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事業費単価が上がれば、人は、危険行動を回避するのか。

2023年05月08日 | 人材育成・コミュニケーションのお話

 前回に続き、危険行動に対する人の心理について、今回は、保育間伐における伐倒を事例に。

 

 保育間伐の現場は、写真のように本数密度が高い現場が大半だと思います。

 写真の現場は、林齢が約35年生で、一度も保育間伐が行われていません。

 

 そして、このような現場では、ほぼ掛かり木が発生します。

 そのため、受口と追口による通常の伐倒方法ではなく、受口と追口を作らずに伐倒する「斜め伐り」や「元玉落とし」などと呼ばれている手法を、危険(違反)と分かっていても、行ってしまうことがあると思います。

 掛かり木の発生を回避するため、受口を作らず、元玉を斜めに伐って、そのまま真っすぐに伐り落とし、倒すという方法は、法律で禁止されていますが、実際に行っているか否かは、現場の痕跡を見れば、明らかに分かります。

 掛かり木の発生を回避する以外にも、事業費単価ベースで求められる1日当たりの事業量(ノルマ)があるので、それを達成するためにも、この手法が最も効率が良いと考えてしまい、この手法で保育間伐を行ってしまいます。

 

 さて、前回、「効率性や快適性など求められている利益が得られるなら、人は危険行動を選択してしまう」というお話をしました。

 

 では、禁止とされている伐採方法という危険行動を選択してしまう利益は何か?

 

 ①掛かり木が起こりにくく、伐倒しやすい

 ②1日あたりの事業量(ノルマ)がクリアできる

 

 主にこの2点になるのではないかと思います。

 ①は、「掛かり木にならない」という作業の効率性と、「フェリングレバーなど掛かり木処理の道具を持たなくていい」という快適性

 ②は、「サッサとノルマがクリアできる」という効率性と、金銭的な利益(労働者は給与、会社は利益)という利益が得られる。

 以上のような利益を得るために、危険行動を選択してしまいます。

 

 では、単純に事業費単価を上げると、人は、斜め伐り・元玉落としといった危険行動を回避するのか?

 

 例えば、保育間伐の事業費単価が、現場の実行経費ベースで30万円/haになったら、1日当たりの事業量(ノルマ)に余裕が出来ます。

 仮に、事業費単価UPによって、ノルマが今までの1/5になったら、人は危険行動を回避するのでしょうか。

 

 ここで、ポイントになるのが、「危険行動によって得られる利益」です。

 そして、この利益は、人によって、異なります

 

 例えば、先述した「②」という利益を得るために、禁止作業をしていた方は、事業費単価がUPすることで、危険行動を回避する可能性もありますが、同様に、危険行動を選択し続ける可能性も残ります。

 というのも、事業費単価が上がったから、引き続き、危険行動を選択すれば、利益はうなぎ登りになるから。

 

 次に、「①」と「②」という利益を得たい人は、事業費単価が上がっても、「①」の利益は得られないので、引き続き、危険行動を選択する可能性が非常に高いです。

 事業費単価が上がっても、掛かり木になるのがイヤ、フェリングレバーなど掛かり木処理道具を持つのがイヤなどの不利益を回避できないからです。

 その上、事業費単価が上がったのだから、利益もうなぎ登りなので、嬉々として、危険行動を選択するでしょう。

 

 事業費単価が上がったことで、危険行動を回避する可能性がある人としては、まず、「①」を利益として考えていません。

 そして、本音としては、安全行動を取りたいけど、そうすると「②」の利益を得られないから、やむを得ず、危険行動を選択している人。

 

 危険行動によって得られる利益を減らし、安全行動によってられる利益を増やすことが、危険行動を回避する最善の方法です。

 そして、ここで言う利益は、人それぞれによって異なるため、結果的に、各事業体によって異なることになります。

 

 そのためには、まずは、しっかりと話し合うことです。

 

 安全行動は、従業員や現場作業員に押し付けるものではありません

 従業員や現場作業員が、率先して、安全行動を取りたいと思うように仕向けないといけません

 そのためには、危険行動よりも安全行動の方が利益がないといけません。

 その利益が何なのか、従業員や現場作業員と話し合い、その利益を見極める必要があります。

 

 少なくとも、「積極的に安全行動とる者を評価する」という仕組みがないと、確実に安全行動は消えていきます

 

 積極的に安全行動を取っている職員を褒めていますか?

 

 「褒める」、「表彰する」、「昇給する」、「より機能性が高い安全道具を支給する」など、安全行動を取り続けることによって得られる利益を、従業員や現場作業員が感じ続けられる環境を維持することが必要です。

 これも「働き方改革」の1つではないかと思います。

 

 ちなみに、このようなお話を事業体や森林組合にした後、大半が「難しくて、出来ない。」と言われます。

 難しいことを実現するには、大変な労力と時間がかかります。

 なので、やらない方が楽だし、変わらない方が楽だから、「難しくて、出来ない」と、つい口にしてしまいます。

 従業員や現場作業員と話し合ってもいないのに、一人頭の中だけで考えて、挑戦する前から「難しい」と結論付けて、出来ない理由・やらない理由を作り、その本音は、「やりたくない」というのが大半です。

 これも、人間の心理の1つですね。

 

 かく言う僕自身も、「難しい」とか、「そのうちに・・・」とか言って、先送りしている(逃げている)案件が、いくつかあります。。。

 なので、水面下で少しずつ、少しずつ、表面的には見えず、徐々に、という感じで、ただいま暗躍中です(^_^;)。。。 


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1 コメント

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Unknown (デス。)
2023-11-20 19:49:08
「そんなバカらしいこと現場で実際にやってられっかよ」と、面と向かって講師に言わない「賢い大人」が代わりに使うワードが「難しくて、出来ない」です。
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