はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

クヌギの樹液にカブトムシたちが群がる理由

2017年07月23日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 この時期お馴染みの・・・「なぜ、クヌギの樹液にカブトムシたちは群がるの?」というお話。

 

 夏、樹木はもっとも光合成を盛んに行っている時期です。

 光合成によって、葉で生産された糖などは、師部を通って樹体全体に送られます。

(師部=しぶ。外樹皮のすぐ内側に作られる組織。光合成生産物を樹体全体に輸送する器官。外樹皮と形成層の間にある。)

 樹液は師部を傷つけたときに出てきます。

 そして、師部は糖を輸送しているので、出てくる樹液は、基本的に甘い。

 しかし、病原菌や害虫から身を守るため、樹液の中にポリフェノールなどの抗菌物質が含まれています。

 その主な成分は「タンニン」で、抗菌物質が多いほど渋みが強い樹液になります。

 一般的に樹皮が薄い木ほど、抗菌物質を多く出していると考えられています。

 例えば・・・ヒメシャラやアオハダ、身近な樹木だとリョウブやサルスベリ。

 (ヒメシャラ)

 (アオハダ)

 樹皮が薄い樹木は、薄いという欠点を「抗菌性物質を多量に出す」ことで補っています。

 「じゃあ、初めから樹皮を厚くすればいいじゃない?」

 と、思うかもしれませんが、樹皮が薄い樹木は、「樹皮で光合成する」という戦略をとっています。

 樹皮の薄い樹木は、生き残るために考え、考えぬき、

 「ん~・・・・効率よく光合成するために樹皮を薄くしよ!

  傷ついたら抗菌物質をいっぱい出したらエエねん。

  まずは、光合成して、稼がな!」

 という結論を導き出した・・・のかも。

 ちなみに、軽く樹皮を傷つけて、めくると、緑色になる樹種は、樹皮下光合成をしていると考えられます。

 ※写真のように傷つける行為は、樹木に良くないので、マネをしないで下さい※

 

 話を戻します。

 「樹皮の薄い樹木は、抗菌性物質が多く含まれているから渋みを感じる」と解釈してください。

 では、クヌギのように樹皮の厚い樹木は・・・

 クヌギの樹皮は、コルク層が厚く、ゴツゴツしています。

 このコルク層は、「スベリン」という”微生物が消化・分解しにくいロウ物質”から出来ています。

 なので、コルク層が厚ければ厚いほど、病原菌や害虫が攻撃できない強力なバリア(盾?)になります。

 リョウブやサルスベリのように樹皮が薄い樹木は、成長するたびに古い樹皮を捨てて、新しい樹皮を作るので、パラパラと剥がれます。

 しかし、クヌギのように樹皮が厚い木は、古いコルク層の上に新たなコルク層を作るので、樹皮がパラパラ剥がれず、より樹皮が厚くなっていきます。

 さ・ら・に!

 クヌギの樹皮は、タンニン成分を多く含んでいるので、樹液に抗菌物質を多量に含む必要がないため、樹液が甘く、自ずとカブトムシたちが集まるというわけです。

 

 カシ類はクヌギよりも樹皮が薄いので、抗菌物質が多いと思われます。

 なので、カシ類には、あまりカブトムシたちは集まりません(もちろん、全く集まらないというわけではありません)。

 が、カシノナガキクイムシの被害を受けたアラカシ・ツブラジイ(コジイ)・シラカシなどから出てくる樹液に、カブトムシやクワガタムシ、カナブンやスズメバチが集まっています。

 これは推測ですが、おそらく、カシノナガキクイムシが保有する菌の1つである酵母菌と樹液がいい感じに発酵しているため、その香りで誘われているからではないかと、思います。

 カシノナガキクイムシの被害を受けたウバメガシから流れる樹液は、3月くらいに舐めると渋みがなく、甘い。

  

 ちなみに、大きいクヌギでカブトムシたちを探すと、よく高いところで群がっているのを見かけるかと思います。

 クヌギは、成長するたびにコルク層が厚くなるので、幹の下部ほどコルク層が厚く、樹液が出にくく、幹の上部だとコルク層が薄く、樹液が出やすいため、カブトムシたちは高いところに群がるというわけです。

 なので、「カブトムシたちが集まりやすくかつ、捕りやすい森」を作るには、絶えず、樹液の出る若いクヌギがある状態を維持することです。

 

 最後に、クヌギを傷つける肝心な虫の話を少し・・・。

 まず、幹に卵を産み付ける「カミキリムシ」。

 (写真はアラカシの産卵痕です)

 この傷口から樹液が出てきます。

 ただし、コルク層が厚すぎると産卵できないので、コルク層の薄い若木(もしくは薄い部分)に産卵します。

 

 もう1つ重要な虫が「ボクトウガ」の幼虫。

 この幼虫が、絶えずクヌギの内樹皮を傷つけて、樹液を漏れ続けさせるそうです。

 その目的は、「樹液に集まってくる小さな虫」。

 ボクトウガの幼虫は、樹液に集まる小さな虫を食べるために、内樹皮を傷つけて、クヌギに樹液を出せ続けるそうです。

 

 まとめ。

 1.樹皮が薄い樹木の樹液は、病原菌や害虫から身を守るため、抗菌物質を多く含むため、樹液が渋い。その代り、樹皮で光合成できる。そして、古い樹皮を捨てて新しい樹皮を作る。

 2.クヌギは、コルク層を発達させることで、病原菌や害虫から身を守り、樹液に抗菌物質を含む必要がないため、樹液が甘い。その代り、樹皮で光合成できない。そして、古いコルク層の上に新しいコルク層を作るため、成長するたびにコルク層は厚くなる。

 

 以上、最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたm(_ _)m。

 

 以下、関連記事です。

夏休み! 樹液に集まる虫達

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

林業振興 地域振興

2017年07月18日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 森林・林業関係に携わる者として、地域振興も念頭に、切り離さず考えないといけないと思っています。

 とはいえ、地域振興は簡単に成功するものではありませんし、やっぱり難しい。

 しかし、近年は、成功した地域振興の事例紹介や講演会など学べる機会も増え、重要な共通点というものも見えてきています。

 

 個人的に重要視しているものとして、「地域のお金は地域で回す。」

 単純に言えば、地域外にお金がどんどん流れると地域は衰退し、地域内でお金をどんどん回して、地域外からお金を得ると地域は振興する。

 地域で生産したものを地域で消費する=地産地消

 地域で生産したものを地域外で消費する=地産外消

 さらに、商品を生産する際に消費する物も地域の物を使うということも重要で、

 地域で消費するものは地域で生産したものを使う=地消地産

 

 例えば、野菜1つ生産するにしても、種、苗、肥料は地域のものを使う。

 この場合、大手のホームセンターで購入するのではなく、地元で生産されて、地元で販売しているお店で、となります。

 僕自身、まだまだ勉強中ですが、1つの商品を生産するために消費する物も、なるべく地域内で賄い、生産した商品は地域外で消費または地域外の人を招き、地域内で消費する、というシステムが地域振興を成功させる1つのポイントではないでしょうか。

 

 地域振興について、成功事例や講演会などで、色々勉強しながら、色々考えていると、ふと「林業の振興は、本当に地域振興に繋がるのか」と改めて考えるようになりました。

 少し極端な例かもしれませんが、図を使いながら説明を。

 A村に森林を所有するB市の山主さん。

 そこへC町の伐採業者が山主さんから立木を買いました。

 伐採業者は、伐採した立木をD町の製材所へ売りました。

 D町の製材所は、Z市に製材品を売りました。

 さて、お金の流れを見ると、A村にはお金が流れていません。

 実際にこうした取り引きもありますが、このような形で林業が振興しても、地域振興に繋がるか、「地域内でお金を回す。」という観点から見ると、疑問を感じます。

 で、この場合、問題は山主・伐採業者・製材所が地域外であることになるかと。

 山主もA村の人で、伐採業者も製材所もA村なら、地域内でお金が回っています。

 そして、地域の最終出口である製材所が、Z市に製材品を売れば、地域とすれば、プラス収支。

 岡山県西粟倉村の「西粟倉森の学校」が取り組んでいるイメージ・・・といえば、分かりやすいかなと思います。

 

 極端な例かもしれませんが、地域におけるお金の流れを見ながら考えると、必ずしも、林業振興=地域振興とは単純に言えないのでは?、という考え方もできるのではないでしょうか。

 

 仮に伐採業者がA村の業者であっても、従業員がC町に住んでいれば、従業員に支払われた賃金は、基本的にC町で消費されます。

 従業員がA村の住民なら、支払われた賃金がA村で使われれば、お金は地域外へ流れません。

 人件費も地域内の人に支払えば、地域外へのお金の流出は抑えられます。

 

 あと、電気代も地域外への支出の1つです。

 そこで、水力発電や木質バイオマス発電などで、電気も地域で生産すれば、地域外へのお金の流出を止められます。

 ただし、木質バイオマス発電の場合は、地域資源・収支バランス・発電規模などなど健全な経営が実現できるプランが不可欠です。

 長野県の「いいづなお山の発電所」は、稼働して早い時期(3~4年だったかな?)に黒字経営へと転換し、2号機は銀行の融資(補助金なし)により稼働したと聞いています(いずれも発電規模は2000kw未満)。

 こうした発電所が地域にあれば、電気代は地域で賄え、かつお金が地域外に流れていかないシステムが構築できるかもしれません。

 もちろん、発電用材の価格が適正であることは必須になります。

 

 最近は、農業法人として成功したビジネスの事例も紹介されています。

 こうした社長さんの中には、生産者が生産できなくなれば、ビジネスが成立しなくなるので、「生産者価格を守る」という共通点が多々見られます。

 さて、林業はどうでしょうか・・・。

 

 また、ヨーロッパでは「自国の食糧とエネルギーは自国で賄う」という考えがあるそうです。

 そして、グローバルとローカルが合わさった造語「グローカル(地球規模の視野で考え、地域視点で行動する)」という考え方も広がっているようです。

 ざっくり言うと、地域で生産したものを単に地域や国内で消費するだけでなく、海外への輸出も進めていくような・・・。

 脱線してきましたので、無理矢理、話を戻します。

 

 先ほどの図で示したような林業では、地域振興が進むのか、疑問を感じます。

 しかし、山主も伐採業者も製材所も同一地域内で、お金の流れを地域内で回すことができれば、地域振興に繋がる可能性が出てきます。

 地域外の山主が地域内の山主に変わるだけで、立木代というお金を地域内に回すことができると思います。

 林業振興と地域振興を考えたとき、近年、全国に広がりを見せている自伐型林業は、やはり無視できません。

 自伐型林業に取り組んでいる方が、実際に山主になっているか、否かわかりませんが、自伐型林業を中心に、お金の流れを地域内で回すシステムを作り出せば、地域振興に繋がっていく可能性は十分にあるのではないか、と考えています。

 でも、自伐型林業に取り組んでいる方が、山主になっていたら、それは「林家」になるので、自伐型林業をきっかけに「林家」を増やす・・・ということになるのかもしれません。

 あくまで、これは1つの考え方です。

 もちろん、大規模山主と大規模製材所が地域内に存在すれば、地域内で雇用も生まれますし、地域外に製材品を販売すれば、地域振興に繋がりますし。

 

 長々と、ごちゃごちゃ書き綴りましたが、今回、お伝えしたかったのは、

 地域振興は、地域内でお金が回る仕組みと地域内外で販売できる流通の構築が必要ではないか。

 林業振興は地域振興に繋がると言われていますが、実際にお金の流れを追いかけると、決して、そうとは言い切れない部分もあるのではないか。

 

 明確な答えというものはなく、それぞれの地域が有する強みを生かし、林業という1つの産業で地域を振興したり、地域全体で複数の産業を1つにまとめて地域を振興したりと、まさに十人十色で、1つのことに固執せず、柔軟な発想をもって、計画を立て、実践することが求められるのではないかな~と思います。

 現状で止められないことはありますが、変えられることは何か、そして、前向きにできることは何か。

 林業振興が地域振興に繋がると、単純に考えてはいけないと思う、今日この頃です。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マダラアワフキムシ 人工林の指標生物?

2017年07月16日 | 昆虫類+αのお話

 スギやヒノキの人工林を歩いていると、「泡のようなもの」を見かけませんか?

 Madaraawahuki01

 これは「マダラアワフキムシ」という虫が作った泡で、中に幼虫がいます。

 アワフキムシは、カメムシやセミと同じ「半翅目(はんしもく)」という昆虫の仲間です。

 泡は幼虫自身の排泄物から作られていますが、成分は石鹸と同じ成分(界面活性剤?)らしいです。

 泡から幼虫を引きずり出すと、不安になるのか、泡を探し求めるような行動を起こし、泡を見つけると、再び泡の中に潜り込みます。

 Madaraawahuki02


 泡の中に潜む理由は、外敵から身を守るため。

 小さい泡ですが、泡の中に侵入した外敵を溺れさせる(呼吸が出来なくなる?)そうです。

  

 根拠のない話で、全く申し訳ございませんが、「マダラアワフキムシが多い人工林は間伐が遅れている。」のではないか。

 「マダラアワフキムシが多い!」と思った人工林のほとんどは暗い。

 一方、林内の下層植生が多く、林内がそこそこ明るい人工林には少ないorいない。

 感覚的に「マダラアワフキムシが多い=間伐が遅れている」というだけの推測ですが、人工林の整備遅れを示す指標生物の1つではないかと、勝手に想像しています。

 根拠はなく、山を歩いて、山を見て、そう感じただけ・・・という話ですが、ホント、マダラアワフキムシが多い人工林は、暗いし、下層植生が乏しい人工林が多い。

 単に、下層植生が多いから見つけられないだけ、整備遅れの人工林だから見つけやすいだけ、という事なのかもしれませんが・・・。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カエルは英語でfrog?toad?

2017年07月11日 | 爬虫類・両生類のお話

 雨の日になると、道端に出現するヒキガエルとよく出会います。

 ヒキガエルを真正面から撮影するとカワイイ感じに撮影できます。



 さて、カエルは英語で、frog(フロッグ)?

 それともtoad(トード)?

 実は、toadはヒキガエルで、ヒキガエル以外のカエルをfrogと使い分けます。
 図鑑でヒキガエルの英名を調べてみると、ヒキガエルだけtoadで、それ以外はfrogになっていると思います。



 ヒキガエルのイボイボした姿が醜いので、他のカエルと区別しているらしく、toadは、「嫌な奴(物)」と言う意味もあるそうです。

 

 10年以上前、大阪市内で撮影したカエルやヘビの写真を展示させてもらったことがあり、その時にアメリカ人のお客さんが来られたので、ヒキガエルはtoad、それ以外のカエルはfrogと言うのか、質問してみました。

 すると、ヒキガエルの写真を指さしながら、「そういえば、これはtoadっていうね。それ以外はfrogやわ~」と、流暢な関西弁で答えてくれました。

 「そういえば」といった感じでしたので、少なくとも、そのアメリカの方はfrogとtoadを意識して使い分けていた感じではなく、言われてみれば・・・みたいな感じでした。

 同じカエルを一方はfrog、一方はtoadと使い分けるという感覚は、あまり日本語にはない感じがします


 という今、手元にカエルの図鑑があれば、ヒキガエルの英名をチェックしてみてください。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする