顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

梅雨の花

2019年06月12日 | 季節の花

梅雨といえばムラサキツユクサ(紫露草)、名前の通り雨がよく似合います。
花弁は3枚、6本の雄しべは先端に黄色い葯がついていて、まわりに毛があります。葯のない一本が雌しべの花柱と柱頭です。

数年前に突然変異発見と意気込んだ白いムラサキツユクサは、園芸品種であまり珍しくないと後で知りました。ムラサキなのに白なんて変ですが…。

アジサイ(紫陽花)は、ヤマアジサイの方が小柄でいろんな色があって好みですが、買った時の名札がいつの間にか消えて、名前無しになってしまう我が庭です。

あとで調べたら、幻のあじさいといわれた「七段花」のようです。ヤマアジサイの変種で六甲山特産種、シーボルトの「日本植物誌」には採録されていたのがいつの間にか姿を消し、1959年六甲山系で再び発見されたという歴史を持ちます。

このアジサイは西洋アジサイと山アジサイを交配して選抜育成したアジサイで、「アジアンビューティHITOMI」とまだ名札が残っています。

ペチュニアとその改良種サフィニアはいろんな品種や色が開発されていますが、これはサントリーの作った「ももいろハート」、ピンクのハート形が特徴です。

キョウガノコ(京鹿子)は、京都の鹿の子絞りという鹿の斑点模様のような絞リ染めから名前が付きました。シモツケソウ(下野草)とコシジシモツケソウ(越路下野草)の交雑でできたといわれています。

さてその大元のシモツケ(下野)は山野に自生する落葉灌木、下野国(栃木県)で発見されたので名付けられました。この花によく似ているため名前がついたバラ科の多年草シモツケソウが、キョウガノコの親のひとりになります。

この時期地面に落ちてその開花を知るのがナツツバキ(夏椿)、別名沙羅の花です。椿の仲間で花ごとぽとりと落ちますが、こちらは落葉樹で葉も全然違います。

チドリソウ(千鳥草)は別名ヒエンソウ(飛燕草)、鳥が飛んでいる姿からの命名で、似ているデルフィニュームと同じキンポウゲ科の豪華な花です。こぼれタネから毎年どんどん花を咲かせます。

梅雨時となると思い出すウグイスカグラ(鶯神楽)は少年時代のおやつ、水気の多い薄甘さはなぜか鼻腔を刺激します。

グミ(茱萸)もよく食べました。これはタワラグミ(俵茱萸)と思っていましたが、グミの品種確定は難しいことをブログ仲間の雑草さんから教わりました。そもそもタワラグミなる名称自体がナワシログミやトウグミの別名と出ていました。味は少年時代の記憶に残るあの味ですが…。

ロウバイ(蝋梅)の実を見ると、梅ではないというのがはっきりわかります。水戸藩の藩校弘道館の弾痕残る正庁畳廊下の東側で撮りました。

幼い頃に食べたツバナ(茅花)、正式にはチガヤ(茅萱)です。すでに穂が大きくなっていますが、まだ苞に包まれた若い花穂を食べました。サトウキビの近縁種ともいわれます。
この写真を撮った海水浴で賑わう大洗サンビーチの一角にはいま人影もありません。

いくたびも風がとほりて茱萸のいろ  細川加賀
茱萸は黄にて女めくなり吾がちぶさ  三橋鷹女

偕楽園と弘道館の梅の実落とし

2019年06月08日 | 水戸の観光

偕楽園には約3000本、弘道館には約800本の梅の木があり春一番に満開の花を咲かせますが、さてその実はどうするの?とよく聞かれます。(アイスランドポピーの梅林の真ん中辺で梅落としの作業が行われていました。)

例年の梅落としが偕楽園と弘道館の梅林で6月6日・7日の2日間行われました。通常の梅林はある程度熟したものを収穫しますが、来年の開花を重要視するため樹勢が弱らないうちの青い梅を落とします。

長い棒で木を揺すって下のシートに落とします。偕楽園、弘道館併せて20トンも採れた年もあったそうですが、ここ数年は不作が続き、昨年は4トンしか採れず、選別後の1.5トンを1キロ詰めにした1500袋を一般の方にお一人1袋限り200円で販売しました。
もちろん偕楽園の梅というプレミアがつくので、人気が高く毎年すぐに完売してしまいます。

ことしも梅の開花の時期が例年に比べて早く、まだ虫たちが活動しないうちに受粉時期が来てしまったため、収穫量はあまり期待できませんでしたが、6日、7日の梅落としの結果がホームページで発表されました。偕楽園が3,612Kg、弘道館が860Kg、併せて4,472Kgの梅が選別すると1kg入リで1200袋用意され、お一人1袋限定200円で6月8日9時から偕楽園公園センターで販売されます。

偕楽園の梅は100種類以上あり、一番多いのが実生野梅(種子から成長し固有の品種名のない梅)、次が実梅の代表「白加賀」が約430本ですが、約40%が花を鑑賞する花梅で、実がほとんど生らない品種もあります。

梅は自家不結実種のため実をいっぱい生らせるには、違った種類の受粉樹を植えますが、その代表品種である「小梅」には鈴なりの実が生っています。

「花香実(はなかみ)」という梅は、後水尾天皇(1596~1680)が花も香も良く,実も良いとこの名をつけたと伝えられる品種、名前の通りの良果が結実しています。

4センチもある大きな花で知られる「滄溟(そうめい)の月」、花と同じように大きな実が生っています。

水戸市では梅の花ばかりでなく実の生産地としても名を高めようと、いまジョイント仕立てという栽培を奨励しています。これは主枝を隣の木と接いで何本もの木を直線状の集合木として栽培する方法で、5年で成木並みの収穫と施肥、管理、作業の効率化が図れるとされます。(写真は水戸市のホームページより)

「あんばさま」の総本宮…大杉神社

2019年06月07日 | 歴史散歩
茨城県の海沿いなどではよく耳にした「今日はあんばさまだぁ」というのは、船乗りが船にあんば様を祀って船主に休みを暗に要求したことだと聞いたことがありました。

その「あんばさま」と呼ばれている大杉神社が涸沼湖畔の秋の月に鎮座しています。

碑文によると天保9年3月15日河内郡阿波村(今の稲敷市)大杉神社本宮から分祀した、当時涸沼湖畔には天然痘が流行し死者が続出、この惨状に村内協議してこの神を祀り天然痘退散を祈ることに決した、元来この神は我が国、唯一無二の船玉の神であり又疫病退散の霊験顕著な神であることから分祀になった、と記されています。(船玉とは航海、特に漁船の守護神です)

近隣にある大洗磯前神社にも大杉神社の末社が祀られており、傍らには古くなった錨などが奉納されていました。

調べてみると、大杉神社は関東地方から東北地方にかけての太平洋岸の漁村で信仰される疫病よけや海上・水上安全の神で、茨城県稲敷市阿波(あば)の大杉大明神に由来すると出ています。
そこで関東や東北地方に分布する約670社もあるとされる大杉神社の総本宮を稲敷市に訪ねてみました。

神護景雲元年(767)、日光山を開いたといわれる勝道上人が旅の途中、この地に疫病が流行り多くの人々が苦しんでいるのを見て、あんば様を祀る巨杉に願ったところ、三輪山から3つの神々がやってきて人々を病苦から救いました。以来、巨杉のあんば様と三神を祀るようになり、これがあんば様総本宮大杉神社のはじまりといわれます。

二ノ鳥居と神門、茨城の日光東照宮といわれる極彩色の建物群はここからはじまります。

悪魔ばらえのあんばさま」といわれて厄除け、八方除け、星除けの祈祷で有名な神社ですが、現在ではいろんな夢叶えの神社としても知られています。

主祭神は倭大物主櫛甕玉命(やまとおおものぬしくしみかたまのみこと)、大己貴命(おおなむちのおおかみ)、少彦名命(すくなひこなのおおかみ)の三神です。



豪華絢爛で華やかな権現造りの建物は,全国の社寺建築を専門にしている千葉製作所の施工で、この会社は大子町の長福寺、ひたちなか市の酒列磯前神社などの本堂や神殿も手がけています。

麒麟門は2010年再建のまだ新しい楼門には檜や楠材を使った200体以上の彩色豊かな彫刻が施されていますが、江戸の鬼門に建てられおり、通行する門としては使用していないようです。



江戸時代には度重なる火災があり、神木の太郎杉は消失、現在は樹高40m、目通り幹囲5.3mの次郎杉とひと回り小さい三郎杉が祀られています。

かって大杉神社の別当寺だった安穏寺の本堂、延暦15年(796)、僧快賢が別当寺龍華山慈尊院安穏寺を開祖したと伝わる古い歴史のお寺です。
文治年間(1185~1190)には源義経の家来、常陸坊海尊が滞在したという伝説、また天海大僧正が江戸城、東叡山寛永寺の鬼門にあたる大杉神社を鬼門守護社と定め住職を務めた話などが伝わっています。(なお天海大僧正は明智光秀であったという説までもありますが…。)

大野潮騒はまなす公園

2019年06月02日 | 日記

ハマナス(浜茄子)は北国の花、この公園から北方6Kmの鹿嶋市大小志崎地内が自生南限地帯で大正11年(1922)天然記念物に指定されました。同時期に何故か高萩市肥前山も指定されていますが、これは貴重性のアピールよりも保護するための地域指定であったからと常陽藝文誌2018年7月号に載っています。

さてこの公園は中世の伝説が残る文太長者の屋敷跡であったと伝わります。製塩で長者になった文太は美しい二人の娘が帝と中将に見初められ、やがて京に上り名を文正と改め大納言にまでなった…と室町時代の「文正草子」という御伽草子に出ているそうです。確かに館跡とも見えるような海を見下ろす地形です。

広い公園の真ん中付近で案内図では霜水寺西堂跡とある辺りに古い墓群が残っていました。墓碑を見ると元禄、亨保など近世前半のものでしたが詳細はわかりません。

ハマナスはすでに終わりに近づいており命名由来の梨のような実がなっています。浜梨(ハマナシ)が訛ったのが名の由来とする牧野富太郎説が有力ですが、茄子(ナス)説もあります。



ハマナスは園芸品種では八重や黄色もあるようですが、野生種では濃いピンクと白色だけ、大きさは野生のバラの中では最大です。

展望塔にはプラネタリウムや郷土資料館があり、最上階の海抜77mからは360度の景観が一望できます。

カシマスタジアムと臨海工業地帯、鹿島港です。

筑波山が見えます。天気が良ければ富士山、日光連山も見えるそうです。

北側方面、ハマナス自生南限地の大小志崎はこの手前あたりです。

ハマナスに混じってドクダミの花、匂いが強く蔓延るので嫌われていますが、清楚な花です。薬効も多く乾燥させたものは十薬といわれ、日本薬局方にも収録されているそうです。

ナワシログミ(苗代茱萸)が鈴なりです。つまむと渋さの中にあるなつかしい甘さ…少年時代の味を思い出しました。

ブログ仲間の雑草さんからナワシログミでなくナツグミかトウグミではないかとのご指摘をいただきました。現地に付いていた名前札を鵜呑みにしていましたが、ウェブ図鑑で見ると確かに葉、実の形も少し違っていて、ナツグミの特徴がいちばん近いと感じました。公園などではそれほど厳密な品種名にはこだわらず、総称的な名前で表示しているのかもしれませんが…。


なお公園の南側にある鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の駅、「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅(ちょうじゃがはましおさいはまなすこうえんまええき)」は、ひらがな表記では日本一長い駅名ですが、あまりにも長いため地元では所在地名の角折(つのおれ)駅とよんでいるそうです。