炎天下にサルスベリの花がピンクの色も鮮やかに咲き誇っている。この夏になって庭の片隅に咲いて一度は茶色に朽ち果てた「おいらん草」が、くっきりした白色をして再び咲きだした。おいらん草が昨年もこのように二度咲きしたかどうか覚えていない。連日の晴天で舗装されていない玉川上水の緑道は土ぼこりが舞い上がる。休日ともなれば果てしなく続く玉川上水の緑陰のコースを足早に歩き続ける健康志向の一団を多く見かける。この辺りの上水の南側(右岸)にはクヌギが多くその樹液に日中でも金属光沢のカナブンや小型の蝶のルリタテハが集まる。その樹液酒場には強い香りが漂う。
オープンギャラリーの処暑の観察会は道路予定地にある「どんぐり広場」の最後の姿を見届けることだった。小平西高校の近くで上水を横断する道路の橋部分の工事が始まり、そのためにどんぐり広場は消滅するという。鈴木さんは市役所勤務中に小平市グリーン道路推進協議会の活動に従事した。玉川上水から小金井公園へ、さらに狭山・境緑道(水道道路)から野火止用水へと市内をぐるりと巡る21㎞を小平グリーン道路と呼ぶことにした。どんぐり広場とは道路予定地を期間限定で借り受けた有志が丹精込めて育てた野草園のことだ。この広場に来れば秋の七草などを楽しむことができた。それがいよいよこの9月に伐採整地されるという。桜、桐、ネムノキの木陰にオミナエシと萩が咲いていた。
つい最近までこの辺りは農地が広がり、鈴木さんのモズの観察や、絵を描く場所であった。私も小平に住んで38年になるから、この辺りは大ケヤキがあり、畑を取り囲むように茶の木が植えられていたのを知っている。広々として見通しが良く日の出月の入りの観察に適していることは鈴木さんに教えてもらった。今では宅地造成されて電柱だけが林立し、新しい道路が開通しようとしている。ところがこの道路以上に多くの市民を憂鬱にさせている道路計画が他にもある。都が計画する府中所沢・鎌倉街道線は町田市から東村山市に至る延長27㎞だ。そのうち小平市部分は平面構造で事業期間は平成25年度から平成31年度の予定だ。小平市部分に限ると現在の幹線道路である府中街道とわずか100m離れて並行に走る道路だけになんとも奇妙な計画に見える。
ギャラリーの秋の展示計画は処暑の「残したい雑木林」と白露の「玉川上水の残したい景観」を鈴木さんが担当し、秋分の「玉川上水どう守る?」は若い母親を中心とした都道小平線を考える会のグループが例外的に担当するものと思われる。今回の処暑の展示の中にある「残したい」と題した鈴木さん渾身の訴えをここに記録しておきたい。「みんな 知っているかい 小平の宝 中央公園のみどり豊かな雑木林が 道路計画で姿を消すんだよ この道路は青梅街道から五日市街道まで新設するんだ 中央公園の雑木林 国史跡の玉川上水の景観 工夫して残せないのかな 次世代のために 残したい」 最近体重が増え始めた私は、夕方になると中央公園に出かける。消えるかもしれない雑木林とメタセコイヤの並木の間を喘ぎ喘ぎ走り始めている。