活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

印刷の歴史は活字の変遷

2012-05-22 12:29:23 | 活版印刷のふるさと紀行

 活字の話が続いて恐縮ですが印刷図書館クラブの定例会で東海大学名誉教授高橋恭介さん(写真)からうかがった「活字の遷り変わり」の話を受け売りで紹介しましょう。

 高橋さんは印刷の歴史は文字印刷の流れをとらえることだとおっしゃいます。つまり、印刷の歴史の主人公は「活字」、英文表記でいうならMovable Typeであり、とくに漢字活字のルーツと文字組版について話されました。

 漢字活字のルーツとして高橋さんは中国宋代の陶活字を発明した畢昇や元の時代に彫刻木活字を開発した王禎に注目されていますが、私が興味ぶかかったのは、それに関連して、「活字」とか「印刷」ということばの起源についての話でした。

 11世紀後半に沈括という人が陶活字について書いた『夢渓筆談』に「活板」とか「印刷」という文字が出ているそうですし、13世紀前半の銅鋳造時代の書物には「鋳字」とか「印」という文字が出てくるそうです。しかし、「印刷」も「活字」という語は登場していないといいます。1314年に王禎が書いた本のタイトル『造活字印書法』から、高橋さんはひょっとして「活字」はこの辺がルーツかと考えておられるようですが、「印刷」ということばはいつ、誰がいいだしたのでしょうか。

 脱線、お許しください。話を戻して、陶活字や木活字の次に現れたのがグーテンベルクの鉛活字で、この鉛活字による文字組版の技術に代わる新技術はその後450年現れなかったという高橋さんのお話は、光学母型としての写真植字機、そして次のデジタル母型としてのワープロの登場に及び、やがては文字・画像の統合されたデジタルコンテンツの電子本まで活字の変遷から知る印刷の歴史の流れで明解で、ぜひ、こんど神田川大曲塾でレクチュアーしていただきたいものです。

 

 

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