針葉樹は「年輪幅が狭いと木材の強度が高い」と一般的に言われますが、
広葉樹は「年輪幅が広いと木材の強度が高い」と言われています。
言ってることは真逆なのに、どっちも強度が高いって、「??」と疑問に思ったことはありませんか?
木材の強度は、厳密に言うと、年輪幅というよりも早材と晩材が大きく関与しています。
というわけで、まずは、早材と晩材について。
早材は、春から初夏に作られる材で、根から吸い上げられた水分を運ぶ機能を高めるため、導管や仮導管の細胞壁が薄いという特徴があります。
その結果、材の強度としては、「軟らかい材」となります。
次に晩材。
晩材は、夏から秋にかけて作られる材で、材の強度を高めるため、細胞壁が厚くなっているという特徴があります。
早材のように水を通す機能に特化していないため、晩材は「早材より硬く」なっています。
写真で説明すると、赤矢印が早材、青矢印が晩材です。
「早材は軟らかく、晩材は硬い」
木口を観察して、早材の幅が広く、晩材の幅が狭い場合、春から夏にかけて温暖で湿潤なイイ気候が長かったと考えられます。
逆に、早材の幅が狭くて、晩材の幅が広いと、春から温暖で湿潤なイイ気候が短く、初夏から秋にかけて冷温(冷夏)または乾燥(雨量が少ない)など、あまり良くない気候が続いた、という風に考えられます。
早材と晩材の1組で1年になるので、数えればその木の年齢が分かります。
いわゆる、それが「年輪」ですね。
「針葉樹は年輪幅が狭いと木材の強度が高い」と言われています。
年輪幅が狭いということは成長量が少ないという事なので、「材が柔らかい早材の幅が狭い」という風に考えられます。
単純に言えば、早材の幅が広い方と狭い方では、必然的に前者の方が強度は低下します。
それは、細胞壁が薄い早材の面積が大きいから。
「細胞壁が薄い早材の幅が広いと材の強度は下がり、細胞壁が薄い早材の幅が狭いと材の強度は上がる」
さらに、付け加えれば、晩材は広い方が良いということになります。
さて、「早材」と「晩材」を理解いただいた上で、次は広葉樹です。
広葉樹は、「年輪幅が広いと木材の強度が高い」と言われています。
実は、広葉樹全般というよりも、「環孔材の広葉樹」に限定されている・・・と考えた方がわかりやすいかなと思います。
環孔材とは、導管が環状に配置された木材のことで、ケヤキ、コナラ、クリなどがこれに該当します。
次の写真は、コナラの木口で、きれいに並んでいる小さな丸い穴が導管です。
この導管が年輪に沿うようにグルッと回るように配置されているので、環孔材と言われています。
環孔材の導管は、早材の部分に作られます。
ただし、針葉樹と異なり、成長の良し悪しに関わらず、広葉樹の早材の幅はほとんど一定です。
その後に作られる晩材は、成長が良ければ幅が広く、成長が悪ければ幅が狭くなります。
晩材は早材よりも硬い材です。
硬い晩材の幅が広いということは、硬い晩材の面積も増えるため、材の強度も高くなります。
なので、「広葉樹の年輪幅が広いと強度が高い」と言うことになります。
早材と晩材の性質という点だけで考えれば、強度が高い木材を生産したい場合。。。
単純に言えば、スギやヒノキなどの針葉樹は、早材が大きくならないようゆっくりと育て、ケヤキやコナラなどの広葉樹は、晩材が大きくなるよう盛んに成長するように育てる。
同じ樹木でも、針葉樹と広葉樹の性質の差が、真逆の施業になるなんで、面白い事象ですよね (^^)。
ただし、針葉樹も広葉樹も、年輪幅が広いと、木材を乾燥させた時の狂いが生じやすいので、年輪幅が狭い材の方が好まれます。
広葉樹の場合、年輪が狭いと強度が下がる...ということになりますが、製材側からすると加工しやすいというメリットがあります。
樹木は生き物です。
木材は樹木という生き物から採取する素材で、必ず乾燥させてから使います。
なので、製材・加工する側からすると、強度よりも乾燥時に発生する反り・曲がりなどの変形の方を避けたいです。
その点から、年輪幅が狭い材は、乾燥による細胞の収縮率が下がるので、結果的に変形が少ない木材になります。
木材は強度も大切ですが、木材を買う側からすると、強度よりも狂いや変形が少ない木材の方が好みな方が大木のではないかなと思います。
※2019年5月の記事を改編