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本好き人の365日

重松清『きみの町で』、白石一文『快挙』

2013-07-13 19:00:00 | 日本人作家

涼を求めて入った本屋さんで読みたかった本に出会えました。

重松清 『きみの町で』 (朝日出版社)

 

著者 : 重松清
朝日出版社
発売日 : 2013-05-31

 

これはもともと『こども哲学』という絵本シリーズの付録として書かれた文章を、単行本にまとめたものです。

フランスの哲学の授業で(子どもの頃からこんな授業があるんですね!)交わされた会話を絵本にした、考える絵本『こども哲学』シリーズ。

今回、東日本大震災についての「きみの町で」を追加して出版されました。

電車でお年寄りに席をゆずる、その時の小学生の心の葛藤。

いつもイジメられている同級生。

人間って、自分って、心って何だろう?

 

哲学ってちょっと難しいイメージがありますが、あつかっているのは誰でも一度は考えたことのあることばかり。

その中でも「きみの町で」は、震災に見舞われた町を舞台に、子どもたちに焦点をあてて、震災前と震災後の子どもたちを描いています。

心をギュッとつかまれました。

涙がこみ上げてきたけれど、それは悲しみの涙なのか、嬉しさの涙なのか、感動の涙なのか、私にはわかりませんでした。世界はわからないことばかりです。

もともとが絵本のシリーズなので(この本は文章が主です)、児童書のコーナーに置いてあるかも知れません。

ちょっと手に取って欲しい本です。

 

もう一冊は、白石一文さんの小説『快挙』(新潮社)

 

著者 : 白石一文
新潮社
発売日 : 2013-04-26

 

白石さんは官能的な描写もあって、こちらは大人向け。

売れない小説家の男と、小料理屋を営む年上の女。

現在50代の作者が、自分の両親の出会いをモデルにしたということで(白石一文さんの父親は小説家の白石一郎です)、高度成長、バブル崩壊、阪神淡路大震災と、時代は移り変わっていきます。

そんな時代を生きる一組の男女の物語。

まあ、現代の人からみたら勝手な男と尽くす女という構図なんですが、夫婦って他人にはわからない歴史があるんですよね。同じ時間を生きてきて、ケンカしたり、愛し合ったり、親戚や親兄弟のことでやきもきしたり、仕事やお金や子供のことで悩んだり苦しんだり。

男がグダグダ悩んでいる間にも、さっさと働き口をみつけてきて生活費を捻出する女。

「たくましい~」なんて思っちゃいけないんしょうね(苦笑)

だってどうやって食べていくのよ? と怒られそう。

白石一文さんの作品は、これまでちょっと読みにくくて敬遠していたのですが、これは読みやすかった。

個人的には「快挙」という題名と、ラストのオチの付け方(主に男の仕事に対して)には疑問を抱きましたが、これは主人公と同じ小説家である作者の思いなんでしょうね。

酸いも甘いも噛み分けてきた男女ならでは物語。

本当に共感できるまでには、もう少し人生経験が必要かな?(笑)

ともかく、面白い本でした。