活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

国の後押しがほしい「活字文化」

2012-05-21 17:44:41 | 活版印刷のふるさと紀行

 きのうBSTBSで偶然、「活字印刷の岐路」という番組を見ました。これも偶然でしたが、私が前々回、このブログの『ルリユールは製本工芸の粋』で触れました名古屋活版地金精錬所の鈴木宗夫さんが登場する番組でした。

 あのとき羽田野麻吏さんがおっしゃっていた通り、日本の活版印刷の衰退が招いている「活字の消滅」が番組テーマで、日本全国でただ一人鉛活字の鋳造で頑張っている鈴木さんが、もはや仕事として採算がとれないと廃業を考えているのは大変なことだ書籍装丁のの箔押しをしている方も出て将来を案じておられました。

 私は思うのですが、活版活字本が電子書籍に代わっていくのは時代の流れです。しかし、このまま活版印刷の技術者がとだえ、日本文字の活字鋳造が消滅していくのにまかせていいものでしょうか。現状のままですと、ひらがなやかたかな、漢字の活字を母型製作から手がけること技術は無くなって再生はできなくなります。

 私はかつて1590年代に日本に金属活字をつかって印刷をする技術を持ち込んだドラードたちの国字鋳造の苦闘を調べました。また、本木昌造たち明治の先人たちの活字製造の苦労も学びました。本の装丁と活字の問題も重要ですが、活字組版による情報伝達の印刷文化をここで我が国が切り捨ててしまってよいものでしょうか。

 国が電子書籍の発展を後押しするなら、活版印刷にかかわる技術保存をもそれ以上に後押しすべきです。また、印刷業界全体でできれば、アーカイブではなく活版印刷の全工程を「動態保存」すべきです。それが文化ではないでしょうか。

 

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