ナラ枯れが目立つ季節になりました・・・。
感覚的には、例年より1週間ほど早い感じがします。
今年は、7月上旬から枯れが目立っています。
昨年は、雨が多かったので、天候が落ち着いた9月頃、一斉に枯れました。
一昨年は、雨が少なく、干害と同時に枯れていましたが、それでも7月中旬くらいからで、その時も「今年は早い」と感じたわけですが・・・
今年はそれよりも早い。あくまで、感覚的な話ですが(^_^;)。
和歌山県のナラ枯れは、全国的なナラ枯れと少し異なります。
簡単に分けると植生の違いと虫の違いの2点です。
①他府県は、コナラやミズナラといった落葉樹がメインで、和歌山県は、ウバメガシやシイといった常緑樹がメインという植生の違いです。
もちろん、和歌山県にもミズナラはありますが、護摩壇山、大塔山、高野山といった和歌山県内では比較的標高が高い森林に限られます。
同じ落葉系のコナラも主要樹種の1つですが、アラカシやシイと混在し、コナラが優占する森というのは、あまり多くありません。
②他府県のカシノナガキクイムシ(以下「カシナガ」)は「日本海型」と呼ばれ、和歌山県は「太平洋型」と呼ばれています。
後者は亜種(もしくは新種。”ミナミカシノナガキクイムシ?”)とされています。
常緑樹のウバメガシ、シイ、アラカシなども被害を受けますが、コナラやミズナラに比べると枯れにくいので、山の一部が枯れていても、山の中に入ると見た目以上に被害を受けていることが多々あります。
(直径2ミリくらいの穴があって、下に木屑が積ってる)
「枯れてなきゃいいじゃない」と思うかもしれませんが、和歌山県の特産品である「紀州備長炭」の原木はウバメガシです(アラカシも)。
それが被害を受けると、備長炭の原木として扱いにくくなります。
ちなみに、枯れにくいというだけで、アラカシやウバメガシも枯れています。
ナラ枯れは、「景観の劣化」として問題にされる傾向にありますが、和歌山県では「産業」に影響があるため、被害が広がると深刻な問題になります。
ところで、なぜ枯れるのか・・・。
カシナガが、木の幹に侵入すると、持ち込んだナラ菌が幹の中で広がり、木は防御反応で水分の通導器官を自ら塞ぎます。
水分を運ぶ導管を自ら塞ぐという行為は、カシナガが数匹であれば、大きな影響はありませんが、数十匹、数百匹に侵入されると、あちらこちらで、導管が塞がり、水分を運ぶことが出来なくなり、やがて、枯れてしまいます。
カシナガは、木を枯らすナラ菌のほか、エサとなる酵母類も持ち込みます。
ナラ菌が木を枯らすことで、カシナガのエサとなる酵母類が繁殖しやすい環境になると言われています。
ちなみに、ナラ枯れの正式な病名は「ブナ科樹木萎凋病」。(でも、ブナは枯れないらしい(^_^;))
カシナガが侵入した木を割ってみると、中から幼虫がウヨウヨと出てきます。
あっ、ついでに言うと、カシナガの幼虫も美味しいです。
蛹もいます。たぶん、今年、飛び立つカシナガでしょうね。
成虫も出てきます。この子はメスです。
ナラ枯れが拡大したのは、燃料革命以後、薪や炭から化石燃料に変わったことで、薪炭林が利用されず、放置された結果、コナラなどが大径化し、カシナガの繁殖に適した森林環境が増えたからと言われています。
あと、マツ枯れによって焼失したアカマツ林がコナラ等を主体とする二次林が出現したことも原因の1つと言われています。
要は、利用されず放置された結果、引き起こされた森林被害が「ナラ枯れ」というわけですね。
人々が森林を利用することで、守られる・保全される・維持される森林環境があること、一方で、自然のままに任せ、放置することで失われる森林環境もあることを、ナラ枯れを通じて、カシナガが伝えてくれているのかもしれませんね。