春にさきがけて芳香を漂わせながら咲く梅は、古来より文人墨客に好まれてきました。万葉集では萩に次いで多く119首も詠まれており、雪といっしょに詠まれた歌が多くあります。
水戸藩9代藩主徳川斉昭公も藩校弘道館と一対の教育施設として偕楽園を創設し、一説では1万本といわれる梅の木を植えました。
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公の七言絶句「弘道館中梅花に題す」の一節に「雪裏占春天下魁(雪裏春を占む天下の魁=雪の残る中で春を独り占めして天下のさきがけのようだ)」と詠まれています。
立春までまだ18日、コロナに負けずに天下に魁けて開き始めた偕楽園公園の早咲き梅です。
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冬至の頃に咲くから「冬至梅」、新暦では12月21日頃、旧暦なら11月25日頃ですが、命名の頃は多分旧暦だったでしょうか。偕楽園では12月半ばころに数輪の開花を見られる年が多いです。
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「八重冬至」です。八重咲の梅は一般的に結実しないものが多い気がします。
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「八重寒紅」は早咲きで一番多く見られる品種で、図鑑では不結実とはっきり出ています。
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「一重寒紅」、梅はやはり一重の方が好きという人が結構います。雌蕊が退化しているのが写真でよく分かります。
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「虎の尾」は水戸の六名木、名前の由来は蕊の曲がり具合が虎の尾に似ているとかいろんな説があります。
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「水心鏡」は江戸時代から続く古い品種で、咲き始めが黄白色で、咲き進むと白くなる野梅系の名花です。
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早咲きの梅は、結実品種でも受粉作業を手伝う昆虫の活動がまだ活発でないうちに咲くので、あまり実を結びません。幕末の水戸藩の志士たちが、先駆け過ぎて結実せずに散ってしまい、明治新政府での要職に就いたものはほとんどいなかったことに似ている気がしてなりません。