伐しても、再び、林冠が閉鎖します。

 

 特徴として、

・樹木は若く、直径も小さいが、「互いに接する」、「混み合う」、「せめぎ合う」という感じの林分。

・強度の閉鎖状態になる。

・樹木は育ち盛り。光合成を盛んに行い、どんどん成長する。

・林冠が閉鎖するため、大半の光が使い尽くされ、林床まで光がほとんど当たらない暗い環境。

・下層植生(林床植生)が極めて乏しい。

・種の多様性も乏しく、土壌の発達も停滞し、表層土壌の流亡も起こる場合がある。

 

 この若齢段階は数十年続きます。(林齢的には40~50年生までとされています。)

 成長が旺盛な時期を迎える段階なので、適切な時期に適切な施業が必要な状態の森林が若齢段階です。

 若齢段階の時に施業を行ったか否かによって、次を迎える成熟段階の状況も異なってきます。

 特に、スギやヒノキなど針葉樹の単一な人工林ほど、顕著な差が生まれます。

 

 若齢段階の森林のイメージとして、

 人工林。下層植生が生えていない。よく見る人工林ですね。

 成長が旺盛な時期で、間伐しても、すぐに林冠が閉じやすい。

 だから、若齢段階の時点で、適切な時期に間伐を行うことが重要であると言うことが理解しやすいと思います。

 一方で、年輪幅が狭い木材を生産したいなら、若い時期の旺盛な生長量をコントロールする必要があります。

 間伐だけではコントロールしがたいので、生きた枝を除去する枝打ちを行い、樹木の生長量をコントロールします。

 

 そして、天然林の若齢段階も下層植生が乏しい。

 

「成熟段階」

 樹木が成熟期を迎え、樹木の成長が緩やかになります。

 そのため、間伐や自然枯死によって出来た林冠の空間は、すぐに閉鎖されず、下層植生が少しずつ生え始める段階の森林です。

 

 特徴として、

・劣勢木の枯死や間伐などにより樹木が減少し、林冠が開いても、すぐに閉じない林分。

・林冠に隙間が生まれる林分で、林床まで光が届くようになるため、下層植生(林床植生)が増え始める。

 → 複層林が成立する段階

・種の多様性が増し、水土保全の機能が高まる。

 

 上層木の樹種によりますが、この状態は100年前後かそれ以上続くとされています。

 

※若齢段階=林冠の隙間がない。下層植生がない(少ない)。

※成熟段階=林冠に隙間がある。下層植生がある(多い)。

 

 成熟段階の森林のイメージ。

 多くの方が、「理想とする人工林」、「美しいと感じる人工林」が成熟段階の人工林です。

 まずは、約90年生。

 

 約120年生前後の人工林

 

 約150年生以上の人工林。

 

 天然林のイメージ。

 ※少し無理矢理な写真ですが、あくまで、イメージです・・・。

 

 

4.老齢段階

 樹木の老齢化が進み、大きな枯死木や倒木が見られ、林冠に大きな空間ができ、そこに次世代の稚樹が見られる段階の森林です。

  

特徴として、

・樹木が老齢に達し、大木の枯死が見られる。

・大木の枯死や攪乱などの倒木によって、林冠に大きな穴が開き、成熟段階よりも光が差し込み、局地的に明るい環境ができる。

・小径木~大径木、成長が旺盛な木~衰退木、次世代を担う芽生えたばかりの樹木~枯死木まで幅広い樹齢層に恵まれた林分。

・林分の構造が複雑で、生物多様性や水土保全の機能が高い。

 

 木材生産を目指す人工林は、老齢段階に至るまで育てることは、難しく(ほぼない)、人工林は成熟段階の途中で終わるとされています。

 植えた木が、自然に枯死するまで維持し続ける人工林って、ないですよね・・・・。

 

 老齢段階の森林のイメージ。

 大小様々なサイズの樹木が、芽生えたばかりの樹木から倒木まで同時に存在する森林。

 

 常緑樹の老齢段階。

 

 そして、ここからが重要なところです。

 それぞれの段階において、発揮される機能が高い/低いを示したグラフを藤森先生が示しています。

 純生産量は成熟段階を迎えると、低下するとされていましたが、近年、高齢人工林の研究が進み、成長は低下せず、横ばいという風に見直されています。

 このグラフのとおり、水源涵養や生物多様性などの機能は、成熟段階から上がるとされています。

 よく、「公益的機能重視の森づくりをしたい!」と言う方には、「成熟段階または老齢段階の森林を目指しましょう。」と説明すると同時に、それがいかに困難で、長い道のりであることを理解してもらい、後継者など人材育成も必要などのお話もさせていただいています。

 「災害に強い山を作りたい。」

 「水が豊かな山を作りたい。」

 「生物の多様性が豊かな山を作りたい。」

 こうした山づくりを目指すのであれば、目標は成熟段階の後期~老齢段階になります。

 そのためには、目の前にある伐採跡地にどんな樹種を植え、どんな林分初期段階を作り上げるのか。

 また、若齢段階の林分を迎えたとき(または目の前の若齢段階の林分)、どのような施業が必要なのか、をしっかりと観察し、考える必要があります。

 

 

 次に、森林に期待する働きのアンケートでは、災害防止、温暖化防止、水源の涵養がトップ3で、その次が木材生産となっています。

 

 そして、現在の齢級別森林面積。(※1齢級は5年生刻み。例:10齢級は46~50年生。)

 成熟期を迎えつつある人工林が増えています。

 これから、国民が期待する公益的機能の高まりが始まる段階にある人工林が増えてくる・・・とも考えられます。

 もちろん、手入れが行き届いていない人工林もあるので、全ての人工林とは言い難いですが、公益的機能の高い森林に誘導していく可能性は0ではないと思います。

 しかし、現状は、国民が期待する第4位の木材生産を進めるため、皆伐を推進する傾向にあります。

 

 林分発達段階に基づき、現場を観察すると、その様子をうかがえる点が多々あります。

 もちろん、若齢段階でも、環境や手入れ次第では、下層植生が生えている林分もあります。

 でも、それは光が入りやすいという環境が加わっている可能性もありますし、下層植生自体がわずかな光環境を好む種類である可能性もあります。

 様々な環境や条件が加わることによって、林分発達段階が100%、そのまま現場と一致するわけではないですが、現場毎にその傾向を観てみると、理論どおりだと納得いくものが非常に多いです。

 

 林分発達段階、それぞれの段階が発揮する機能の高い/低い、齢級構成、国民アンケート。

 それぞれをつなぎ合わせて考えてみると、どういう方向を目指すべきなのかな、自ずと見えてくる。と、個人的には考えています。

 よく、水源涵養など機能別でゾーニングしていますが、機能別より発達段階をベースにゾーニングし、その段階に応じて、機能を柔軟に発揮させた方が良いのでは?と個人的には考えています。

 

 成熟段階を迎えた木材の生産をどんどん進めていくべきなのか。

 国民が求める公益的な機能の発揮を目指した森林づくりをどんどん進めていくべきなのか。

 機能と木材生産と両立できる方法を進めていくべきなのか。

 

 目標や方向性を機能に絞るのもいいですが、目指すべき森林の姿をイメージするなら、林分発達段階が分かりやすいと思います。

 これも、1つの良い指標だと思うので、ご存じなかった方は、これを機に、興味を持っていただきたいです!

 林分の発達段階など、こうした基礎的知識を理解し、身につけた上で、現場を見ると、山の見方が変わると同時に視野も広がり、そして、選択肢も広がり、山での活動がますます楽しくなります。

 もちろん、森林散策でもこの知識は大いに役立ちます!

※2019年11月の記事を改編

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