ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

     十三夜

2005-07-04 09:13:13 | 
           しもの方から

           地べたを打つ音が

           ちかづいてくる
   
           つられて犬が吼える

           暗くさびしい町

           婆ちゃん家からの帰り道

           闇よりも月の色がこわかった

           棺の中の顔のように

           蒼い月

           ひゅううと

           首筋をヨタカがかすめ

           口のとがった蒼い顔が

           鎮守の森から

           抜け出してくるころ

           持ってけと

           わたされた提灯だが

           闇がゆらめいて

           よけい気味悪い

           石ころに足をとられ

           なにも見ないようにして

           やっと逃げかえると

           流しで母が

           鯉をさばいていた

           くらい軒先

           ぼおじぼを打つ

           子供らの後ろ

           口のとがった蒼い顔が

           覗いている


 


       天使

2005-07-04 08:47:44 | 



           満開の

           さくらの下

           寝かされて

           赤ん坊が

           わらっている

           ちいさな手

           天に向け

           のんのさま

           と

           おしゃべり


ドント・ルック・パック

2005-07-04 00:21:37 | 
          壊れたおもちゃ箱
 
          舞台の隅にすてられ

          あれやこれや

          はみ出している「時間の滓」

          怒りと悲しみ

          栄光と零落

          文明のあやつり人形

          ちいさくちいさく縮んでいく

          フロックコート

          跳ねながら

          回りながら

          昨日が光速で消える

            ドント・ルック・パック

          昨日の自分を掴むことはできない

          ふりかえるな!

          そこに見るのは「時間の滓」

          卓とイスと

          一枚の皿があればいい

          喝采に舞い上がった日

          ブーイングに泣いた日

            ドント・ルック・パック

          昨日という

          銀河のかなた


  *マリ・クロード・ピエトロガ
    フランス モダンバレリーナ