ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

     昼寝覚め

2005-07-03 22:22:23 | 
          い草の青い海

          ゆらめく意識の縁を

          撫でているふうりんの風

          会いたい人に会えて

          賑わうさっきまでの世界

          ゆるやかに

          ふわふわ語る

          なつかしい人たち

          でもどうしたのかしら

          うれしくて泣いたのに

          声がしない

          花が揺れ

          音曲が流れているのに

          音がしない

          たしかに

          手を握り合ったのに

          ぬくもりがしない

          目覚めながら

          ぼんやり

          釣り忍を仰いでいて

          ここがどこかわからない


盆の道

2005-07-03 22:04:35 | 


          よいしょと立ち上がる

          すうっと背中がかるくなって

          爺ちゃ

          婆ちゃがおぶさってくる

          よみがえる

          あのふわふわ

          妻の背には父

          ぼくの背中にはだあれ

          ゆうぐれの草の道

          細くすずしい風が

          うなじを優しく

          くすぐるものだから

          ぼくは黙って

          なんどもなんども

          頷いてやる

          向うから

          お迎えのおさななじみ

          ちょうちんの灯に

          頬を染め

          そっと会釈して

          すれちがう




おかしな話三題

2005-07-03 15:52:52 | 
                一
          「おかしな話だ」
          犬を引いていた男が言う
          「おかしな話だ」
          スコッチを飲んでいた男が言う
          風が吹いて
          砂塵がとんで
          おかしな話は
          ほんとうにおかしな話となって
          世界を駆け巡る

                二
          音を出したのはおれだ
          右のてんひらが主張する
          冗談じゃない!
          音を出したのはおれの方だ
          左のてのひらが抗議する
   
          お賽銭がころころ笑う

                三
          人間は神を知ったときから
          殺し合いが始まった
          自分がいちばん神に近いと
          思い込んで



      いのちの意味

2005-07-03 15:14:20 | 

          始祖の代から百万年

          じっと見つめてきた

          みずのみなもと

          ブナの精の沁み込んだ

          清らかで強いみず

          ザザムシを殖やし

          鳥と魚と人を育み

          地上をおおういのちのドラマ

          ここが始まりであることも

          流れの先のにぎわいのことも

          なにもしらない

          生まれついたそのときから

          始祖の姿そのままで

          ここにいる

          なにもしない

          なにも思わない

          若葉をこぼれおちる

          ひかりの陰で

          あるいは

          ぬるでの朱色に染められて

          ずっと

          みずを見つめている

          そのこと

          それがサンショウウオの

           いのちの意味