死期をさとった猫はある日、
突然屋敷から姿を消してしまう。
永い間世話になった飼い主へ
自分の骸をさらして悲しませたくないという
猫たちの最初にして最後の恩返し。
なんと けなげな・・・・・。
しかし遠くには行っていない。
大好きな飼い主の声のとどく辺り
誰にも知られないよう
独りでじっと死を迎えている。
あの大きなアフリカ象も
死期をさとると
群れを出て「象の墓場」へ旅立つという。
家を建て替えた時
茶の間の床下に猫の白骨体を見つけた
という話はよく聞く。
やさしい人たちの団欒を聞きながらひっそりと
息を引きとっていくのだ。
人間の社会でもこの頃
孤独死という無惨な死が増えているが
猫にとっても人間にとっても
死とはそもそも
孤独なのだ。
葵咲く廃屋の軒に逞しく