はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

造林木の獣害 ノウサギ

2022年06月19日 | 狩猟・獣害のお話

 野生動物による造林の被害と言えば「ニホンジカ」による被害を真っ先に思い浮かべますが、1950~70年代にかけて行われた拡大造林の時代は、ニホンジカによる被害はなく、ノネズミとノウサギによる被害が大半でした。

 そして、近年、皆伐が進み、再造林が重要視される時期を迎えているわけですが、昔の拡大造林と同じように、この先、ノネズミやノウサギによる被害が増える可能性は十分にあります。

 何より、昔と違い、ニホンジカの被害も加わるので、拡大造林時代以上の獣害に悩むことになると思います。

 

 とは言え、それが今を生きる我々に課せられた課題なので、1つの事実として、受け入れ、乗り越えていくしかないかなと思います。

 

 ちなみに、昔、ノウサギ対策でキツネを放った例がありますが、一応、失敗に終わっています。

 キツネはノウサギを襲わず、民家で飼育しているニワトリを襲い、結果的に、ノウサギの被害は大幅に減少することはなく、キツネの被害が増えた。というわけです。

 正確には、キツネによってノウサギ被害は減少したかもしれないけど、人間の生産活動においては、実感できるほどの効果は出なかった。ですかね。

 ノウサギ被害が減少したという実感がわかないまま、ニワトリの被害を大いに実感してしまっては、元も子もないのかな。

 同じ事を繰り返さないためにも、安易に「キツネを放つ」という方法は採用しないでほしいです。

 

 近年、森林保護分野において、森林生態系を活かした被害対策という考え方も進められています。

 もちろん、大切なことですが、そのためには、森林生態系をしっかりと理解し、認識しないといけません。

 天敵動物とか食物連鎖とか、そういうシンプルなものではなく。

 特に、人間の生産活動や日常生活と関わりある森林では、そうそう単純な話ではない。。。

 例えば、田舎に移住した方達の中には、ニワトリを飼育している方もいますし、養鶏で生計を立てている方もいるので。

 (我が家もニワトリを飼育してました。ハクビシンに襲われて、鶏ガラみたいな形の骨と足だけを残されたけど・・・)

 

 ノウサギによる造林木への被害は「葉の摂食」と「樹皮の剥皮」です。

 先日、とある造林地に赴くと、ノウサギによる剥皮被害が・・・

 3年生を迎え、順調に育っていたのに・・・・。

 

 あと、ノウサギとの接触により発生する「野兎病」。

 ノウサギが増えて、造林木への被害だけでなく、感染症被害も増えたら、ホントに嫌だな。。。

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リス 剥皮被害

2020年06月13日 | 狩猟・獣害のお話

 山の中で、樹皮が削り取られた様に剥皮された樹木を見たことがありませんか?

 

 これは、リスによる剥皮被害です。

 

 剥皮されて間もない。そして、この少し上に、

 古い傷跡。

 幹だけでなく、根元の樹皮も。

 

 これはタイワンリスによる剥皮。

 1匹が何度も剥皮したのか、複数のリスが剥皮したのか分かりませんが、いっぱい囓った後が・・・。

 

 横向きに樹皮が傷付いている幹を見かけたら、そこにリスがいることを感じてください!

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植栽地におけるシカ被害対策 防護筒

2020年02月08日 | 狩猟・獣害のお話

 林業におけるシカ被害が大きく取り上げられるようになったのは、1990年代がスタートだったと思います。
 1960~70年代は、ノネズミやノウサギの被害が多く、シカの被害はほとんど無かったと言われており、1980年代から、少しずつシカの被害が報告されるようになり、1990年代から被害が目立ち、被害対策が進められるようになりました。
 僕自身、林業業界に関わったのは2000年からなんですが、当時のベテランの方は、「昔は、シカなんて、ほとんど見ないし、珍しかった。」と言ってました。
 
 そして、現在。

 シカ被害は、非常に深刻な状況です。
 
 植栽した木が食べられ、

 なんとか、食害から免れた木も、皮を剥がされ・・・

 そして、収穫目前で、剥がされてしまったり・・・

  林業で生産される木材は、長期間、シカの被害を受ける環境に置かれているので、シカ被害対策は本当に深刻です。
 
 さて、植栽地におけるシカ被害対策は、大きく分けて2種類。


 1つ目は「防護柵(防護ネット)」。

 2つ目は「単筒(防護筒)」。

 
 前回(といっても、だいぶ前ですが、、、)防護柵に続き、今回は防護筒について、お話しします。

 ちなみに、ここでは防護筒と表現していますが、単筒とか他の表現もあります。

 また、上の写真と異なり、下の写真の様にネットタイプもあるなど、種類はそこそこ多彩です。

 

 なお、ここでは、植栽木を1本ずつ守る対策を一括りにして、防護筒と表現させていただきます。

 

 ぶっちゃけ、防護筒の効果は、防護柵よりも賛否両論ではないでしょうか?

 僕自身、いくつかの現場を拝見させていただき、成長促進と被害防除のダブル効果現れた現場もあります。

 例えば、植栽2年目のウバメガシが想定以上に成長した現場。

 斜面上方からシカの食害を受けてしまってますが、全体的に見れば、被害は軽微なもので、ほとんどのウバメガシが防護筒を超えて、順調に成長していました。

 一方で、筒内部で、ヒノキの先端部が中に入り込んでしまい、上方へ伸びず、クルッと一回転し、奇形になってしまうものもあります。

 

 また、下の写真のような隙間に口を入れ、苗を引っ張り出し、食害する知恵が回るシカもいたり・・・

 

 風が強いところでは、一斉に倒れてしまったり・・・。

 

 他にも蒸れが原因?で、枯れることも・・・。

 でも、素材がネット的なものだと、そういうこともないと思います。

 

 成長阻害があることも否めませんが、だからといって、防護筒がダメ!と言うわけではありません。

 防護柵も破壊されるという欠点がある様に、防護筒にも欠点があります。

 ただし、防護柵では期待できない成長促進という効果があるという点で、防護筒は被害防止とのダブル効果という魅力もあります。

 ただし、植栽した樹種や環境によって、効果がプラスに働いたり、マイナスに働いたりすると思います。

 そもそも、そこの環境に適していない樹種を植えたことによって、防護筒がマイナスに働いたという可能性も考えられます。

 逆に、防護筒のおかげで、環境面でのマイナス要因が除去されて、成長したと言う可能性もあると思います。

 独断と偏見による個人的な考えになりますが、これまで現場や植栽木の状況などを見た経験を踏まえると、情報や研究不足なんじゃないのかなーと。

 被害対策技術の確立よりも、基礎研究的な防護筒の効果に関する細かな情報や成果の方が、現場には必要というか、ありがたいんじゃないのかな~、と僕は思います。 

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植栽地におけるシカ被害対策 防護柵

2019年12月13日 | 狩猟・獣害のお話

 さて、今回の記事は長文です(^_^;)。

 林業におけるシカ被害が大きく取り上げられるようになったのは、1990年代がスタートだったと思います。

 1960~70年代は、ネズミやノウサギの被害が多く、シカの被害はほとんど無かったと言われており、1980年代から、少しずつシカの被害が報告されるようになりました。

 僕自身、林業業界に関わったのは2000年からなんですが、当時のベテランの方は、「昔は、シカなんて、ほとんど見ないし、珍しかった。」と言ってました。

 

 そして、現在。

 シカ被害は、非常に深刻な状況です。

 

 植栽した木が食べられ、

 なんとか、食害から免れた木も、皮を剥がされ・・・

 そして、収穫目前で、剥がされてしまったり・・・

  林業で生産される木材は、長期間、シカの被害を受ける環境に置かれているので、シカ被害対策は本当に深刻です。

 

 さて、植栽地におけるシカ被害対策は、大きく分けて2種類。

 1つ目は「防護柵(防護ネット)」。

 2つ目は「単筒(防護筒)」。

 

 今回は、まず、防護柵について、お話しします。

 ただし、防護柵の規格など細かな説明は省略します。

 これまでの現場経験やシカ被害に関する試験研究の経験を元に、お話しさせていただきます。

 

 防護柵最大の問題点は「壊れる」ことだと思います。

 壊れる主な原因として、

 倒木による全壊または半壊

 雨水が原因で土砂が流出し、柵が全壊する。

 同じく土砂の流出で、柵下に隙間ができる

 落石や崩土によって、ネット部が切れたり、柵が転倒するなども。

 動物によって、防護柵が破壊されることもあります。

 ネット下部に打ち込まれたアンカー杭が抜かれる。

 ネットがかみ切られて、大きな穴が空く。

 

 このように壊れた・壊された部分から、シカやウサギが防護柵の中に侵入し、植栽木を食害します。

 ネットの穴から出入りする動物たち。

 

 アンカー杭が抜けた防護柵の隙間から出入りする動物たち

 

 防護柵が壊れると、シカの侵入を許してしまいます。

 壊れる原因も倒木、土砂流出、動物など様々なので、防護柵設置後の巡視やメンテナンスは非常に重要な作業になります。

 

 さて、ここからは、僕個人の仮説です。

 これまでの経験から、「シカは防護柵を破壊できるような能力を、それほど持っていない。」ということです。

 研究員時代に、カメラを仕掛けたところ、シカが防護柵に突っ込んで、押し返されるという動画をいくつか確認しました。

 一方で、防護柵を破壊する様な行動は見られなかったし、シカの体型からアンカー杭を抜くことも難しいと、早計ですが、そう考えました。

 アンカー杭は、イノシシが鼻先で掘り起こす動画がいくつか確認できたので、アンカー杭を抜く主な犯人はイノシシだと思います。

 シカは防護柵に突っ込んで押し返されることが多いけど、カモシカは防護柵に足を乗せて、乗り越えようとするような行動が見られました。

 そして、防護柵の側に残された高さ1.8~2.0mの切り株に乗って、防護柵の上から抜け出すカモシカも確認。

 明確な根拠はありませんが、シカは草原、カモシカは山岳と概ね住み分けているので、シカはカモシカの様に後脚に体重をかけて、立ち上がるといった行動が出来ないのではないかなと思います。

 

 また、網目50mmのネットが噛み切られていますが、これもシカではないと考えています。

 そもそも、網目50mmでは、シカの口は入りません。

 シカが噛み切れる網目サイズは70mm以上だと言われています。

 しかし、網目100mmでも、シカは頻繁に噛み切らないのではないかと思っています。

 シカの歯は、何かを噛み切る様な構造にはなっておらず、樹木の葉を食べるときも、奥歯ですり潰す感じで食べています。

 奥歯を使って、ネットをゴリゴリと噛み続ければ、噛み切れると思いますが、シカは移動しながら食べて、糞を排泄しているので、ネットが噛み切れるまで、その場で噛み続けるような行動を取る可能性はそれほど高くないのではないかと・・。

 調査期間中、ネットを噛み切る様な行動どころか、その素振りすら見られなかったので、シカがネットを噛み切る様な行動を取る可能性はそれほど高くないと、これも早計ですが、そのように考えています。

 一方、ウサギ、イタチ、テンも防護柵内へ侵入しようとしたり、防護柵内から外へ出ようとしている行動が撮影されました。

 出入りしようと必死になって、執拗に防護柵のネットに向かう行動を見ていると、噛み切っている動物は、ウサギやイタチ、イノシシではないかなと・・・。

 明確な根拠はなく、そのような行動は確認できていませんが、シカよりも噛み切る能力はあるように思います。

 網目50mmのネットが切られているという事実を考えると、ノウサギやイタチが噛み切っている可能性を否めません。

 実際、ウサギはスパッと、植栽した木を食害しているので・・・。

 

 

 穴ぼこだらけで、都合の良い仮説ですが、色々考えると、やはり、シカは防護柵を破壊できる様な能力をそれほど持っていないのではないかと思うわけです。

 

 そこで、防護柵が壊れた場所やネットに空いた穴から、シカの出入りが確認できた場所を対象に、その破損箇所を直したら、シカはどのような行動を取るのか、見てみました。

 結果、ネットに頭を押し込んで跳ね返されたり、その場をウロウロするだけで、防護柵を壊そうとするような行動は確認できませんでした。

 ちなみに、防護柵にちょっとの隙間があれば、シカは侵入しようとします。

 たまに、角が引っかかってしまい、侵入に失敗し、もがいて暴れた結果、防護柵が破壊されることはありますが、はじめから破壊するつもりで防護柵を攻撃することはないと思います。

 

 そして、イノシシがアンカー杭を抜いたり、防護柵の下部ロープを加えて、グイグイと引っ張る行動が確認できたので、防護柵の破壊には、イノシシが大きく関与しているのかなと思っています。

 

 防護柵が壊れなければ、植栽木は無事に成長していますし、そのような報告も出ています。

 防護柵は、倒木、土砂の流出、落石などが原因で壊れる可能性が有ります。

 これを回避するためには、水が集まりやすい谷を避けて防護柵を設置するなど設置場所の工夫による対応が重要だと思います。

 あとは、台風や大雨の後は、現地を確認し、必要に応じてメンテナンスを行う。

 

 あれこれ考えると、防護柵の設置方法や設置場所を考えることが重要で、防護柵の規格はそれほど重要な要因ではないように思います。

 と言うわけで、個人的に、ネットは網目100mmがオススメで、ステンレス鋼線入りは無くても良いと思っています。

 シカが噛み切る可能性は高くないと思うし、もし、イノシシが噛み切るならステンレス鋼線では防げません。

 100mmだと、ウサギ、テン、イタチが抜けられるので、これらの動物が噛み切る可能性は低くなると思います。

 50mmだと、ウサギの侵入を防げるかもしれませんが、初めから防護柵内にいたウサギは、出られなくなります。

 

 網目50mmは、「獣類の口が入りにくく、切られにくい」、「ノウサギのような中型獣類が侵入しにくい」といったメリットがある反面、「重いため運搬が大変」、「土砂などが溜まりやすい」といったデメリットがあります。

 網目100mmは、「獣類に切られやすい」、「ノウサギが侵入する」というデメリットがあるものの、50mmより「軽いので運搬しやすい」、「土砂などが溜まりにくい」というメリットがあります。

 あと、腕が入るので、「防護柵の中と外の物の受け渡しが出来る」、「防護柵内の状況写真を撮りやすい」などのメリットもあります。

 

 結論は、ステンレス鋼線がない網目100mmの防護柵のネットは、軽くて運搬しやすいし、安い。

 ステンレス鋼線がある/ない、網目が100mm/50mmといった規格の差は、食害防止効果に大きな差は無いと思っています。

 それよりも、設置場所や設置方法の検討の方が重要では無いかと思います。

 

 明確な根拠が乏しい上、経験則を元にした穴ぼこだらけの仮説ですが、「シカは防護柵を破壊する様な能力を、それほど持っていない」。

 ならば、網目100mm防護柵を選べば、軽いので運搬しやすくなり、効率も上がるし、安い。

 そして、防護柵の設置は、地形や地質などを考えて、設置場所を決める。

 設置後は、定期的な見回りやメンテナンスを行う。

 この方法が、防護柵を活用したシカ害対策の最も有効な手段かなと思います。

 

 なお、シカの行動パターンは地域によって異なります。

 エサの好みも、地域によって異なります。

 なので、ここに書いた内容が、皆様の地域に当てはまるとは限りません。

 

 植栽地に設置された防護柵に近づく動物は、シカだけではありません。

 イノシシ、ウサギ、ネズミ、テン、イタチ、ニホンザルなどの動物も近づきます。

 こうした動物たちが少しずつ防護柵を壊し、そこから出来た隙間を利用して、シカが侵入を試みているのかもしれません。

 そして、防護柵が壊れる原因は動物だけでじゃなく、倒木や土砂の流出なども壊れる原因です。

 このように色々考えてみると、防護柵の規格よりも効率性と価格、設置場所や設置方法が重要だと思います。

 

 なお、設置場所や設置方法については、三重県林業試験場が詳しく紹介してくれているので、是非、そちらをご覧下さい。

    三重県】シカの侵入を防ぐ効果的な柵とは?

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鳥害 カワウ

2019年06月01日 | 狩猟・獣害のお話

 森林や林業における代表的な鳥害と言えば「カワウ」。

 カワウは樹上で巣を作り、そこで糞をするので、枝葉に糞が付着し、全体的に樹木が真っ白になり、光合成が阻害され、結果、樹木が衰弱し、枯れてしまいます。

 滋賀県のカワウ被害が一番有名じゃないのかな?

 以前、滋賀県内で働いていたとき、80年生のヒノキ林にカワウが営巣し、無惨な姿に・・・。

 滋賀県に勤務してたのは、平成14~16年頃なので、まだヒノキの木材価格が良かった時代です・・・(たしか平均すると30,000円/m3くらいやったかな~)。

 

 カワウ被害に遭うと、ホント、真っ白になります。こんな感じに。

 河川沿いに生える樹木に営巣し、樹下のコンクリが真っ白に・・・

 さて、カワウ被害は森林や林業だけでない。

 むしろ漁業被害の方が深刻です!

 鮎が大量に食われてしまう!

 

 対策としては、捕獲も重要ですが、川沿いの樹木や森林に営巣するカワウの追い払いも重要です。

 高い樹木が並び立つと、追い払い作業が大変になります。

 なので、低木に仕立てて、カワウを追い払いやすい森林に整備するという工夫が必要だそうです。

 漁業の鳥獣害と言う視点から森林を見るのも大事なことだなーと思いました。

 

 「でも、それは漁業の問題では?」と、産業別・分野別に切り離して考えるのではなく、目の前の森林や地域の森林が、林業と関係なくても、その地域や産業が抱える問題とその森林の関係に着目し、問題解決につながる森林整備を考えていく必要もあるなと思います。

 カワウ被害は、そんな分かり易い事例の1つではないのかな~

 

 ちなみに、カワウ被害を意識した森林整備を行う場合は、事前に漁業関係者や行政、専門家の相談をした方が良いとのこと。

 効果的に進めるため、カワウの生態や被害に精通した方達の声は大事です。

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鹿皮なめし 仕上げ

2019年02月25日 | 狩猟・獣害のお話

 前回と前々回、シカ皮なめしの仕上げについて、書き損じたので、補足させていただきます。

 

 

 僕は、毛を取り除くとき、肉を除去するとき、仕上げの時に使用する作業台として、集成材(厚さ105mm、幅210mm、長さ500mm)を使っています。

 集成材でなくても構いません。たまたま手元にあったので、使用しているだけです。

 似たようなサイズであれば、丸太でも構いません。

 

 仕上げの時に使用している電動サンダー。

 一番左のグラインダーは、作業効率が良いものの、皮が破れるリスクが高いです。

 真ん中のベルトサンダーは、作業効率が良いんですが、油断していると皮を破いてしまいます。

 一番右のミニサンダーは、作業効率が悪いけど、皮が破れるリスクが低いです。

 

 ちなみに、僕はベルトサンダーをメインに使い、破けそうなところはミニサンダーと使い分けています。

 やすりは#100~150を使用しています。

 先ほどの作業台に乗せて、皮を伸ばしながら、仕上げ作業にかかります。

 

 以上、シカ皮なめし・仕上げの補足でした。

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鹿皮なめし 毛なし

2019年02月21日 | 狩猟・獣害のお話

 前回に引き続き、今回もシカ皮鞣しのお話で、毛なしバージョンのなめし方です。

 なめし方としては、基本、前回ご紹介した方法と同じですので、毛の取り除き方をメインにご紹介させていただきます。

 

用意するもの

 シカ皮1枚、バケツ、石灰、塩(食塩でも可)、毛を入れるゴミ袋

 

毛抜き作業

 バケツに石灰と塩をそれぞれ500gずつ入れます。

 この量は・・・ホント適当です。すみません。

 これが多いのか、少ないのか、も分からないんですが、この量で毛は抜けるので・・・。

 その後、水を2リットルほど入れて、石灰が底にたまらないよう、しっかりと混ぜます。

 

 シカ皮を入れます。

 シカ皮全体がしっかり浸かるようにして下さい。

 しっかり浸からないようなら、水を足して下さい。

 上の写真は、皮が浮いてきてるので、浸かっていないように見えますが、だいたいこんなこんな感じで大丈夫ですが、しっかりと染み込むように混ぜて下さい。

 冷凍したシカ皮の場合は、冷凍のまま放りこんでも大丈夫です。

 

 そして1~2日間、石灰に浸けておきます。冷凍の場合は解凍具合もあるので、冬だと2~4日間くらいかな?

 浸けるときは、毛の根元(人で言えば頭皮?)まで、染み込むように浸けて下さい。

 バケツの中で、皮をしっかり混ぜたり、底に溜まった石灰をかき回したり、時々、混ぜ混ぜして下さい。

 

 浸け終わったら、皮を取り出し、毛を取り除きます。

 取り除くとき、僕は自作した木ベラを使ってます。

 石灰がしっかりと染み込んだところは、簡単に取り除けます。

 

 どんどん、取り除きます。

 

 完了~

 作業時間は1時間半~2時間。結構かかりました。

 白い部分が石灰がしっかり染み込んではズルって簡単に取れた箇所。

 茶色い部分は、しっかりと染み込んでおらず、手こずった箇所。

 

 この後、肉を取り除く作業になります。

 これ以降の作業は、前回の記事「シカ皮なめし 毛付き」をご確認ください。

 なお、個人的には、肉を取ってから、毛を抜く作業に入ることをお勧めします。

 と言うのは、毛があった方が肉を削ぎ落としやすいからです。

 あくまで、僕個人の所感なので、先に肉か、先に毛か、それはお好みで。

 

 なめした後は、こんな感じ。

 しわの部分を引っ張りながら、両面をサンダーで磨きます。

  シカ皮は、丈夫な上、薄いので、簡単に引っ張れます。

 なお、サンダーを使う場合、破かないように気をつけて下さい。

※ちなみに写真のシカ皮は、仕上げが完全に終わっていないものを載せています。

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鹿皮なめし 毛付き

2019年02月17日 | 狩猟・獣害のお話

 前回、シカ毛皮のランドセルカバーをご紹介したので、今回はシカ毛皮のなめし方をご紹介させていただきます。

 なめし方を紹介したホームページはたくさんあって、僕もそれらを参考にして始めました。

 罠を使って、時々、少しシカを捕る程度で、頻繁になめす訳ではありませんが、素人の僕の経験でも、これから始めたいという方の参考になれば幸いです。

※このブログをご覧になるツールによって、文章の説明と写真にズレが生じる場合があります。その点は、ご容赦下さい。

 

「シカ皮の保存」

 捕獲したシカを解体し、皮を採取した後、そのまま、なめし作業に入ります。

 解体後、すぐになめし作業が出来ない時は、皮だけ採取して、冷凍保存して下さい。

 なめすときは、シカ皮を解凍するだけです。

 

「用意するもの」

 シカ皮(1枚)、焼きミョウバン1kg、塩1kg

 普通のナイフもしくは皮剥ぎ用ナイフ(皮に残った肉を除去するため)、中性洗剤(何でも可)

 ビニール手袋、古新聞(10枚程度)、くし(毛並を整える)

 汚れても良い服(僕は長靴、雨合羽)、ボロ布(古タオル1枚分)、油(サラダ油でも可)

※この後の説明で、上記に書かれていないものも出てきますが、読んでいただきながら、必要に応じて、ご用意ください。 

 

「なめし方」

①シカの毛皮を水洗い。

 毛皮に付着した泥、ひっつきむし、ダニなどを水洗いにより取り除きます。

 ただ、ダニは水洗いで完全に除去できないので、目に付くダニを取りあえず除去するって感じで、メインは泥など。

 洗ったら、毛からボタボタ垂れる水を簡単に切り、干します。

 干すと言っても、完全に皮が乾くまで干すのではなく、水が切れる程度に干します。

 ※毛無しの場合は、古いタオルなどで拭き取る程度で。

 

②肉を除去する。

 皮を傷つけないように肉を除去します。

 普通のナイフだと、先端で皮を傷つけることもあるので、先端が尖っていない皮剥ぎ用のナイフを購入されてもよろしいかなと思います。(ちなみに僕は普通のナイフで除去しました。)

 こんな感じです。ある程度の妥協は必要かと思います。

 

③中性洗剤で洗う

 脂分を除去するため、中性洗剤で洗い、水ですすぎます。

 ①と同じ様に水切ります。

 

④ミョウバンに漬ける

 皮1枚につき、焼きミョウバン1kgと塩1kgを混ぜ、しっかりと塗り付けます。

 なお、塩は普通の食塩でもOKです。

 

 肉を除去した側の皮同士がくっついたりするので、そこを丁寧に剥がしながら、ミョウバンを塗りつけます。

 くっついたままだと、完成後、そこから破れる原因になります。

 下の写真のように、皮の端っこがクルッとなっている部分も丁寧に塗りつけます。

 僕は実践したことありませんが、生ミョウバンでも良いそうです。

 塩が含まれていると、後々に水分が出てくるので、それを考えると、生ミョウバンの方が良いとのことです。

 

⑤1週間から10日間ほど寝かす。

 上に新聞紙をかぶせ、クルクル回して、1週間から10日間ほど、日陰の場所でねかします。

 もしくは、毛皮側を下にして、段ボールの上に置き、新聞紙をかぶせ、その上に段ボールを置き、さらにその上にベニヤ板など重しになるものを置きます。

 新聞紙を被せただけでは、シカ皮の端がクルッと反ってくるので、それを防ぐために重しを置きます。

 

⑥ミョウバンを取り除く

 左下の写真がミョウバン除去前、右下の写真がミョウバン除去後。

 上の2つの写真は、上から重しを置いて、ねかしたものです。

 下の2つ写真は、くるくる巻いて、ねかしたたものです。

 左下が除去前、右下が除去後です。

 除去後の写真を見ると、所々に”しわ”があり、その部分は、きちんとミョウバンが塗りつけられていない部分です。

 こういうところから、皮が破けてしまいます。

 

⑦仕上げ

 軽石や紙ヤスリなどで磨きます。

 手で磨くと大変なので、僕は電動工具を使って磨きます。

 電動サンダーの場合、ヤスリは♯100、♯150の物を使っています。

 電動研磨機の場合、♯80の物で磨きますが、作業は楽になるものの、破けやすいので、作業には注意が必要です。

 磨き終わった状態です。(上の写真と下の写真は別の皮です)

 

⑧完成

 最後に油を塗って、日陰で干して、完成!

 油は普通の食用油を使っています。

 あとは必要に応じて、櫛などでブラッシングします。

 あと、塩の影響で水分がなにじみ出てくることもあるので、暗い場所で保管しながら、毛皮の様子を見る必要があります。

 特に夏場の保存には気を付けていただき、水分が出てきたら、古新聞などで拭き取ってください。

 1~2年、暗い場所で保存すれば、皮が落ち着いてくるかと思います。

 シカ解体のとき、皮から肉を除去するとき、ミョウバンがきちんと塗りつけられていなかったとき、電動サンダーで磨き過ぎたときなどが、破ける原因になります。

 毛の質は捕獲した個体によりますし、元々、毛が抜けている個体もいます。

 成獣はかたく、バンビはやわらかいので、僕はバンビの皮が好きですね。

 ただし、皮が薄く、破けやすいので、丁寧に処理する必要があります。

 

 全体を通して大変な作業は肉の除去で、それが終われば、あとは楽な作業・・・かな。

 

 ちなみに、肉を除去し、洗った後、皮をパリパリに干して保存することも出来ます。

 パリパリになった皮を、柔らかくなるまで水に漬けて、戻します。(大きさにもよると思いますが、2~3日くらいかな。)

 その後、「④ミョウバンに漬ける」から順に作業を行えば、同じようになめす事が出来ます。

 

 シカ皮を入手したが、すぐになめし作業ができない場合は、

 ・シカ皮をそのまま冷凍する(なめすときは解凍する。)

 ・シカ皮から肉を除去して乾燥させる(なめすときは水に漬ける)

 という方法で、保存することが可能です。

 

 毛皮をそのまま敷物に使っても構いませんが、毛が抜けてくるので、その点、ご注意ください。

 野外、特に山で使う場合、カバンのカバーにしたり、昔のマタギみたいに身に付けないようにしてください。

 シカと間違えて誤射される・・・というような事故になる可能性がありますので・・・。

 

 僕は素人ですが、シカの皮なめしを始めたい!という方の参考になれば幸いです。

 それなりの時間はかかりますが、それほど難しい作業ではないので、機会があれば、是非、挑戦してください。

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シカの毛皮

2019年02月14日 | 狩猟・獣害のお話

 以前、小学校に通う次男に、シカの毛皮でランドセルカバーを作ったら・・・

 「これ良いけど・・・、一人だけこんなんヤダ。」

 ガーン!

 

 みんなと違う。目立つ。

 それが嫌だったみたい・・・

 絶対に注目されるもんね・・・。

 カッコいいけどな~

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シカの糞 カモシカの糞 ウサギの糞 見分け方

2019年01月23日 | 狩猟・獣害のお話

 秋から冬にかけて、シカをはじめ、色々な「糞」を見る機会が多くなります。

 夏でも、全く見れないというわけではありませんが、センチコガネなどが「糞」を分解するので、見かける糞のほとんどが新鮮な糞かなと思います。

 

 なので、シカの推定個体数を調査する糞粒法糞塊法は、糞を分解する生き物の活動が停止する秋から冬にかけて行われます。

 余談ですが、大阪府立環境農林水産総合研究所(幸田良介 氏)が糞塊除去法というシカの推定個体数を調査する新たな方法を開発しました。

 

 今回は、シカの糞、カモシカの糞、ウサギの糞、それぞれの見分け方について。

 シカの糞とカモシカの糞の形は「俵状」で、糞の大きさは個体の大きさによって異なります。

 ウサギの糞の形は「球形」です。

 写真を並べて比較します。

 

 左の写真「俵状」の糞がシカ、カモシカで、右の写真「球形」の糞がウサギです。

 

 では、同じ俵状の糞をする「シカとカモシカの違い」は?

 シカは、食べながら、歩きながら、ポロポロと糞をします。

 なので、シカの糞はパラパラと点在することが多いです。

 一方、カモシカは、腰を落として糞をするため、一ヵ所に糞が集まる「ため糞」になります。

 左の写真は「シカの糞」、右の写真は「カモシカ」の糞です。

  

 俵状の糞が、パラパラとあちこち点在すると「シカの糞」、一ヵ所に集中したため糞になっていると「カモシカの糞」になります。

 

 おさらいします。

 球形の糞は「ウサギ」。

 俵状の糞がパラパラと点在していたら「シカ」。

 俵状の糞が一ヵ所に集中したため糞になっていたら「カモシカ」。

 

 という覚え方で、一度、糞の同定を行ってみてください。

 山に行って、動物の糞を探して、どんな動物がいるのか、想像するのも一興です。

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