山林に捨てられたゴミの中から白骨体が発見された。
( キャスター付の旅行ケースに押込められて )
その日は年に一度の自治会をあげての清掃日
黒いケースは不法投棄されたマットやソファーの陰にあったという。
白骨体が誰かは知らないが
直売所に行くのに時々、その山道を通ることがある。
気づかなかっただけで、ぼくの視界には入っていたかも知れない。
昼なお暗くさびしい山道である。
3年前にも遺体が放棄されていた処で
犯人は未だ判らない。
かつて犯罪は都市部に集中していたのが
このごろは地方の穏やかな山間地にも広がってきて
麗しの田園地帯などと安心してはいられない。
尊い人間の生命がゴミと一緒に捨てられて
供養もされないままに朽ち果てていく。
在りし日のその女性も、めくるめく恋をしたであろうし、
友人とのお喋りや楽しい旅行もしたであろう。
明日への夢や希望がたくさん胸にあっただろう、
まさか、
自分の終わりが狭い旅行ケースの中で腐っていくなどとは
思いもよらぬことであったろう---------
まさか! まさか!
眼を覆うような、耳を疑うような事件があとを絶たない。
ほととぎす啼く何処かで今も人ごろし やす