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偕楽園公園の樹です、白い実が垂れ下がって、どう見てもエゴノキなのに…、バナナのような実がびっしり生っていました。
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初めて見たのでびっくり、あまりにもしっかりした果実状でしかも数が多かったので、まさか「虫コブ」とは思いませんでした。
「虫コブ」については、たまたま拙ブログ「虫コブ…樹木の葉などの変形2021.6.5」で紹介いたしました。
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エゴノキは、エゴノキ科の落葉小高木で、5月頃に白い花が鈴なりになって下向きに咲く様子は可憐で美しく、公園緑地などでも植えられています。
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果実を口にすると「えぐい(えごい)」のが命名説で、この若い果実を昔は石鹸として洗濯などに用いたといわれています。仙人の少年時代には「せっけんボンボ」と呼び、川岸のエゴノキの実を泡立て遊んだ記憶が残っています。
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調べてみると、このバナナ状の「虫コブ」は、猫の足に似ているので「エゴノネコアシ」と呼ばれますが、そこに住む「エゴノネコアシアブラムシ」の生態は、何度も読み返すほど複雑怪奇なものでした。
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エゴノキに産み付けられて越冬した受精卵は、春に孵化しますが全部メスで、エゴノキの腋芽を刺激しバナナ状の虫コブが出来上がります。その中でメスは交尾なしでも体内の卵が孵化し、メスのクローンがいっぱいでき、虫コブの中で大きくなります。
7~8月に虫コブの先端が開き翅のあるメスの成虫が飛び出してイネ科のアシボソやチヂミザサに移り、メスだけで翅のないメスの幼虫を次々と生み葉の裏にコロニーをつくります。10月頃に翅のあるメスが生まれてエゴノキに戻り、ここでオスとメスの有性虫を産み、そのペアが受精し翌春に孵化するというサイクルが繰り返されます。
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バナナの中身を見ると白い粉のようなものが見えますが、分泌されたロウ物質だそうです。黒や茶色の成虫も見えます。
季節によって寄生植物を変えるので、「アシボソ」や「チヂミザサ」が近くに生えていないとこの「虫コブ」はできないというので、後日また出かけて探したらありました。イネ科のアシボソ(脚細)とチヂミザサ(縮み笹)、近くの藪の中に、それも群生していました。
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一般にアブラムシ類は、単為生殖と有性生殖を切り替え、羽根を必要に応じて生やして冬には枯れる寄生植物から移動したり、環境条件に合わせて変幻自在に対応するその凄まじい繁殖力で、自らを天敵から防御できない弱さを補っているのだそうです。
バナナ状の虫コブが、いろいろ教えてくれました。