はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

植栽地におけるシカ被害対策 防護柵

2019年12月13日 | 狩猟・獣害のお話

 さて、今回の記事は長文です(^_^;)。

 林業におけるシカ被害が大きく取り上げられるようになったのは、1990年代がスタートだったと思います。

 1960~70年代は、ネズミやノウサギの被害が多く、シカの被害はほとんど無かったと言われており、1980年代から、少しずつシカの被害が報告されるようになりました。

 僕自身、林業業界に関わったのは2000年からなんですが、当時のベテランの方は、「昔は、シカなんて、ほとんど見ないし、珍しかった。」と言ってました。

 

 そして、現在。

 シカ被害は、非常に深刻な状況です。

 

 植栽した木が食べられ、

 なんとか、食害から免れた木も、皮を剥がされ・・・

 そして、収穫目前で、剥がされてしまったり・・・

  林業で生産される木材は、長期間、シカの被害を受ける環境に置かれているので、シカ被害対策は本当に深刻です。

 

 さて、植栽地におけるシカ被害対策は、大きく分けて2種類。

 1つ目は「防護柵(防護ネット)」。

 2つ目は「単筒(防護筒)」。

 

 今回は、まず、防護柵について、お話しします。

 ただし、防護柵の規格など細かな説明は省略します。

 これまでの現場経験やシカ被害に関する試験研究の経験を元に、お話しさせていただきます。

 

 防護柵最大の問題点は「壊れる」ことだと思います。

 壊れる主な原因として、

 倒木による全壊または半壊

 雨水が原因で土砂が流出し、柵が全壊する。

 同じく土砂の流出で、柵下に隙間ができる

 落石や崩土によって、ネット部が切れたり、柵が転倒するなども。

 動物によって、防護柵が破壊されることもあります。

 ネット下部に打ち込まれたアンカー杭が抜かれる。

 ネットがかみ切られて、大きな穴が空く。

 

 このように壊れた・壊された部分から、シカやウサギが防護柵の中に侵入し、植栽木を食害します。

 ネットの穴から出入りする動物たち。

 

 アンカー杭が抜けた防護柵の隙間から出入りする動物たち

 

 防護柵が壊れると、シカの侵入を許してしまいます。

 壊れる原因も倒木、土砂流出、動物など様々なので、防護柵設置後の巡視やメンテナンスは非常に重要な作業になります。

 

 さて、ここからは、僕個人の仮説です。

 これまでの経験から、「シカは防護柵を破壊できるような能力を、それほど持っていない。」ということです。

 研究員時代に、カメラを仕掛けたところ、シカが防護柵に突っ込んで、押し返されるという動画をいくつか確認しました。

 一方で、防護柵を破壊する様な行動は見られなかったし、シカの体型からアンカー杭を抜くことも難しいと、早計ですが、そう考えました。

 アンカー杭は、イノシシが鼻先で掘り起こす動画がいくつか確認できたので、アンカー杭を抜く主な犯人はイノシシだと思います。

 シカは防護柵に突っ込んで押し返されることが多いけど、カモシカは防護柵に足を乗せて、乗り越えようとするような行動が見られました。

 そして、防護柵の側に残された高さ1.8~2.0mの切り株に乗って、防護柵の上から抜け出すカモシカも確認。

 明確な根拠はありませんが、シカは草原、カモシカは山岳と概ね住み分けているので、シカはカモシカの様に後脚に体重をかけて、立ち上がるといった行動が出来ないのではないかなと思います。

 

 また、網目50mmのネットが噛み切られていますが、これもシカではないと考えています。

 そもそも、網目50mmでは、シカの口は入りません。

 シカが噛み切れる網目サイズは70mm以上だと言われています。

 しかし、網目100mmでも、シカは頻繁に噛み切らないのではないかと思っています。

 シカの歯は、何かを噛み切る様な構造にはなっておらず、樹木の葉を食べるときも、奥歯ですり潰す感じで食べています。

 奥歯を使って、ネットをゴリゴリと噛み続ければ、噛み切れると思いますが、シカは移動しながら食べて、糞を排泄しているので、ネットが噛み切れるまで、その場で噛み続けるような行動を取る可能性はそれほど高くないのではないかと・・。

 調査期間中、ネットを噛み切る様な行動どころか、その素振りすら見られなかったので、シカがネットを噛み切る様な行動を取る可能性はそれほど高くないと、これも早計ですが、そのように考えています。

 一方、ウサギ、イタチ、テンも防護柵内へ侵入しようとしたり、防護柵内から外へ出ようとしている行動が撮影されました。

 出入りしようと必死になって、執拗に防護柵のネットに向かう行動を見ていると、噛み切っている動物は、ウサギやイタチ、イノシシではないかなと・・・。

 明確な根拠はなく、そのような行動は確認できていませんが、シカよりも噛み切る能力はあるように思います。

 網目50mmのネットが切られているという事実を考えると、ノウサギやイタチが噛み切っている可能性を否めません。

 実際、ウサギはスパッと、植栽した木を食害しているので・・・。

 

 

 穴ぼこだらけで、都合の良い仮説ですが、色々考えると、やはり、シカは防護柵を破壊できる様な能力をそれほど持っていないのではないかと思うわけです。

 

 そこで、防護柵が壊れた場所やネットに空いた穴から、シカの出入りが確認できた場所を対象に、その破損箇所を直したら、シカはどのような行動を取るのか、見てみました。

 結果、ネットに頭を押し込んで跳ね返されたり、その場をウロウロするだけで、防護柵を壊そうとするような行動は確認できませんでした。

 ちなみに、防護柵にちょっとの隙間があれば、シカは侵入しようとします。

 たまに、角が引っかかってしまい、侵入に失敗し、もがいて暴れた結果、防護柵が破壊されることはありますが、はじめから破壊するつもりで防護柵を攻撃することはないと思います。

 

 そして、イノシシがアンカー杭を抜いたり、防護柵の下部ロープを加えて、グイグイと引っ張る行動が確認できたので、防護柵の破壊には、イノシシが大きく関与しているのかなと思っています。

 

 防護柵が壊れなければ、植栽木は無事に成長していますし、そのような報告も出ています。

 防護柵は、倒木、土砂の流出、落石などが原因で壊れる可能性が有ります。

 これを回避するためには、水が集まりやすい谷を避けて防護柵を設置するなど設置場所の工夫による対応が重要だと思います。

 あとは、台風や大雨の後は、現地を確認し、必要に応じてメンテナンスを行う。

 

 あれこれ考えると、防護柵の設置方法や設置場所を考えることが重要で、防護柵の規格はそれほど重要な要因ではないように思います。

 と言うわけで、個人的に、ネットは網目100mmがオススメで、ステンレス鋼線入りは無くても良いと思っています。

 シカが噛み切る可能性は高くないと思うし、もし、イノシシが噛み切るならステンレス鋼線では防げません。

 100mmだと、ウサギ、テン、イタチが抜けられるので、これらの動物が噛み切る可能性は低くなると思います。

 50mmだと、ウサギの侵入を防げるかもしれませんが、初めから防護柵内にいたウサギは、出られなくなります。

 

 網目50mmは、「獣類の口が入りにくく、切られにくい」、「ノウサギのような中型獣類が侵入しにくい」といったメリットがある反面、「重いため運搬が大変」、「土砂などが溜まりやすい」といったデメリットがあります。

 網目100mmは、「獣類に切られやすい」、「ノウサギが侵入する」というデメリットがあるものの、50mmより「軽いので運搬しやすい」、「土砂などが溜まりにくい」というメリットがあります。

 あと、腕が入るので、「防護柵の中と外の物の受け渡しが出来る」、「防護柵内の状況写真を撮りやすい」などのメリットもあります。

 

 結論は、ステンレス鋼線がない網目100mmの防護柵のネットは、軽くて運搬しやすいし、安い。

 ステンレス鋼線がある/ない、網目が100mm/50mmといった規格の差は、食害防止効果に大きな差は無いと思っています。

 それよりも、設置場所や設置方法の検討の方が重要では無いかと思います。

 

 明確な根拠が乏しい上、経験則を元にした穴ぼこだらけの仮説ですが、「シカは防護柵を破壊する様な能力を、それほど持っていない」。

 ならば、網目100mm防護柵を選べば、軽いので運搬しやすくなり、効率も上がるし、安い。

 そして、防護柵の設置は、地形や地質などを考えて、設置場所を決める。

 設置後は、定期的な見回りやメンテナンスを行う。

 この方法が、防護柵を活用したシカ害対策の最も有効な手段かなと思います。

 

 なお、シカの行動パターンは地域によって異なります。

 エサの好みも、地域によって異なります。

 なので、ここに書いた内容が、皆様の地域に当てはまるとは限りません。

 

 植栽地に設置された防護柵に近づく動物は、シカだけではありません。

 イノシシ、ウサギ、ネズミ、テン、イタチ、ニホンザルなどの動物も近づきます。

 こうした動物たちが少しずつ防護柵を壊し、そこから出来た隙間を利用して、シカが侵入を試みているのかもしれません。

 そして、防護柵が壊れる原因は動物だけでじゃなく、倒木や土砂の流出なども壊れる原因です。

 このように色々考えてみると、防護柵の規格よりも効率性と価格、設置場所や設置方法が重要だと思います。

 

 なお、設置場所や設置方法については、三重県林業試験場が詳しく紹介してくれているので、是非、そちらをご覧下さい。

    三重県】シカの侵入を防ぐ効果的な柵とは?

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アラゲキクラゲ

2019年12月09日 | 山菜・キノコなど食を楽しむお話

 山や森の楽しみ「おいしいキノコ」。

 僕は、警戒心がとても強く、安全に対するニーズが強いので、基本的に、毒キノコと識別が怪しいキノコは、美味しいと言われても、食べません(笑)。

 そんな僕がオススメする、おいしい天然キノコの1つが「キクラゲ」。

 ちなみに、写真のキクラゲは「アラゲキクラゲ」表面に毛があります。

 名前にアラゲ(荒毛)って付いてますが、毛って認識できるほど付いているわけではないです。

 お店で売られているキクラゲは、原木栽培や菌床栽培ですが、天然キクラゲも市販のものと遜色ないくらい美味しいです。

 

 アラゲキクラゲは、1年中出ているって感じですが、初夏から初秋にかけての発生が特に多く、広葉樹の倒木や枯れ木に発生します。

 森の中はもちろん、湿気と影のある環境で、広葉樹の枯れ木があれば、畑でも発生します。

 

 見つけても、すべて採り尽くさず、小さいキクラゲを残しておくと、それが大きくなって、長い期間、採り続けることが出来ます。

 もしくは、キクラゲが発生している枯れ木を持って帰って、枯れ木が乾燥しない様に気をつけて管理すれば、しばらくの間、キクラゲを楽しむことも出来ます。

 

 今回は、イロハモミジの風倒木に発生したアラゲキクラゲをいただきました~♪

 

 調理方法は、市販のキクラゲと同じです。

 キクラゲの根元(石突き)を切り落とし、サッと洗います。

 キクラゲを適当なサイズにカットします。

 今回は、イカと一緒に炒めて、ショウガとニンニクを混ぜた醤油で味付けしました。

 アラゲキクラゲのコリコリした食感とイカの食感がピッタリです。

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山の中でタイヤ交換できますか?

2019年12月04日 | 思いつくままの雑多なお話

 先日、10年ぶりに、山の中でタイヤがパンクしました。

 タイヤの横側に、針の様な細くて、小さい木が刺さり、タイヤの空気が抜けたようです。

 搬出した木材を置いている土場や土場跡に車で乗り入れると、極々たまに、そんな不運なことが起こります・・・。

 車走行中に、落石が起こって、タイヤにあたって、タイヤがプシューとかも・・・。

 山の中では、舗装された道路や街中では想定できないことで、タイヤがパンクすることもあります。

 

 さて、もし、山の中で、車のタイヤがパンクしたら、自分で交換することが出来ますか?

 街中で出来ても、山の中でも同じ事が出来ますか?

 

 なぜ、こんな問いかけをするのかというと、山の中でパンクしたとき、すぐ近くに舗装された道路があったら、それはラッキーな状況です。

 

 山中の道は、舗装されていないこともありますし、作業道など堅固でない基盤の道もあります。

 そんな場所でタイヤがパンクしたら、ジャッキを回しても、車体は上がらず、逆にジャッキ本体が沈むこともあります。

 なので、ジャッキの下に割れにくい石や切り株を置いて、ジャッキが沈まない工夫などが必要になります。

 まぁ、タイヤ交換自体、難しいことではないので。

 

 タイヤ交換の様子を参考までに。

 なお、ブログ用にタイヤ交換をしたので、場所は倉庫で、山の中じゃないので、あしからず・・・。

 はじめに、自分の車の中に、タイヤ交換の道具がどこにあるか、確認です。

 最低、この3種類の道具があるはずです。

 

 あと、スペアタイヤの場所。

 車種によって違いますが、大半は荷が置ける場所の下に格納されていると思います。

 

 

 

 十字レンチやトルクレンチを備え付けておくと、便利です。

 

 もっと、丁寧で詳しいタイヤ交換の方法は、ネット上、どこでも紹介されているので、そちらをご覧下さい。

 

 今回、お伝えしたいことは、山に行くなら、山の中でもタイヤ交換が出来ること。です。

 時々、パンクしたまま林道を走行し、ホイールを潰す方もいらっしゃいます・・・。

 そして、舗装されていない堅固でない基盤の道路でパンクし、そこでしか、タイヤ交換が出来ない場合、周りにあるものを利用し、ジャッキが沈まない工夫ができる柔軟性も必要です。

 山の中で、タイヤがパンクし、一人でタイヤ交換していると、タイヤ交換が出来ると分かっていても、何か、めっちゃ寂しいですね・・・。

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アケビ ムベ

2019年12月01日 | 樹木・草花のお話

 アケビの皮をよく見かけるので、実りの時期から外れてますが、今回は、「アケビ」と「ムベ」について。


 昔は、ムベやアケビを大量GET!、という嬉しい体験もあったんですが、最近は、そういう機会も少なく・・・。

 昔、山を管理する仕事をしていた頃、自然に生えていたムベを発見し、そのムベに辿り着くまでの道を整備したり、ムベの成長や収穫の邪魔になる不要な木を伐って、ほぼ毎年、写真くらいの量を収穫していた時がありました。

 

 だけど、このムベを含む近辺のエリアの管理を森林ボランティア団体に預ける形となり、その活動1年目にムベが伐られてしまいました・・・ホントに残念・・・。


 ムベはアケビ科で、木本のつる性植物です。

 別名「トキワアケビ」とも言われています。

 


 ムベの果肉は半透明で、とても甘く、黒い種はアケビのように苦くありません。

 アケビと違い、熟しても実は開きません。

 あと、アケビは落葉(冬の前に葉を落とす植物)ですが、ムベは常緑(冬の間も葉が付いている植物)です。

 

 名前の由来は、この実を食べた天智天皇の一言

 「むべなるかな(いかにももっともなことであるなあ)」の”むべ”からきているとのこと。

 この一言を発した古い伝説が、滋賀県近江八幡市北津田町に残っているそうです。

 蒲生野へ狩りに出かけた天智天皇がその地で、8人の男子を持つ健康な老夫婦に出会い、

 「汝ら如何に斯(か)く長寿ぞ」と質問したところ、

 老夫婦は、「この地で取れる珍しい果実が無病長寿の霊果で、毎年、秋にこれを食べているから。」と答えたそうです。

 じゃあ、それを食べてみたいということで、天智天皇がご賞味したところ、「むべなるかな」と納得され、「斯くの如き霊果は例年貢進せよ。」と命じられたそうです。

  

 次に、アケビ。

 実が開く「開け実(あけみ)」が名前の由来。

 

 アケビの葉は、複葉(複数の小さな葉で構成された1枚の葉の事)で、小葉が3枚の「ミツバアケビ」と小葉が5枚の「アケビ」、そして、ミツバアケビとアケビの雑種「ゴヨウアケビ」というのがあります。

 「ゴヨウアケビ」は小葉が5枚で鋸歯があり、「アケビ」は小葉が5枚で鋸歯がありません。

←ミツバアケビ

 白い果肉を食べ、黒い種は吐きます。

 果肉はとても甘いのですが、黒い種が、ちょっと苦い・・・。

 種が苦いという点がムベとの大きな違いです。

 

 アケビもムベも木本のつる性植物なので、他の樹木に巻きつき、高い位置に実を付けるので、簡単に採ることはできません。

 ハシゴや高枝切りハサミを使わないとなかなか採れない上、鳥に食べられていることも多いです。

中身が空になったアケビ)

 

 鳥かサルか分かりませんが、中身を食べられ、落ちた果皮をよく見かけます・・・。

 アケビやムベの果皮は、炒めて食べることができます(僕は食べたことありません。)。


 きっと、昔の人も、中の果肉を食べたいのに、鳥などに食べられて、悔しい思いで空になったアケビを眺めていたと思います・・・。

 その悔しい思いから、果皮に手を出して、食べたのではないか・・・と勝手に妄想してます。


 というのも、昔は、現代のように食べ物が豊富だったわけではありません。

 飢饉など切羽詰まった時、火を通して食べられるものは、なんでも食べていた・・・・と思います。

 もしかすると、鳥やサルが食べて、捨てられた果皮を見て、「もったいないな~」と思って、食べたのかもしれません。 

 

 アケビやムベを堪能したいなら、風倒木のチェックをオススメします。

 巻きついたアケビやムベが、木と一緒に倒れて、手の届く場所で収穫できる・・・そんな幸運に巡り会うかもしれないので!

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