レディース・ディで、19時の回、1回のみの上映だったからか、ほぼ満員。びっくり。こんなクセのある作品なのに・・・。
ウェス・アンダーソンの監督作品は「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」しか観てないけど、やっぱりその雰囲気だった。
しかも、インド系の男性の、少年~青年期の不思議な話を白人の作家が聞いて作品にするという、あれっ? この雰囲気は「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」じゃん。
「ライフ・オブ・パイ」のCG多用と同じように、色彩にこだわった、まあこっちはわざとアニメみたいにしたストップモーション・アニメーションだけど。
Yahoo!映画の解説だと「式高い高級ホテルを取り仕切るコンシェルジュと、彼を慕うベルボーイが繰り広げる冒険を描いた群像ミステリー。常連客をめぐる殺人事件と遺産争いに巻き込まれた二人が、ホテルの威信のためにヨーロッパ中を駆け巡り事件解明に奔走する。」とあるが、違うなあ。
レイフ・ファインズ演じる、グランド・ブタペスト・ホテルのコンシェルジェの性格設定がいい!過去はいっさい不明、「この歳になると、フィレ肉よりもさっぱりした肉の方がいいんだ」と客のお年を召した気品あふれるご婦人達の、ベッドのコンシェルジェも。詩を愛し、ホテルの仕事に誇りを持ち、ホテルの仲間を愛し、そのためには危険を顧みず。
事件解明に奔走するんじゃなくて、犯人にされそうになって、ヨーロッパ中じゃなくて、東欧の一部で逃げ回る。ウィレム・デフォーが、ぴったりの残酷な殺し屋で、ポップな色彩の映画に、大人のグロさもプラス。他にも有名人がいっぱい出てて、それを観てる(見つける)のだけでも楽しい。
独特の世界だけど、「で、この先どうなるの?」という、作家と同じ気持ちになって、画面に見入る。釘付けという程ではないけどね。
そして、個人の幸せも、威信も、全てぶち壊す「戦争(ここでは第二次世界大戦)」の残忍さ。一生懸命冤罪から逃げ回った善良な人々の、めでたしめでたし! という結末も、たった二年しか持たなかった。
観終わった後、映画の色彩とは正反対の、暗い気持ちにさせられて、「集団的自衛権」の行き先が気になってしまった。