人工林内の樹木1本1本の姿は、決して、喜べる様な姿ではない樹木が多い・・・。
皆伐の現場で見かける残された人工林の一部を見ていると、納得していただけると思います。
間伐が遅れた人工林の大半は、このような樹形をしていると思います。
パッと見、緑色で覆われた人工林も、林内に入れば、脆弱な姿をしており、伐り残されると、その姿があらわになります。
伐り残された理由として、搬出できなかった、森林所有者が違う、森林所有者の意向、法的な理由など色々なケースが考えられます。
このように残された林内木を見ていると、「貧弱な樹形で、形状比が高いなー」と思うわけです。
専門用語になりますが、形状比とは、樹高(cm)を胸高直径(cm)で割った値で、風害や冠雪害の発生リスクを表す指標です。
人工林では、形状比70以下が理想で、形状比が80を上回ると被害が発生しやすいとされています。
人工林が成熟段階(60年生以上)を迎えると、形状比は60以下が望ましいとされています。
さて、写真の様に残された林内木の形状比は、測っていないですが、おそらく80を超えていると思います。
しかも、向こうの景色が見えるくらいの面積しか残っていないので、林内木の一部として密集していた時とは、環境も状況も大きく異なります。
林業における形状比は、80以上が危険という指標ですが、孤立木の場合、形状比が50を超えると、倒木する可能性が上がるという指標があり、孤立木の望ましい形状比は30~35と言われています。
「でも、その数値は孤立木の事だから。」
と、終わらせたくなりますが、今回の写真の様に、向こうの景色が見えるくらい残された林内木って、孤立木と大きな差があるのかなと疑問に思いませんか?
繰り返しになりますが、孤立木は、形状比50を超えると倒木する可能性があると言われています。
間伐などの手入れが遅れた人工林が多い中、向こうの景色が見えるくらい残された林内木の形状比は、どれくらいになるのでしょうか。
大半が80を超えているかもしれません。
仮に、きちんと手入れされ、形状比が60~70だとしても、密集した人工林ではなく、伐り残された林内木の場合、60~70の形状比で十分なのか。
孤立木の指標を考えると、今回の様に伐り残された林内木における気象害発生リスクを、もっと考える必要があるように思います。
近年、台風による人工林の被害は甚大であり、林業という産業としての被害だけでなく、住民の生活にも大きな被害と支障を与えています。
今後、皆伐が進むことを考えると、このような現場の状況と被害の実態を鑑みて、今一度、検討すべきではないかなと思います。
ちなみに、国有林では、林縁木(立木)を防護柵の支柱として利用する事例がありますが、何でもかんでも、立木を利用するのではなく、その立木の形状比を考えておかないと、風でバタバタと倒されてしまう・・・と思います。
特に林縁部の樹木は・・・。