『あのころ、いま、これから…』を読んで、がぜん鮫島さんの本づくりに関心を覚えた私は『忘れないで季節のしきたり日本の心』と『子育て、よかったこと、残したいもの』の2冊を夢中で読みました。『毎日が、いきいき、すこやか』というのも出ているようですが手に入りませんでした。
とにかく絵が暖かいのです。当然、ほとんどのカットに人物が描かれているのですが、いきいきと笑顔いっぱいの明るい表情ばかりです。そして、かつては市井のどこにでもあった光景が軽妙なタッチの文章とともに読者を惹きつけるのです。
うまくいえませんが、何度も耳にしていながら毎回、新鮮で懐かしいラテンナンバーを聴いているときに似た気持ちになりました。そこで、鮫島さんの執筆動機を探りたくなりました。
それはすぐわかりました。病床にあられたご主人に絵手紙ならぬスケッチを見せて、それから会話がはずんだ。友人にカラーコピーした絵を渡したら、お孫さんとの話のきっかけづくりができた。こうしたことから「これなら本にしても」と思われたかどうか。
ご主人の退職後に水墨画を先生について勉強されたとありますが、どうしてどうして天賦の才が色濃く出ています。書名の一語、一語に句読点を効かせたコピ-ライター的センス、B5横サイズという判型も新鮮でいい。ただ、『忘れないで…』だけは句読点が忘れられたようですが私が編集者だったらつけたのになあ。
最後に鮫島さん、調べたところによりますと、かの渋沢栄一さんのお孫さんで、岩倉具視さんとも縁続き、母上は岡山の池田家のご出身、それにしては下々の事情に通じておられ、子どもの遊び一つを例にとっても実にいろいろご存知で驚くばかりです。今年、90歳、お元気だろうかと心配したら、この6月に国際仏教学大学院大学の特別講演会「川慶喜と渋沢栄一」の予告を文京区の情報誌で発見しました。
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