先日、ちょっと仕事で、兵庫県に行って来ました。
そこで、林業遺産に登録されている「台場クヌギ」を視察。(場所は兵庫県川西市というところです。)
台場クヌギとは、炭の原木を採るために、クヌギを地上1~2mの位置で幹を伐採し、そこから発生した芽を生長させる特殊な仕立て方をいいます。
通常、クヌギやコナラを萌芽更新するときは、地際で伐採しますが、この地域では1~2mの高さで伐採しています。(ウバメガシの択伐も地際伐採です。)
約8年サイクルで伐採し、利用する。
これを繰り返すことで、切り残した1~2mの幹が太くなり、写真のようなクヌギになります。
中には、樹齢130年以上のクヌギ、つまり130年以上も利用されてきたクヌギも存在するそうです。
この台場クヌギは、室町時代から行われている施業で、古い文献にも記録が残されており、歴史・文化両面から価値ある森林・林業技術です。
ここで製炭された炭を「池田炭」とか「一庫炭」といい、炭の切り口が菊のようにキレイな模様から「菊炭」とも呼ばれ、”茶席に使われる最高級の炭”として、非常に付加価値の高い炭として評価されています。(表面をよく見ると、樹皮が残っているのも分かります。)
小林一茶や豊臣秀吉もこの炭でお茶を楽しんだそうです。
ちなみに、樹幹部に洞が形成されるため、オオクワガタの生息地で有名な場所でもあります。
台場クヌギのような仕立て方は、
「萌芽した芽がシカなどの食害を受けにくい」というメリットがある一方で、「萌芽した芽は、強い風が吹くと折れる可能が高い」というデメリットがあります。
逆に、通常の萌芽更新では、「萌芽した芽は強い風が吹いても折れにくい」というメリットがある一方で、「シカなどの食害を受けやすい」というデメリットがあります。
シカの生息地が多い場所では、台場クヌギのような仕立て方を、しかし、海岸沿いなど強い風が当たりやすい場所では通常の萌芽更新を、という風に、それぞれの技術の特性を理解した上で取り入れると、楽しい山づくりにつながると思います。
ただし、風があたりやすい、あたりにくい山の見極めは難しい・・・・。
周辺が伐採されるなど環境が変化すると、風の当たり方も変化します。
すべてを台場クヌギ風に仕立てるのではなく、緩衝帯や防風帯のような林を設けた上で仕立てるなど、リスク対策も考えて行い、それが思い通りにいくと、尚、楽しい山づくりになると思います。