雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

いただきます。

2013-03-14 00:00:52 | 感動
既に色々なところに転載されているような本ですが......

「いのちをいただく」

西日本新聞社さんが出している絵本です。
九州、熊本県に住む坂本義喜さんという方が学校などから請われ、
時折子供達に話し聴かせていた自らの体験談をシンプルにまとめ上げた本です。
僕のような人間には読むと涙が溢れて止まらなくなってしまう......(T.T)ような本。
巻末にはこの物語が世に出るまでのエピソードや
坂本さんと実の娘さんとの心温まるサイドストーリーなども収められています。
沢山の人に知ってもらいたい......ということも書かれていました。
先日も友人のMさんがfacebookで紹介していたりなんかしていて、
「もし」まだ知らない人がいましたら以下、チコッとチェックしてみて下さい。
以前記したコノ記事あたりからの続き......
という感じでもありますが。。(^.^)どぞどぞ。よしなに。



===========================
坂本さんは、食肉加工センターに勤めています。
牛を殺して、お肉にする仕事です。
坂本さんはこの仕事がずっといやでした。

牛を殺す人がいなければ、牛の肉はだれも食べられません。
だから、大切な仕事だということは分かっています。

でも、殺される牛と目が合うたびに仕事がいやになるのです。
「いつかやめよう、いつかやめよう」
と思いながら仕事をしていました。



坂本さんの子どもは小学3年生です。
しのぶ君という男の子です。



ある日、小学校から授業参観のお知らせがありました。
これまでは、しのぶ君のお母さんが行っていたのですが、
その日は用事があってどうしても行けませんでした。
そこで、坂本さんが授業参観に行くことになりました。

いよいよ、参観日がやってきました。
「しのぶは、ちゃんと手を挙げて発表できるやろうか?」
坂本さんは、期待と少しの心配を抱きながら小学校の門をくぐりました。

授業参観は、社会科の「いろんな仕事」という授業でした。
先生が子どもたち一人一人に
「お父さん、お母さんの仕事を知っていますか?」
「どんな仕事ですか?」
と尋ねていました。

しのぶ君の番になりました。

坂本さんはしのぶ君に、
自分の仕事についてあまり話したことがありませんでした。
何と答えるのだろうと不安に思っていると、
しのぶ君は、小さい声で言いました。

「肉屋です。普通の肉屋です」

坂本さんは「そうかぁ」とつぶやきました。



坂本さんが家で新聞を読んでいると、
しのぶ君が帰ってきました。

「お父さんが仕事ばせんと、みんなが肉ば食べれんとやね」

何で急にそんなことを言い出すのだろうと
坂本さんが不思議に思って聞き返すと、
しのぶ君は学校の帰り際、
担任の先生に呼び止められて、こう言われたというのです。

「坂本、何でお父さんの仕事ば普通の肉屋て言うたとや?」

「ばってん、カッコわるかもん。
一回、見たことがあるばってん、
血のいっぱいついてからカッコわるかもん」

「坂本、おまえのお父さんが仕事ばせんと、
先生も、坂本も、校長先生も、会社の社長さんも肉ば食べれんとぞ。
すごか仕事ぞ」

しのぶ君はそこまで一気にしゃべり、最後に

「お父さんの仕事はすごかとやね!」

と言いました。

その言葉を聞いて、坂本さんはもう少し、
仕事を続けようかなと思いました。



ある日、
一日の仕事を終えた坂本さんが事務所で休んでいると、
一台のトラックが食肉加工センターの門をくぐってきました。

荷台には、明日、殺される予定の牛が積まれていました。

坂本さんが「明日の牛ばいねぇ~」と思って見ていると、
助手席から十歳くらいの女の子が飛び降りてきました。

そして、そのままトラックの荷台に上がっていきました。

坂本さんは「危なかねぇ」と思って見ていましたが、
しばらくたっても降りてこないので、
心配になってトラックに近づいてみました。

すると、
女の子が牛に話しかけている声が聞こえてきました。



みいちゃん、ごめんねぇ。
みいちゃん、ごめんねぇ。



「みいちゃんが肉にならんとお正月が来んて、
じいちゃんの言わすけん。
みいちゃんば売らんとみんなが暮らせんけん。
ごめんねぇ。
みいちゃん、ごめんねぇ」



そう言いながら、
一生懸命に牛のお腹をさすっていました。

坂本さんは「見なきゃよかった」と思いました。

トラックの運転席から女の子のおじいちゃんが降りてきて、
坂本さんに頭を下げました。

「坂本さん、
みいちゃんは、この子と一緒に育ちました。
だけん、ずっと、うちに置いとくつもりでした。
ばってん、みいちゃんば売らんと、
この子にお年玉も、クリスマスプレゼントも買ってやれんとです。
明日は、どうぞ、よろしくお願いします」



坂本さんはまた、
「この仕事はやめよう。もうできん」と思いました。
そして思いついたのが、明日の仕事を休むことでした。



坂本さんは、家に帰り、
みいちゃんと女の子のことをしのぶ君に話しました。

「お父さんは、みいちゃんを殺すことはできんけん、
明日は仕事を休もうと思っとる…」

そう言うと、
しのぶ君は「ふ~ん」と言ってしばらく黙った後、
テレビに目を移しました。

その夜、
いつものように坂本さんは、しのぶ君と一緒にお風呂に入りました。
しのぶ君は坂本さんの背中を流しながら言いました。

「お父さん、
やっぱりお父さんがしてやった方がよかよ。
心の無か人がしたら、牛が苦しむけん。
お父さんがしてやんなっせ」

坂本さんは黙って聞いていましたが、
それでも決心は変わりませんでした。



朝、
坂本さんは、しのぶ君が小学校に出かけるのを待っていました。

「行ってくるけん!」

元気な声と扉を開ける音がしました。

その直後、玄関がまた開いて

「お父さん、今日は行かなんよ!」「わかった?」

と、しのぶ君が叫んでいます。

坂本さんは思わず、
「おう、わかった」と答えてしまいました。

その声を聞くとしのぶ君は
「行ってきまーす!」と走って学校に向かいました。

「あ~あ、子どもと約束したけん、行かなねぇ」と、お母さん。

坂本さんは、渋い顔をしながら、仕事へと出かけました。



会社に着いても気が重くてしかたがありませんでした。

少し早く着いたので、みいちゃんをそっと見に行きました。

牛舎に入ると、みいちゃんは、
他の牛がするように角を下げて、
坂本さんを威嚇するようなポーズをとりました。

坂本さんは迷いましたが、
そっと手を出すと、
最初は威嚇していたみいちゃんも、
しだいに坂本さんの手をくんくんと嗅ぐようになりました。

坂本さんが、

「みいちゃん、ごめんよう。
みいちゃんが肉にならんと、みんなが困るけん。
ごめんよう」

と言うと、
みいちゃんは、坂本さんに首をこすり付けてきました。

それから、坂本さんは、
女の子がしていたようにお腹をさすりながら、

「みいちゃん、じっとしとけよ。
動いたら急所をはずすけん、
そしたら余計苦しかけん、じっとしとけよ。じっとしとけよ」

と言い聞かせました。

牛を殺し解体する、その時が来ました。

坂本さんが、

「じっとしとけよ、みいちゃんじっとしとけよ」

と言うと、みいちゃんは、ちょっとも動きませんでした。



その時、
みいちゃんの大きな目から涙がこぼれ落ちてきました。



坂本さんは、牛が泣くのを初めて見ました。



そして、坂本さんが、ピストルのような道具を頭に当てると、
みいちゃんは崩れるように倒れ、
少しも動くことはありませんでした。

普通は、牛が何かを察して頭を振るので、
急所から少しずれることがよくあり、
倒れた後に大暴れするそうです。



後日、
おじいちゃんが食肉加工センターにやって来て、
坂本さんにしみじみとこう言いました。

「坂本さんありがとうございました。
昨日、あの肉は少しもらって帰って、みんなで食べました。
孫は泣いて食べませんでしたが、

『みいちゃんのおかげでみんなが暮らせるとぞ。
食べてやれ。
みいちゃんにありがとうと言うて食べてやらな、
みいちゃんがかわいそかろ?
食べてやんなっせ』

って言うたら、孫は泣きながら、

『みいちゃんいただきます。
おいしかぁ、おいしかぁ。』

て言うて食べました。
ありがとうございました」



坂本さんは、
もう少しこの仕事を続けようと思いました。
===========================


にほんブログ村 その他日記ブログ 日々のできごとへ

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ポプラさんと桜さん | トップ | ありがとう以上 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (hiro mix)
2013-03-14 01:14:30
僕たちが何気なくおくっている生活の裏には沢山の人の人生があることに改めて気付きました。
素敵な本ですね。同時に少しさみしくも悲しくも人のココロを感じました。ご紹介ありがとうございました。

ご飯を食べる時の『いただきます』は、あなたの命をいただきます。という意味を思い出します。改めて食事の際には、その気持ちを忘れないようにしたいです。
返信する
hiro mixさんへ。 (amenouzmet)
2013-03-14 01:30:25
ですねぇー。とてーも同感です。
コノ本は素晴らしい本ですが、個人的には「原作」として坂本さんの名前をクレジットしていないところに少しばかりの「謎?」と、出版周りの人達の「愛の欠損」「エゴ?」的印象を持ってしまいます、、が、良ければ是非手にしてみて下さい。きっと坂本さんとその家族のファンになると思います!(^^)
返信する
めぐみです! (めぐみ)
2013-03-16 01:30:06
めぐみです!このあいだコメントしためぐみです!覚えてますか?覚えていてくれた嬉しいですw(^▽^)/せっかくなのでメールできませんか?私ブログとかやってないのでお話がしたいです、アドは megumi7704あっとyahoo.co.jpです、待ってますね!(*・・*)ポッ
返信する
めぐみさんへ (amenouzmet)
2013-03-16 02:26:02
覚えてますよ(^^)メールであれば左カラム(左側のメニュー)の中の「問い合わせ/メッセージ」という項目にアドレスがありますのでソチラに一度送ってみて下さい。よろしく御願いします。いつもありがとうございます。
返信する
Unknown (ゆり)
2022-03-14 20:28:19
Iさんへ
号泣(T_T)。即購入(絵本)。言葉の大切さもしみじみと。
年度末…そんな季節も相まって、今週は涙腺崩壊ウィークになりそうです。
心の物語は心に響く!!といいなぁ。
ステキな本と巡り合わせていただき感謝!です。
連日コメント、すみません。
返信する
ゆりさんへ。 (amenouzmet)
2022-03-14 20:42:32
大切な過去記事です。
ありがとうございます。
返信する

コメントを投稿