5月。天に向かって紫色の花を咲かせるキリ。
この花の姿をモチーフにした紋章が「桐紋」で、日本国政府の紋章になっていますし、皇室、豊臣秀吉の政権、室町幕府でも桐紋が使われています(いました)。
桐紋の種類は140種類以上あるそうです。
図に描かれた花の数が「3本・5本・3本」の紋章は五三桐(ごさんぎり)。
図に描かれた花の数が「5本・7本・5本」の紋章は五七桐(ごしちぎり)。
500円玉に桐紋が描かれているので、気になる方は500円玉を見てね。(^_^;)
キリはゴマノハグサ科の樹木で、日本の在来種樹木の中で、一番軽い木材です。
”キリ”という名前の由来は、伐っても伐っても芽を出し、成長するところから「伐る(切る)=キル」が由来という説や、材が白っぽくて木目が美しいので「木理(きり)」が由来という説があるそうです。
北海道南部から九州まで幅広い地域に分布し、陽あたりの良い場所に生育していますが、陽あたりがよくても、湿地や谷など土壌水分が多い場所は好みません。
植生遷移で言えば、先駆性樹種(パイオニア)なので、伐採跡地や崩壊地などに真っ先に生える樹木の1つです。
昔は、娘が生まれたら、庭に桐の木を植え、娘が嫁ぐときに、その桐でタンスを作って、嫁入り道具として持たせたと言われています。
桐材は軽いだけでなく、適度な強度があり、割れも少なく、その上、吸湿性にも優れ、ほとんど膨張しないという非常に優れた特徴を持ちます。
さらに、キリの細胞は空洞が多く、熱を伝えにくいと言う特徴もあり、火に強い性質を備えています。
こうした性質から、昔から、貴重品を桐箪笥に納め、火事から守っていたそうです。
寒い地域で育ったキリの方が、年輪が細かく、良質な桐材が取れるので、秋田県の「秋田桐」、岩手県の「南部桐」、福島県の「会津桐」など寒い地域の桐材が有名です。
キリは成長が早く、20年もあれば十分な大きさに成長するので、娘の成長とキリの成長が一致していたんではないでしょうか。
日に日に、大きくなるキリを見て、娘の嫁入りが近くなることを実感する・・・そんな、父親の複雑な気持ちが想像できます(T_T)。
逆に、大きなキリを見て、年頃の女性がいるなと想像する輩もいるんでしょうね・・・・(`Д´)
若いキリの樹皮は皮目が目立ち、年数を重ねると樹皮に浅い割れ目が生じます。
5月頃、枝先に多数の紫色の花を咲かせます。
花は直径5cmほどで、花の形は鐘状です。
花を拡大してみると、こんな感じ。
キリの花芽。(実じゃないですよ。)
キリの実は、
先が尖った卵形で、直径2~3cmほど。
熟すと二つに割れ、中から翼のある種子が多数飛び出します。
キリの葉は大きく、30cmになるものも!
葉の表裏には、ビロード状の毛があるので、陽当たりが良くて、葉っぱがめっちゃ大きくて、触るとビロード状のふわふわした感じの木があれば、キリに間違いない!(と思います(^_^;)。。)。
国内に流通している桐材のほとんどは中国など海外の桐材だと思います。
キリはタンスだけでなく、強度があって軽く、防虫・防湿・防火効果に加え、音響を高める効果もあるらしく、「琴」にも使われています。
最近は、フローリングに使う試みもあるので、林業という産業の中で、成長が早い「キリ」を育てるのも魅力的かなと思います。
といっても、林業は時間軸が長い産業なので、何かと同時並行に取り組まないと難しいですよね。
キリも20年は育てないといけないし、良材を得たければ、ゆっくり成長させて、年輪を細かくしないといけないので、温暖な地域で良質材を目指すのは大変そう。
だったら、早く成長できる利点を生かして、年輪が粗くても使える桐材生産を、20年後を見据えて、育てる。
まさに、林業は次世代へ繋ぐ産業。