山本弘さんの怪獣小説(笑)
『MM9―invasion―』(東京創元社)
を読みました。
本格怪獣小説として一部で話題になった前作『MM9』の続編です。
「MM」とは「モンスター・マグニチュード」の略。
その怪獣の体積を水換算した場合の大きさを表し、0~9と数字が大きくなるほど体積も大きくなる。現在確認されている最大の怪獣が「MM9」
そしてこの怪獣災害と日夜戦い続けるのが、気象庁特異生物対策課、略して「気特対」の面々です。
ま、戦うといっても台風に対する気象庁みたいなもので、ミサイルとか戦車は自衛隊におまかせ。
ひたすら情報の収集と予測進路、予測被害を計算し、避難勧告などを出すのがお仕事の公務員なので、だいたいいつも怪獣を追いかけたり追いかけられたりしています♪
まじめに怪獣小説って(笑)
ゾンビや吸血鬼の登場する小説ならありますが、体長40mの怪獣の出てくる小説はなかなかありません。
本格怪獣小説ということで、怪獣の存在を科学的(?)にちゃんと説明しています。
この小説の中の世界では「ビッグバン宇宙」と「神話宇宙」が共存していて、怪獣は「神話宇宙」の存在だから、「ビッグバン宇宙」の物理法則で説明できなくても問題ない!
うわぁ、何それ?
観察者効果というものがあります。
この世界のありようを決めているのは、観察者である人間(あるいはその他の知的生命体)の物の見方であるというもの。
簡単に言うと、世界は信じた人間の多い方にその姿を変えていくのです。
誰もが神話を信じていた時代には怪獣も存在することができた。その世界では神話が現実であるのと同様に怪獣もまた現実の存在。
ところが科学が発達し、誰もが神話や伝説を信じなくなれば、物理法則が優先され、神話的存在だった怪獣たちは過去にさかのぼってそもそも存在しなかったことになってしまう。
この「多重人間原理」という架空の学説が作者が広げた大風呂敷!
観察者によって世界が決定するという設定は、量子論や「シュレーディンガーの猫」を知っていると理解しやすいかも。
今回宇宙怪獣が登場するにあたり、「天動説宇宙(神話宇宙)」と「地動説宇宙(ビックバン宇宙)」のせめぎあいというのも出て来ました。
小説の舞台はまさに「神話宇宙」から「ビッグバン宇宙」に変わる過渡期の世界。
だから当然「神話宇宙」の存在である怪獣に「ビッグバン宇宙」の物理法則は通用しません。
通常の物理法則では体重を支えられないはずの怪獣もだから存在できる。
怪獣を存在させるためにここまで考える?
こじつけもここまでくると見事です!
あー、可笑しい☆
怪獣物の王道も外しません。
さっそく「東京スカイツリー」が怪獣に襲われてるし(笑)
日本各地の観光名所を襲うのは怪獣物のお約束ですからね。
今回は特に作者が意識したという、ライトノベル的な展開になっていて、ラブコメもふんだんに散りばめられています。
あと、恒点観測員の正義の宇宙人とか、活動限界が3分だとか、「ウルトラマン」世代にはおなじみの設定も。
娯楽作品としてとても面白い♪
まあ、内輪ネタ的な笑いであることは否めませんが、特撮や怪獣もの好きな人にはたまらない小説だと思います。
あー、楽しかった☆
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