はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

ムクノキ(アサ科)

2016年11月28日 | 樹木・草花のお話

 タイトルを見て、「ん?」と感じた方がおられるかもしれませんが、以前、ムクノキはニレ科でしたが、今はアサ科になっています。

 

 ムクノキは陽樹で、森の中よりも裸地を狙って定着する先駆性樹種(パイオニア)です。

 種子は鳥が好む果肉質で、休眠能力をもつ埋土種子でもあります。

 林内に、鳥によってムクノキの種子が運ばれていれば、人工的な伐採や風倒木によってできた空間で素早く発芽し、成長することになります(天然更新において、重要な樹種の1つであると思います。)。

 成長が早くて寿命も長いという、極相樹種的な面をもつ先駆性樹種とも言えるムクノキ。

 神社などにも生育しており、巨木も多いので、ご神木にされていることもありますが、成長が早いので、見た目以上に実は若いということも。

 

 名の由来は、良く茂る木で「茂くの木」だそうです。

 

 ムクノキの一番の特徴はザラザラした葉。

 まさに自然素材のサンドペーパーで、切った爪の先を滑らかにすることもできます。

 象牙、べっ甲、角細工や漆器の木地を磨くのにも使われ、木材を磨くために、無くてはならないもので、昔は、鉋をかけた材木に鮫皮やトクサで荒磨きをしたうえで、ムクノキの葉で仕上げていたそうです。

 葉の鋸歯が全縁にあるところがエノキ(鋸歯は上半分のみ)との違いです。

  

 

 ムクノキ材は、散孔材で心材は黄褐色、辺材は淡黄色ですが、心材と辺材の境界は曖昧です。

 割れにくいので、強靱な材は天秤棒や工具の柄などに利用されたそうです。

 樹皮は暗褐色。

 若い時は、平滑ですが、成長すると割れ目が入り、やがて短冊状に剥がれます。

 →  →

 

 花は4~5月頃に、展葉と同時に開花し、葉の基部に淡緑色の小さな花を付けます。雌雄同株です。

 果実は10~12月頃、黒紫色に熟し、干し柿の様な甘さで、食べることが出来ます。

 果実の中の種子は約8mm、種子の表面にケイ酸が沈着し、小石を噛んでしまったように堅いそうです。

 

 ※以下、関連記事です。

ケヤキ(ニレ科)

エノキ(ニレ科)

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エノキ(ニレ科)

2016年11月27日 | 樹木・草花のお話

 ケヤキの話を続けてきたので、ケヤキと同じニレ科のエノキについて。

 エノキの名の由来は、枝の多い木だから「枝の木」、鍬などの柄に使われたことから「柄の木」、よく燃える木であることから「モエキ」という説があるそうです。

 でも、枝の多い木っていう定義が曖昧で、何を基準に枝の多い木って、言うんだろうと疑問に思います。

 「柄の木」も、そもそも道具の柄なんて、エノキ以外の樹種でも使われていたし、ヨキ(斧)の柄はカシ類じゃないとダメだし、よく燃える木って、ナラ類やカシ類もよく燃えるけど?・・・と、色々と突っ込みを入れたくなります。

 

 あと、漢字で書くと「榎」。

 夏と何かの関わりがありそうに思えますが、「道端に茂って、夏に木陰をつくる」ことから、夏の木で”榎”となったそうです。

 花も早春、実も秋。

 夏に木陰を作るから「榎」って、他にも道端で木陰を作る木ってありそうに思えるんですが・・・・

 

 と、ついつい、名前や漢字の由来にツッコミを入れたくなります。

 

 そんなツッコミを入れたくなるエノキですが、古くから神の木として信仰の対象とされているとのこと。

 植物学者の「前川文夫」の説では、神が降下するという長野県の諏訪明神の「タタイ木」は、元々エノキで、「タタイノキ→タタエノキ→エノキ」と変化したとされているそうです。

 あと、江戸時代に、道標として、街道の「一里塚」として植えられたこともあり、これも神木であった名残りとされています。

 

 エノキの材質は、やや堅いものの、強度はそれほど強くなく、狂いも生じやすい。

 でも、ケヤキの材と風合いが似ているため、ケヤキ材の代用にされることもあるそうです。

 

 樹皮は黒みを帯びた灰色で、老木になっても樹皮は裂けたり、剥がれたりしません。

 

 葉は、縁の上半部に鋸歯があり、左右の基部が不揃いというところが特徴的です。

 ←葉の鋸歯は上半分まで。

 ←葉の基部の左右が不揃い。

 花は4月頃、開葉と同時に開花し、葉の基部に小さな花を付けます。雌雄同株です。

 果実は10月頃、実は球形で直径5~6mm、橙褐色に熟します。

 味は少し甘めで、食べることが出来ます。

 

 国蝶の「オオムラサキ」の幼虫の食草がエノキです。

 なので、幼虫のエサとなるエノキと成虫のエサとなる樹液を出す樹が行き来できる場所でないと、オオムラサキは生きることが出来ません。

 

 

 ※以下、関連記事です。

ケヤキ(ニレ科)

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ケヤキの虫こぶ ケヤキハフクレフシ

2016年11月24日 | 昆虫類+αのお話

 ケヤキ続きのついでに、ケヤキの葉にできる袋状の虫こぶについて。

 この虫こぶの名前は「ケヤキハフクレフシ」といいます。

 たくさん寄生されてもケヤキが枯れるようなことはありませんが、ケヤキの美しい樹形に少なからずの悪影響を与えます。

 

 この虫こぶは、「ケヤキヒトスジワタムシ」という虫が産卵することで形成されます。

 虫こぶの中で育った「ケヤキヒトスジワタムシ」は、翅を持っており、5月~6月頃に虫こぶを脱出し、タケやササに移動します。
 一次寄主がケヤキ、二次寄主がササ類・タケ類となるので、この2種間を行き来できないと、「ケヤキヒトスジワタムシ」は生きていくことが出来ないというわけです。

 タケ・ササに移動した「ケヤキヒトスジワタムシ」は、根元に寄生し、10月頃に再びケヤキに寄生し、樹皮の下などに産卵し、そのまま越冬します。

 そして、春に孵化し、ケヤキの新葉に虫こぶを作ります。

 なお、「ケヤキヒトスジワタムシ」が脱出した虫こぶは、茶色くなって枯れます。

 

※以下、関連記事です。

 ケヤキ(ニレ科)

 ケヤキの種子散布

 
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ケヤキの種子散布

2016年11月22日 | 樹木・草花のお話

 前回に続いてケヤキのお話を・・・今回は、ケヤキの種子の散布方法について。

 樹木は動くことができないので、風や動物などを利用して、種子を遠くへ散布します。

 ケヤキは、風を利用して種子を散布するタイプ(風散布)の樹木です。

 

 風で散布するタイプの種子として、代表的なのがマツやモミジで、共通点は、風で運んでもらうための羽根がついているところです。

Momizi_syushi ←モミジの種子

 実際、マツやモミジの種子を、高いところから落とすと、ヘリコプターのようにクルクル回ります。

 

 で、これがケヤキの種子(左は未熟、右が完熟)。

Keyaki_mi02 

 風で散布するタイプの種子ですが、羽根がついていません。

 どうやって、風で種子を飛ばすのかというと・・・

 

Keyaki_mi01  

 種と一緒に付いている「小さい葉」を羽根代わりにして、種子を風で飛ばします。

 なので、ケヤキの種子は枝葉と一緒になって、落ちています。

  ←熟した種子を付けた葉は、真っ先に茶色くなります。枯れているわけではありません。

  街中に植えられているケヤキの中には、強剪定をされたケヤキがあり、たまに長さ10cm以上もある大きな葉を付けている(作る)場合があります。

 山の中に生えているケヤキでは絶対に見られない大きな葉を付けたケヤキも、種子がついた葉だけは、風で飛びやすいように葉は小さくなっています。

 なので、街中にあるケヤキを観察していると、時々、異様に大きい葉と種子を付けた小さい葉の両方を備えたアンバランスなケヤキを見つけることができます。

 普段、何気なく通り過ぎている街路樹のケヤキをじっくり観察して見ると、もしかしたら、見つけることができるかもしれませんよ~

 

※以下、関連記事です。

 ケヤキ(ニレ科)

 ケヤキの虫こぶ ケヤキハフクレフシ

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ケヤキ(ニレ科)

2016年11月21日 | 樹木・草花のお話

 キレイに黄葉したケヤキを見かけるので、今回はケヤキのお話を。

Keyaki_hatinosu01

 ケヤキの名の由来は、材の木目が美しいところから「異(け)やけき木」が転化したと言われています。

 ケヤキ材は、硬くて緻密で狂いが少なく、耐湿性があり、非常に優良なため、器具や家具、建築材などと用途も幅広く、昔から重宝されていました。

 また、枝がほうき状に広がり、美しい樹幹を形成するため、街路樹や庭園樹、盆栽といった園芸目的の用途もあります。

 ケヤキ材の利用径級は24cmからと言われており、40cmからは「用材」、80cm以上は「銘木」とされています。

 心材に赤味のあるケヤキ材を「アカケヤキ」、青味があるものを「アオケヤキ」とか「ニセケヤキ」とも呼ばれ、価値は「アカケヤキ」の方が高いです。

 以前、谷筋など水気の多い土壌で育ったケヤキは、「アオケヤキ」が多いと教わったことがあります。

 

 ケヤキは年輪が数えやすい広葉樹で、導管も肉眼で分かるくらい太いのがわかります。

 太い導管を持っているということは、葉からの水分蒸発量が多いと考えられるので、ゆえにケヤキは、水分条件の良い谷筋などによく生えているのだと思います。

 ということは、自ずと「アオケヤキ」が多くなるということなので、「アカケヤキ」がレアで価値が付いたんじゃないのかな~・・・と思っていますが、真実はわかりません!

Keyaki_toy←ケヤキ材の車。値段は39,800円!

 

 ケヤキは材だけでなく、枝がほうき状に広がって、美しい樹幹を形成するため、街路樹や庭園樹、盆栽といった園芸目的の用途もあります。

 ケヤキは陽樹なので、陽当たりたりの良い場所でないと稚樹は育たないですし、成木も強い光を求めます。

 さらに谷筋など水分条件が良く、水はけや通気性も良い場所を好むので、本当は街路樹のような街中での生育は不向きではないのかなと思います。

 

 樹皮は鱗片状に剥がれますが、剥がれるのは老木(樹齢50年前後らしい)で、若木では剥がれず、平滑です。

←老木。

←これよりも若い木は、皮目がはっきりせず、もっと平滑なです。

 

 葉の縁にある屈曲する鋸歯が特徴的です。

 葉の長さは3~7cmですが、強剪定された街路樹の葉は10cmくらいになるものもあります。

 

 花は4月頃、葉の展開より少し早目に咲きます。

 雌雄同株で、雄花は新しい枝の基部に、雌花は先端に咲きます。

←開花前。こんな感じに花が付きます。

 実は10月頃、いびつな球形が特徴的です。

 葉腋に付き、長さは約5mmくらい。

 果肉は液質にならず、種子はやや硬質の内果皮に包まれます。

Keyaki_mi02 →

 

※以下、関連記事です

 ケヤキの種子散布

 ケヤキの虫こぶ ケヤキハフクレフシ

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天然更新による針広混交林化 広葉樹林化

2016年11月19日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 木材価格低迷などの影響もあり、スギ・ヒノキ人工林の針広混交林化・広葉樹林化を進めている方もいらっしゃるかと思います。

 これまで天然更新に関するお話をしてきましたので、今回は、これまでのまとめということで、天然更新による人工林の針広混交林化・広葉樹林化についてお話したいと思います。

※天然更新に関する記事について、今回、初めてご覧いただく方は、こちらからどうぞ → 遷移

 

 現代における針広混交林化・広葉樹林化の目的は環境志向がほとんどかと思います。

 人工林を伐採後、放置すれば天然更新が進み、針広混交林化・広葉樹林化が完了する・・・というものではありません。(もちろん、完了する場合もありますが・・。)

 

 まず、針広混交林化を図る場合、強度間伐を行う例が多いと思います。

  強度間伐→

 間伐した空間に広葉樹を誘導するわけですが、周辺に種子を供給する「母樹」や土壌中に休眠する「埋土種子」がないと、広葉樹の誘導は進みません。

 まったく何も生えないということはありませんが、高木性の広葉樹が生えるには、かなりの年数がかかると思います。

 また、ヒノキ林の場合、強度間伐を行うと、林内の乾燥が進み、樹勢が衰退し、マスダクロホシタマムシなど害虫被害の発生や枯死する場合があるため、何でもかんでも強度間伐を行えば、良いというものでもありません。

 陽当たりの関係や土壌の性質などの環境によって、なので、強度間伐は人工林を衰弱させてしまうリスクというものを抱えています。

 

 天然更新は「天然下種更新」と「萌芽更新」に大きく分けられますが、一般的に言われている天然更新は「天然下種更新」を言います。

 天然下種更新は「側方天然下種更新」と「上方天然下種更新」に2種類に分けられ、前者は風によって種子を散布する更新方法で、後者はドングリなどのように落下して行う更新方法です(ネズミなどの小動物が運ぶ場合もあります。)。

 天然更新で、広葉樹林化・針広混交林化を進める場合は、種子の供給源となる「母樹」と土壌中に休眠する「埋土種子」が重要となってきます。

 

 周囲に広葉樹もなく、スギ・ヒノキ人工林しかない場合・・・

 母樹がないので、種子が運ばれてくる可能性も低いと思います。

 埋土種子は、ほとんどが鳥によって散布されます。

 鳥は、種子と一緒に糞を排泄することで、種子を散布しているわけですが、鳥は飛びながら糞をすることは出来ません。

 必ず何かに立ち止まらないと糞をすることができません。

 スギやヒノキの実(種子)は、鳥が好む実(種子)ではないので、鳥が立ち止まる機会も、立ち寄る機会も少なく、結果、人工林内に埋土種子が運ばれる可能性が低いと考えられます。

 鳥は果肉質の種子を好むので、ヤマザクラ、エノキ、ムクノキ、クスノキ、クマノミズキなどが間に生えていると、埋土種子が運ばれる可能性が高いと考えられます。

 埋土種子の中には、伐採後、直ちに発芽するものが多いので、広葉樹林化・針広混交林化が進む1つの要因となります。 

 

 側方天然下種更新は、風によって種子を散布(風散布)し、天然更新を図ります。

 下図のように風散布の母樹林と隣接する人工林があった場合・・・

 〇=母樹、△=人工林

 風散布の散布範囲は、樹種によりますが、20~30m程度で、長距離で100m程度とされています。

 なので、母樹から100m内外の範囲は天然下種更新、それ以外は植栽が必要になると考えられます。

 ちなみに、植栽が必要なエリアに埋土種子が存在すれば、植栽の必要もなくなる(少なくなる)というわけです。

 下図で言うと、黄色の点線が天然下種更新箇所、水色の点線が植栽箇所。

 

 逆に、人工林を囲むように風散布の母樹林があれば、側方天然下種更新による広葉樹林化・針広混交林化が図れる可能性が高いと思います。

 

 母樹が多ければ多いほど、種子もたくさん供給されるので、上図の様な条件であれば、人工林の広葉樹林化・針広混交林化もスムーズに進むかもしれません。

 

 上方天然下種更新は、ドングリなどが落下することで種子を散布する更新方法なので、風散布よりも種子の散布範囲は狭く、樹冠の端から数mとされています。

 下図のように、人工林内に母樹があった場合。

  散布範囲はこんな感じ→

 下図で言うと、黄色の点線内が上方天然下種による更新可能箇所、水色の点線内が植栽が必要な箇所。

 下図は混交林化をイメージしたものなので、水色の点線は小面積皆伐になります。

  

 上方天然下種更新の母樹は、種子散布の範囲が狭いので、通常の皆伐だと、かなりの母樹を残さないと、ほとんど更新しない可能性が高いと思われます(間伐程度が良好かと思います)。

 現場にある母樹、その母樹が生産する種子の散布範囲を考慮した上で、伐採率を検討したり、植栽の有無を検討する必要があります。

 もちろん、埋土種子が存在すれば、植栽を省略できる可能性はありますが・・・。

 

 天然更新で広葉樹林化・針広混交林化を進める場合、その林分に存在する母樹や保存する母樹などを調査する必要があります。

 天然更新はマニュアル化ができず、現場現場に応じて対応しないといけないので、結構、複雑ですし、これまでの人工林育成とは異なる知識や技術も求められます。

 単に伐採して、放置すればよいというものではなく、事前調査を行い、天然更新の計画を立てる必要があります。

 日本は、温暖多雨で四季があるという非常に恵まれた環境にあるため、植物が繁茂しやすく、植生も非常に豊富です。

 しかし、植物が繁茂しやすいという環境が、天然更新の阻害要因にもなっています。

 日本における人工林では、播種造林の成功例はほとんどないと言われています。

 航空種子散布という方法も実施されたそうですが、成功した事例はないそうです。

 

 日本における森林の更新は、植物同士の生存競争と向き合わないといけません。

 この競争関係を少しでも有利にするため、初めから一定の高さに成長した苗木を植える「植栽」という手法が、一般的になったと思います。

 播種造林は、他の植物に被圧されるだけでなく、種子が虫や動物に食べられたり、雨に流されたりといったリスクもあったため、普及しなかったと言われています。

 天然下種更新も播種造林と同じで、ただ人が行うか、自然に任せるかの違いです。

 人工林における播種造林が、上記の理由により困難であるたように、天然更新も同じように困難な部分が考えられ、単に放置すればいいというものではありません。

 また、天然更新を確実に成立させるためには、地掻きや下刈りなど更新を補助する作業も必要です。

 

 と、調査が必要だの、施業が必要だのとダラダラ述べましたが、あくまで理屈の話、机上の話なので、実際に1つ1つの現場で実践していくことは難しい。

 架線集材の場合、搬出に支障を与える立木は、支障木として伐採していると思いますが、その支障木が天然更新を行う上で、重要な母樹である可能性もあります。

 スギやヒノキを搬出する際、サクラなども搬出する場合もあると思いますが、サクラは、埋土種子を運んでくれる鳥を招く樹木でもあります。

 普段、何気なく行っている作業の中で、天然更新のキーマンを伐採しているかもしれません。

 高性能林業機械で搬出間伐をする際、合間合間に地掻きを行って、風で散布された種子が発芽しやすい、成長しやすい環境を整える・・・というのも重要かと思います。

 人工林を広葉樹林・針広混交林に転換したい、もしくは将来的に転換も視野に入れたいとした場合、主伐や間伐で行う作業の中で天然更新に必要な作業を取り入れることが、1つのポイントになろうかと思います。

 また、主伐や間伐の調査を行う際に、母樹や埋土種子の調査も同時に行うことも重要なポイントになると思います。

 とは言え、目の前の作業を効率良く行い、生産性も上げていかないといけないので、理解していても現実的に難しい部分は多々あると思います・・・。

 

 これからは、天然更新で広葉樹林化・針広混交林を進めるため、こうした植生などに詳しい人が現場の作業員に直接、指導・監督する体制を整える必要があるかと思います。

 天然更新のコーディネーターみたいな?

 

 ちなみに、各都道府県の行政が天然更新の完了基準というものを定めていると思います。

 たぶん3~5年の間に一定の樹高と密度を満たすよう定められていると思います。

 おそらく、その基準を満たすには、種子散布の範囲が大きい「側方天然更新」、伐採後、直ちに発芽する「埋土種子」、伐採地に真っ先に侵入する「先駆性樹種(パイオニア)」、日当たりの強い環境を好む「陽樹」といった特徴をもつ樹木が重要になってきます。

 少なくとも、ブナなどのように成長が遅く、種子散布も広範囲でない樹木では、完了基準を満たすことは難しいと思います。

 一定の基準を満たすことができる天然更新が可能なエリアと植栽が望ましいエリアを区分するなど、天然更新も計画性が求められます。

 

 と、長文でダラダラと書き綴りましたが、僕がお伝えしたかったことは、「伐採して、そのまま放置すれば、天然更新が完了するものではない」ということです(シカの食害という問題も加わりますし・・・)。

 

 放置しても天然更新が成立する場合もあります。

 地掻きなどの施業を行わないと成立しない天然更新もあります。

 どの林分でも放置すれば天然更新が成立するというものではなく、その林分の環境に適したそれぞれの天然更新があるとお考えいただきたいと思います。

 天然更新のコストが、0で成立するのか、ローコストに抑えられるのか、ハイコストとなるのか、それはその林分の環境などを把握しないと見えてこないと思います。

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天然更新に必要な施業

2016年11月12日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 前回、天然更新施業の流れについて、簡単にサラッとご紹介しました。
 今回は、天然更新の施業の中でも重要な「下刈り」や「地掻き」といった更新補助作業について、少し詳しく説明したいと思います。

 

 天然更新は、種子の供給源となる「母樹(ぼじゅ)」や後生稚樹(伐採後に定着する稚樹)となる「埋土種子(まいどしゅし)」、あと前生稚樹(伐採前から定着している稚樹)の存在がとても重要です。
 しかし、母樹や埋土種子が豊富に存在していても、それぞれの樹種によって発芽条件や生存条件が異なります。
 なので、伐採林分を発芽などの条件に適した環境に整える作業が必要となり、その作業が「下刈り」や「地掻き」になります。

 2つ前の記事でご紹介した天然更新対象樹種の類型である「カンバ型」、「ブナ型」、「シラベ・コメツガ型」に分けて、下刈りなどの必要性について、お話したいと思います。

「カンバ型」の場合
 カンバ型は耐陰性が低く、明るい光がよく当たる環境で速く成長する樹種(早生樹)が含まれます。
 なので、母樹を残し、稚樹が定着できる明るい環境を整える必要があります。
 種子は軽く、風によって広く散布(風散布)するタイプの種子です。
 そのため、種子は小さく、芽生えも小さいので、発芽場所の条件が、発芽後の生存と成長に大きな影響を与えます。
 なお、カンバ型は「側方天然下種更新」なので、伐採林分に隣接する場所、または伐採林分内に母樹を残す必要があります。
 土壌が露出した部分では、種子の定着と成長が良く、草本・低木類・ササが密生するところでは、定着し難いため、伐採の際には、ある程度、土壌を露出させる必要があります。

←草本などの覆われたり、枝条が積みあがった場所では発芽しにくい。

←下刈りを行い、土壌を露出させると発芽しやすい。

←枝条などを除去し、地掻きを行うと発芽しやすい。

 種子の結実時期は、樹種によって異なりますが、ほとんどは秋季に結実し、種子が散布されるので、下刈りなどの更新補助作業は、8月までに完了させる必要があります。
 その後の成長を良くするためには、草本やササなどの繁茂具合で下刈り作業を行う必要も出てきます。

「ブナ型」の場合
 ブナ型の稚樹は、カンバ型よりも耐陰性が高いので、暗い環境の林内でも稚樹は存在していますが、稚樹の成長にはある程度の光が必要となるため、林冠を疎開し、林床が明るい環境を整える必要があります。
 伐採前の暗い林分でも稚樹は存在するものの、その稚樹の密度は低く、更新としては不十分なので、後生稚樹の発生を期待することになります。
 なので、母樹を残し、後生稚樹の定着と成長&前生稚樹の成長が促進できる林床が明るい環境を整える必要があります。

 種子は重く、地面に落ちて斜面を転がるように種子を散布(重力散布)する、またはリスなど動物によって散布(動物散布)するタイプの種子なので、広い範囲で種子を散布することができません。
 そのため、カンバ型よりも多く母樹を残す必要があり、「上方天然下種更新」なので、伐採林分内に母樹を残す必要があります。
 ちなみに、伐採林分に隣接する場所に母樹を残しても、種子の散布範囲は狭い(樹冠の端から5mくらい)ので、天然更新は進みません・・・。
 ブナ型の種子は、発芽に必要な栄養分が含まれているので、カンバ型のように地掻きまで行う必要はないかと思います。
 コナラやクヌギなど成長の早い樹種の場合、下刈りが省略できる場合もあるので、樹種の成長速度と草本・低木類・ササなどの繁茂状況を見ながら、下刈りの有無を判断する必要があるかと思います。

下刈りは繁茂状況と成長に応じて。

 ブナ林の場合、林床がササという場合がほとんどです。
 そして、ササの密生はブナ更新の阻害要因となります。
 ブナ林の天然更新は、「択伐で林床を適度に明るくする」、「母樹を多く残し、種子を散布させる」、「下刈りなどでササの繁茂を抑制する」という点が重要とされています。

「シラベ・コメツガ型」の場合
 大概の針葉樹は(アカマツなどの陽樹は違います。)は、この部類に当てはまります。
 耐陰性が高いので、発芽の生存率も高く、数十年間も生存している稚樹もあるため、前生稚樹が豊富に存在します。
 伐採で林床を明るくすることで、徐々に成長し、更新することが可能となります。
 ちなみ、前生稚樹の密度は、土壌条件の影響を受ける林床植物と密接な関係があるとされています。

 針葉樹を天然更新したい場合、伐採面積を小さくし、前生稚樹に適度な光が当たるような環境を整える必要があります。
 大面積で伐採すると乾燥で前生稚樹が枯死したり、カンバ型の樹種が侵入したりすることもあります。
皆伐すると前生稚樹が枯死することも。

皆伐するとカンバ型の樹種が侵入することも。

 なので、伐採方法は帯状伐採、小面積皆伐、単木的択伐が適切で、多くの前生稚樹を残し、成長を促す必要があります。

←帯状伐採

←小面積皆伐

←単木的択伐

 

 天然更新対象樹種の類型が「カンバ」・「ブナ」・「シラベ・コメツガ」となっている時点でお気づきだと思いますが、「これって、冷温帯や亜高山帯といった東北地方~北海道の森林のことじゃないの?」と疑問に思う方がほとんどだと思います。

 おそらく天然更新が実現できたのも東北や北海道で、また、それに関する研究や事例も東北や北海道が中心だったからではないかと思います。

 しかし、暖温帯や常緑樹林であっても、基本的な考え方は変わりません。

 温暖な地域の森林であっても、「カンバ型」に当てはまる樹種(アカマツ、ノグルミなど)、「ブナ型」に当てはまる樹種(シイ、カシなど)「シラベ・コメツガ型」に当てはまる樹種(ヒノキ、ツガなど)はあります。

←アカマツ ←コナラ ←モミ

 当然ですが、どの樹種がどの類型に当てはまるのかという判断は、スギやヒノキを扱ってきた分野とは異なる専門的な知識が必要になってきます。

 天然更新は伐採後、そのままにしておけば成立する・・・というものではありません。

 一番手間がかからず、低コストというイメージを持たれている方もいますが、実際は、母樹の残し方、伐採方法や伐採率、伐採後の状況に応じた施業方針など、植栽よりもコスト増ということも十分に考えられます。

 天然更新によって、どのように森林を作り上げていくのか。

 木材生産を目的とするのか。

 特用林産物の生産を目的とするのか。

 景観を目的とするのか。

 広葉樹林化など樹種転換を目的とするのか。

 目的によって、伐採方法も検討しないといけません。

 そして、単に行政が定める天然更新完了基準を満たすことが目的であったとしても同様です。
 定められた期間内に、定められた密度と樹高を満たすには、「カンバ型」「側方天然下種更新」「先駆性樹種(パイオニア)」が一番効果的だと思われます。
 しかし、すべての伐採林分が「カンバ型」「側方天然下種更新」が可能で、「先駆性樹種」が存在しているわけではありません。

 種子の供給源となる母樹は存在するのか。
 先駆性樹種となる埋土種子は存在するのか。
 それを事前に把握することも重要です。

 結果的に天然更新が一番コスト高という可能性もあります。(実際は、天然更新が手を抜きやすいという悪魔の囁きがあると思いますが。)

 個人的に、「コストをかけるほど天然更新の成林率は上がる」と思っています。
 が、目的や見据えるゴール地点によって、異なるので一概には言えません・・・
 でも、スギやヒノキの人工林を・・・「広葉樹林化する」、「針広混交林にする」場合は、かなりコストをかけないと成立しないと思っています(ん~コストをかけても成立しないかもしれませんが・・・)。
 と、話がズレてきたので、この話はまた次回・・・別の機会に・・・。


 一応、図を取り入れて、下刈りや地掻きが天然更新に必要な施業であることを、分かりやすく説明したつもりです・・・・が、
 逆にややこしかったら・・・・これが自分の限界なので、ホント、申し訳ございません。ご容赦下さい・・・。

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天然更新施業

2016年11月06日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 天然更新は、伐採後、そのままにしておけば、自然に樹木などが生えて更新する・・・という都合の良いモノではありません。

 天然更新が成立する確率を上げるために必要な施業というものがあります。

 一般的な天然更新の施業について、順番に説明したいと思います。

 (注意!)ここで説明する施業は、基本的に天然林の伐採後に行う天然更新の施業となっています。スギやヒノキなどの人工林(一斉林、単一樹種で構成された森林)を伐採した後に行う天然更新の施業は、これらの応用がさらに必要になると思います。(注意!)

 

1.伐採箇所の調査

 伐採前(伐採3~4年間前)に、伐採箇所の全てまたは一部を調査します。

 伐採箇所の林分を構成している樹種やサイズ、前生稚樹(伐採前に生えている稚樹)の有無、サイズ、密度などを調べます。

 調査結果を基に、伐採後の天然更新でどのような山に仕立てるのか、その林分目標を設定します。

 また、伐採する立木や保残する立木を決める資料にもなります。

 同様に、人工林の場合も、伐採対象林分内やその周辺林分の母樹や前生稚樹の位置や樹種、サイズ、密度などを調べます。

 この林分が、「上方天然下種更新or側方天然下種更新」、「カンバ類型orブナ型orシラベ・コメツガ型」といったどの特徴に当てはまるのか、その組み合わせは?・・・という検討資料にもなります。

 

2.伐採木と保残木の選木

 確実な天然更新を行うため、必要でとても重要な作業です。

 基本的には、母樹や中小径木を保残木とし、それ以外は伐採木とします。

(←モミは用材。ヒメシャラは床柱に〈昔は・・・。〉)

 選木は熟練のいる重要な作業とされ、樹種/形質/成長具合/病害虫/位置関係などを判断材料に個々の立木ごとに判定していきます。

 伐採率も個々の林分状況におうじて決める必要があるので、何%と決めがたい部分があります。

 というのも、森林が再生できる伐採率にしないといけないので、低くければ前生稚樹が成長しなかったり、後生稚樹が発生しなかったりすることも考えられます。

 逆に、伐採率が高すぎると目的外の樹木や草本類が侵入してきます。

 どの程度、伐採するのかによって、「遷移をコントロールする」ことになるので、教科書やマニュアルのように伐採率を示すことができません。

 なので、調査結果をベースに現場に応じた伐採率をその都度決めることになります。

 人工林を皆伐する場合も、なるべく広葉樹は残した方がいいです。

 林縁部の広葉樹はもちろん、伐採地の所々に広葉樹を残すことで、それが母樹となり、鳥の止まり木にもなります。

 鳥が止まれば、種子を運んでくれるので、より稚樹が定着しやすくなります。

 特にヤマザクラなど果肉質の実ができる樹木を残すと、鳥が集まりやすくなります。

 ヤマザクラを材として搬出すべきか、天然更新のキーマンとして残すか、といった選択も考える必要があります。

 

3.伐採

 保残木を傷つけないよう伐採と搬出を行います。

 

4.残存木の確認

 保残木が当初の予定通り残っているか、伐採と搬出時の損傷の有無を調べます。

 

5.補助作業

 日本は四季があり、降雨量も安定しているので、植相・植生が豊富な国です。

 その反面、多種多様な植物が繁茂するため、天然更新の阻害要因にもなります。

 繁茂の状況次第で、下刈り、地掻きなどの地表処理を行い、稚樹の定着や成長を促進させる必要があります。

 この作業が何年続ける必要があるのかという点も、繁茂状況や稚樹の成長との関係を見ながらになります。

 あまり繁茂していないのに稚樹が少ない場合は、人工下種や植栽する必要があります。

 人工林の場合、枝葉を取り除いた木材を搬出する「全幹集材」と枝葉を付けたまま木材を搬出する「全木集材」という方法がありますが、全幹集材は枝葉を林地に残すため、更新阻害の要因となる可能性があります。

(←全幹集材)

 ちなみに林地保全の観点では、林地に枝葉が残らない全木集材よりも林地に枝葉が残る全幹集材の方が優れています。

 

6.成長と更新状況の調査

 稚樹が下層植生よりも高く成長し、稚樹の密度も高いと更新完了と言えます。

 更新不良の場合は下刈り、地掻きなどの地表処理、人工下種、植栽を行う必要があります。

 

7.林分改良

 伐採後に生えてきた樹木のうち、目的外の樹木の繁茂を抑制し、目的の樹木の成長促進を行います。

 この作業で目的樹種の多い森林に誘導していきます。

 ただし、木材生産や高蓄積林分を目的とした一斉林に近い林分を目指したい場合は、この作業は不要となります。

 

 以上、1~7が一般的とされる天然更新の作業です。

 とは言え、実際の現場では、ここまで丁寧に実践することはかなり難しいと思います。

 伐採者が森林を所有する林業会社なのか、森林組合なのか、素材生産業者なのか、によって、どこまで手をかけることができるのかという点で、金銭的なことも含め、これらの施業を実践するためにある程度の制限もかかってくると思います。

 施業のマニュアル化はとても重要ですが、それをそのまま現場で実践できるか否かという問題もあります。

 しかし、今後、人工林を伐採し、再造林のことを考えると、天然更新という選択肢も視野に入ってくると思います。

 その際には、伐採したまま放置することが天然更新ではないということ、天然更新を成立させるために必要な施業もあるということを知っておくことは大切だと思います。

 特に母樹や前生稚樹を残すことも重要です。

 また、将来的に天然更新を行いたい場合、少しでも天然更新の成功率を高めるため、埋土種子を確保することも重要です。

 埋土種子を確保するためには、鳥が集まる樹木を配置する必要があります。

 スギ・ヒノキ林は鳥が好む木の実を付けないので、採りを集めるためには、ヤマザクラのような果肉質の実を付ける樹木を配置することも、天然更新の成功率を上げる要因となります。

 天然更新は、遷移をコントロールする必要があります。

 そのためには、ある程度のコストが必要になります。

 天然更新は、コスト0とかローコストのように感じますが、確実に更新したい場合は、育林コストをかける必要があります。

 

 伐採後、そのまま自然に任せればいい・・・と言いきれるほど、天然更新は簡単ではないと思います。

 人工林皆伐後は、天然更新が成立することはとても難しいと思っています。

 正直なところ、天然更新ではなく、植栽すべきと思っています。

 まずは植栽を計画したうえで、天然更新が可能と思える部分を調査し、その可能性を見出したうえで、部分的に天然更新が可能なところは天然更新で、それ以外は植栽・・・という方法がいいのではないかと思っています。

 

※記事「天然更新に必要な施業」へ続きます。※

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