◎森友学園問題と集団思考の罠
今月二八日の東京新聞夕刊のコラム欄「紙つぶて」は、海野素央〈ウンノ・モトオ〉明治大学教授の担当で、タイトルは、「集団思考の罠」であった。その最初のパラグラフを紹介してみる。
米エール大学の社会心理学者ジャニス氏は「凝集性の高い集団でみられ、集団内の意見の一致を重視するあまり、とりうる可能性のある全ての行動を評価しなくなる思考様式」を集団思考と呼びました。集団思考の罠【わな】にはまると、「無敵幻想を抱く」「決定の正当化を過度に行う」「決定についての倫理観を検討しない」などの病的現象が現れるというのです。同氏は、ベ卜ナム戦争やチャレンジャー号爆発事故の原因を分析しました。その結果、物の見方、考え方、価値観が類似したチームメンバーのみで意思決定がなされ、集団思考に陥っていたことが明らかになったのです。
このあと、海野教授は、話題をアメリカのトランプ大統領とその側近に振っている。しかし、このコラムの冒頭を読んで、まず思い浮かべたのは、日中戦争拡大を阻止できず、さらに日米戦争を避ける道を採れなかった昭和前期の政権とそれを支えた世論のことであった。さらには、「不正」と知りながら、森友学園に便宜をはかった財務省近畿財務局、「不正」と知りながら、決裁文書の「改竄」に関与した財務省官僚のことも思い浮かんだ。
私見によれば、森友学園問題の発端は、籠池泰典〈カゴイケ・ヤスノリ〉氏ら経営者の「無敵幻想」だったのではないか。彼らの「無敵幻想」におびえた財務省近畿財務局が、公務員としての「倫理観」を捨て、譲歩に譲歩を重ねたというのが、今回の問題の発端だったのではないか。
なお、この問題が大きな政治問題になった理由は、これまた私見によれば、安倍晋三首相の「無敵幻想」だったように思う。安部首相は、自分あるいは妻が、この問題に関係しているなら、「首相も議員も辞める」と表明した(二〇一七年二月一七日)。こう表明することで、首相は、こんな小さな問題は一蹴できると考えたのであろう。ところが、この首相の一言が、小心な財務省官僚をおびえさせ、決裁文書の「改竄」へと走らせたのである。財務省官僚の中に、「それはまずい」と言うものはいなかったのか。残念ながら、いなかったのであろう。「集団思考の罠」である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます