玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*知覧と鹿屋

2012年08月07日 | 捨て猫の独り言

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 勝手口のすぐ近くにある高さ2mほどのツゲの木の中にヒヨドリが巣を作った。ツゲの木の頂上の細い枝に囲まれた空間を利用している。二度ほど道路側のサルスベリの木からツゲの木にもぐり込むのを目撃した。気付くのが遅くて観察不十分のため巣で子育てをしたかどうか判然としない。そのうち何の気配もしなくなったので目より高い位置にある巣を取り出してみた。巣の中はまったくの空っぽだったのでひとまずほっとする。あのせまい空間でこれだけみごとな紡錘形の巣をこしらえる能力に驚いた。いずれまたこの場所に新しい巣を造ってほしいものだ。

 一年ぶりに見る故郷の桜島は噴煙の中にあり、ぼんやりと一部の稜線が認められるだけだった。東よりの風で鹿児島市内に火山灰が降り注ぐ。定時の天気予報には桜島山頂の風向きの予報が欠かせない。ここのところ鹿児島市内への降灰はますます多くなっているような気がする。今回の帰省では薩摩半島の知覧と離島の喜界島を訪問する計画だった。車の運転を放棄しているので機動力に欠けるのだが、鹿児島で暮らす弟が今回も貴重な時間を割いて運転を買って出てくれた。知覧特攻平和会館には2年前に逝った親父に深い関係のある15人の遺影が展示されている。会館はおびただしい数の燈籠に囲まれているがその中に生前に寄贈して親父の名が小さく刻印された燈籠を見つけ出した。

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 茶畑が続く中を薩摩半島の南端にある枕崎港まで足をのばし、港の海産物売り場の2階の食堂でカツオ料理をいただく。鹿児島市役所の近くに名山掘りというレトロな居酒屋が並ぶ一角がある。去年のように今日はあそこで呑みたいものだと提案すると、残念ながら土日は店を開けないのだという。あきらめていると弟はどこかへ連絡を取っている。特別に我々だけのために今宵は開けてもらう交渉が成立したという。枕崎の戻りガツオの冷凍パックを買い求める。出直して再集合した店のカウンターには季節の料理に加えてカツオも並んだ。この夜は静かな名山掘り界隈で一軒だけから灯りがもれていた。入る時には気付かなかったが、帰ろうとして店の外に出ると何の木だろうか強い香りを漂わせていた。

 台風接近のため翌日のフェリーでの喜界島行きは断念し、旅館の予約はキャンセルする。そこで弟は前日に続き猛暑の中を大隅半島の鹿屋(かのや)を案内してくれた。この日も残念なことに垂水フェリーから見る桜島は噴煙の中だった。弟は途中の漁港でエビとイカを調達しまず鹿屋の馴染みの居酒屋にそれを預けた。最初の訪問先は海上自衛隊鹿屋航空基地資料館だ。旧海軍航空と戦後の海上自衛隊の資料が展示され、その歴史の一部として海軍特別攻撃隊のコーナーがある。つぎは鹿屋の南部に位置する「柳谷集落(通称やねだん)」だ。地域再生に取り組み自主財源の余剰金で122全戸に1万円のボーナスを還元したというマスコミ報道で知られている。その立役者の公民館長である豊重哲郎氏と懇談する。最後はこれまで私が全く知らなかった「小伊勢(神宮)」といわれる「吾平(あいら)山稜」だった。予想以上に清々しい聖域だった。弟は県内を3年毎に転勤する職にあり、その先々で居酒屋を育てたようだ。この日は鹿屋の居酒屋で夜が更けて、最終便に近いフェリーに乗船した。

コメント
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