番組中、同じ1.5Lクラスの他車に動力性能で酷評を受けた アクセラの 15XD。
多少の予測はあったけど、ここまで差が出た理由を自分なりに考えてみた。
動力性能を数字で見ると、明らかに アクセラ の 15XDがドン尻になってる。
実際に走行しても、その印象は変わらなかったようです。
他の ミニ D や 308 Blue HDi にほとんど見られない、低回転域のダルさも マツダの一人負け。
はて、何でだろう??
注目したのが、「圧縮比」。
マツダの SKYACTIVE-D は超低圧縮比が最大の特徴です。
圧縮比を下げる事で、爆発時の衝撃を抑える事ができる。
なので、衝撃に弱いが軽量な アルミ でエンジンブロックが作れたり、ピストン他の質量を削って軽快な回転フィールを生み出せる。
実際、SKYACTIVE-D2.2 のシーケンシャルターボを持つエンジンに乗ると、静かで全回転域でスムーズ、非常識な高回転域まで一気に回ってみせる♪
ディーゼルの特徴である、厚いトルクもほぼ全域で享受できるし。
アルミの多用のせいか、エンジン自体も昔に比べると劇的に軽い(ガソリンよりは重いけど)。
ところが、SKYACTIVE-D1.5 の場合、可変ジオメトリーターボ という高価な部品を使っても、D2.2 の評価に及ばない。
何故だろう??
恐らくは 「絶対排気量」。
エンジンは、より沢山の燃料を、より高圧で爆発させる方が 大きな出力を取り出すことができるのは常識。
多分、D2.2 はこの 排気量 と 圧縮比 のバランスが取れていたのだと思う。
それをダウンサイジング化し、より小型の 「デミオ」 等に積もうと無理したのが D1.5 なんでしょうね。
実際、SKYACTIVE-D1.5には コンパクト化のために様々な工夫が施されている。
先の 可変ジオメトリーターボも その一つ。
最近では ポルシェ718 の水平対向4気筒と組み合わされて話題だが、高回転まで回る事が特徴のマツダ・クリーンディーゼルの帯域をカバーするために採用された。
D2.2のように、大小2個のターボチャージャーをシーケンシャルに繋げて搭載できれば良かったが、搭載スペースの問題で無理だったと聞く。
なので、特性を変化(可変ジオメトリ)させる事で、ターボを1個に抑えたD1.5。
でも、低回転域(~1,800rpm付近)のダルさと、突然そのあとに気持ち良く吹け切る特性は、この 可変ジオメトリーターボの 煮詰めの甘さか、制御の問題が引き起こしてるのではと睨んでいる。
DE精密噴射でかなり改善したものの(これは実感)、やはりまだまだ 段付き加速のクセ は残ってしまっている。
ターボで加圧された熱吸気を冷やすための 「インタークーラー」 も独特。
通常は配管を撮り回し、外気をインタークーラーに当てて冷やす 「空冷式」。
これも、インタークーラーを取り付ける空間が稼げなかった。
そこで、エンジンに空気を取り込む 「インテークマニホールド」 と、「インタークーラー」 を合体させて搭載している。
「水冷式 インテークマニホールド一体型インタークーラー」 なのです。
これなら、エンジンの外ではなく、一部にインタークーラーが内臓できるメリットがある。
冷やすために、冷却水を内部に通す必要はあるのだけど、スペース効率的にはかなり有利。
こうした地道な工夫で 「小型化最優先」 で生まれたのが SKYACTIVE-D1.5 なんだと思うのです。
ミスターエンジン 「人見さん」 も言われてるように、エンジンにはある程度の排気量があった方が効率がイイという話がこの辺りにも表れている気がする。
可変ジオメトリーターボを使い、DE精密制御を組み合わせても、絶対排気量(出力)の足りない部分は操縦者がアクセルを 「踏み増し」 しないと稼げない。
それだけ 「余分な燃料」 を吹く必要が生じる。
(この点で15XDと22XDのカタログ燃費に大差が無いのかも)
小排気量ゆえに、こうした不利な点が、加速初期のダルさや、絶対出力の小ささを生み、海外の同排気量勢に劣る評価に繋がったと想像してます。
いろいろな意味で、理想的に作られてるのはやはり SKYACTIVE-D2.2 だと思う。
欠点らしいところがほとんど見当たらない。
ただし、今回の改良で DE精密制御が施された事で、踏んだ瞬間から ガルルッ! って車が前に引きずられる感じがスムーズな加速感に対して、逆効果だと感じている。
既存のアクセラXDなら、回せば同様に豪快な加速を見せたけど、低回転域のパワーはやや控えめ(レスポンスは良い)で、滑らかにスムーズな加速ができた。
それが、踏んだ瞬間に唐突な加速が始まるようになり、私的にはマイナスの印象(扱い辛い面)。
今回AWDが設定されたが、22XDで雪道の発進を想像すると、いきなりトルクが立ち上がって危険なシーンが予想された。
実は自身がアクセラを選ぶ際、この強烈な初期トルク感の扱い難さが 15XDの方を選択した理由の一つ。
15XDなら、ガソリンエンジン感覚で少し回転を上げ気味にして走れば、さして扱い難く感じなかったし。
まぁ、理由の大半は 「高くて手が届かない」、でしたが(汗。
根本的な疑問、「なら圧縮比を上げれば他車と同様のパフォーマンスが稼げたのでは」?
そう考えると、「その通り」 だと思います。
でも、あえてマツダは しなかったのだと思う。
超低圧縮比とすることで、高温高圧で大量に発生する 窒素酸化物(NOx)を 抑え込み、特別な後処理装置(これが高い!)無しで唯一、ガス検をクリアしてる!
恐らく、マツダ以外のクリーンディーゼルはほぼ例外無く、尿素だの何だのと 高価な後処理装置で汚れた排気ガスを浄化させている。
エンジン単体でクリーンな排気を達成できてるのは、マツダだけなんですね ←だから世界中から注目されてるらしい♪
等々考えると、SKYACTIVE-D1.5 を搭載した 「アクセラ 15XD」 が ミニやプジョーに動力性能で負けたのは 「当然」 だったのでしょう。
下げ過ぎた排気量で、初期加速のダルさが残っているのも仕方無いのかも。
まぁ、それでも マツダが気になってしまうのです。
奇想天外な発想で、次々と面白い事をやるメーカーだし、小手先の対処に頼らず、根本的な部位にメスを入れる。
恐らく、今の国内では数少ない技術屋 の集団な気がするのです♪
そう思えるから、また次の一手に期待してしまう。
SKYACTIVE-D1.5 の 中回転域より上の動力性能は、私的に 「必要にして十分」 。
きっと、今後は初動域のダルさや、段付き加速(1,800rpm付近)のクセを改良したものが登場すると思う。
そう思えるのが、私にとっての マツダ なのですw