夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』序論 六[「私」の無規定性と規定性]

2019年05月16日 | ヘーゲル『哲学入門』
 
§6[「私」の無規定性と規定性]

Der eigentliche Wille oder das /höhere Begehrungsvermögen/ ist: 1) reine /Unbestimmtheit/ des Ich, die als solche keine Beschrän­kung noch einen durch die Natur unmittelbar vorhandenen ­halt hat(※1 ) und an und für sich sich gegen jede Bestimmtheit gleichgültig ist; 2) kann ich zugleich zu einer /Bestimmtheit/ übergehen und die eine oder andere zur meinigen machen, die ich als dann Wirk­lichkeit versetze.(※2 )


第6節

本来の意志あるいは/より高い欲求能力/とは、1)「私」の純粋な/無規定性/のことであり、無規定性とは、そのような何らの制限をもたないものとして、なお自然を通して直接にそこにあるような内容を持つこともなく、それ自体として本来的にどのような規定性にも関わりのないものである。   2)同時に、私は一つの/規定性/へと移りゆき、そして、ある規定かまたは他の規定を選択して自分のものとすることができ、そうして私はそれを現実に実現することができる。

※ 1
「私」、自我とは本来的に、純粋な白紙のように何の制限ももたず、また自然のような物質としての内容をもつものではない。カントの自我論、自然を超えた先天的な超越的自我論がふまえられている。「私」は何の制限をもたず、かつまた、一つの規定を選択して自分ものとすることができる点において自由なものである。「私」、自我の無制約性と自己規定性が、自由の根拠である。それに対し、前節の「衝動」は自然によって規定された「低い欲求能力」であって不自由なものである。

※2
意志の純粋な無規定性、あるいは「私」の純粋な自己の内部における「反省」についてのより詳細な考察は、「法の哲学」の第4節以下において行われている。
 
 
 

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