草履で歩きながら考える

笑う門には福来たるで、マイペースでやりたいこと やってみよう♪基本PTAブログですが、日常やがんのことも綴ります。

岡本茂樹『いい子に育てると犯罪者になります』

2017年04月11日 | 本棚

ひさびさに本を紹介します。
ネットサーフィンしていてちょっと刺激的なタイトルの本を発見し、読んでみました。

『いい子に育てると犯罪者になります』
著:岡本茂樹
新潮新書、2016年3月

心理学をまなばれた著者は、刑務所や少年院で、犯罪をおかした人々の更生プログラムを行っておられました。「おられました」と過去形なのは、2015年に著者がなくなっているからです。この本は、遺稿をもとに出版されました。

日本の刑務所や少年院のデータが紹介されます。再犯率が高いとのこと。刑務所や少年院の刑罰の内容がすこし紹介されています。表面的な反省や、作文でかく固い決意にはほとんど意味がないそうです。

大切なのは、受刑者が抑圧していた自分の気持ちをみとめるまでよりそうこと。面接等で受刑者の罪をおかした原点をさぐっていくと、たいていは幼少期の体験にたどりつくそうです。

いくつかのケースが紹介されます。原因の考察や、受刑者のこころがほぐされていく様子がこまかくレポートされています。覚せい剤でつかまった酒井法子さんに対する考察もあります。

そして最後の章では、「幼少期の子育てで知っておきたいこと」というタイトルで、子育ての要点が紹介されています。これは、子育て中の方にはぜひ読んでいただきたい部分です。

「いい子」には2種類あるそうです。

  • 自分の気持ちを受け止めてもらって安定している、いい子(外面も内面もいい)
  • 自分を抑圧せざるをえない、「いい子」(外面だけがよい)

後者の「いい子」は、抑圧やストレスに耐えきれなくなったときに爆発し、事件や問題を起こすとのこと。ひょっとすると、いじめっ子はこのパターンかもしれません。

私個人の感想としては、この本は、娘が生まれてまもないころ読んだ児童精神科医 平井信義先生の著書にあった「いわゆるいい子の問題」を、詳しくひもといた内容だと思いました。そして、敬愛するもうひとりの児童精神科医 佐々木正美先生があまたの著書でおっしゃっていることを、すこしだけ別の角度から紹介していると思います。

ストレスを生み出す20の価値観がこの本で紹介されているので、いくつか抜粋します。

  • 「しっかりしなければ」という気持ちが強い。
  • (親や周りの人に)迷惑をかけてはいけないと思う気持ちが強い。
  • 「我慢することが大切である」と思っている。
  • 自分の素直な気持ち(「うれしい」とか「悲しい」とか「つらい」とか)をなかなか出さないほうである。
  • 「弱いことは情けない」とか「弱いことはいけない」とか思っている。
  • 完璧さをもとめてしまうところがある。

これらの価値観にしばられてしまうと、親も子も苦しくなると思います。

「チャイルド・マルトリートメント」という「大人の子どもに対する不適切な取り扱い」という意味の言葉を、私は連想しました。これについては、拙ブログ過去記事でいくつか取り上げていますので、よかったらご覧ください。