旅の初日の朝に目覚めると、青空がひろがり暖かだ。他の宿泊客はすでに出かけていて宿は静まり返っている。宿からゲート前までの7㎞の道のりを自転車で向う。大浦湾を左に見て、急勾配の二見バイパスのトンネルを登りきると辺野古地区だ。このあたりは4年前に同僚4人でレンタカーで訪れているので懐かしさが募る。途中8時少し前に警視庁の大型車両3台に追い越された。ゲート前に自転車で来ているのは私だけだった。
座り込み行動に参加することは少しの緊張感と高揚感をともなう。後で知り得ることが多いのだが後先を無視して記述してゆく。座り込みの場所は国道329号沿いにある第一と第二ゲートの中間に設けられている工事用ゲート前である。そのゲート前の小さな広場には両脇に県警の大型車両、中央にワンボックスカーが配置されている。座り込みのスペースを狭めるためである。機動隊員が現れて、人々の排除が終わるとワンボックスカーだけが移動して工事車両が出入りする。排除された人々は歩道に横ずけされた大型車両と機動隊員の人垣で仕切られた檻に一時的に確保される。
それらの警察車両を囲むようにして杉板とブロックを組み合わせた長イス、狭い隙間には携帯用折りたたみイスが並べられている。おもいおもいにそれらに座る。沖縄タイムズ、琉球新報はゲート前に張り付いて取材し、翌日の社会面に囲み記事を掲載している。リーダーは沖縄の平和運動の象徴的存在である1952年生まれの山城博治(ひろじ)さんだ。この日は住民の基地との戦いを追ったドキュメンタリー映画「沖縄 うりずんの雨」の監督ジャン・ユーカーマンーさんがカメラマンと訪れ、スピーチや記念撮影などして人々と交歓した。
午前中は比較的平穏に過ぎて、リーダーの山城さんの指名で県会議員や元裁判官などからの発言があった。出入りしている工事車両は米軍の隊舎新設工事関連のもので埋め立ての工事は今のところストップしている。集会現場の近くに食堂はない。1時間歩くと大浦湾の奥に「わんさか大浦パーク」というメニューも多彩な食堂がある。ゲート前と宿の間に位置してかなり宿の方に近い。ここがこのあと私の昼食場所となる。集会に参加した人で混雑する食堂の中で昨夜の老紳士の姿を見つけて私は声をかけた。彼が「高江にも行かれますか」と聞くが、車のない私にはその予定はなかった。昼食後に私はゲート前を離脱して素晴らしい眺めと評判の「ジュゴンの見える丘」を訪ねた。名護の東海岸を上り坂は自転車を降りて押し、下り坂はジェットコースターに乗るようして汗だくになりながらたどり着いた。その岬は東海岸沿いに大浦、瀬嵩、汀間、三原地区を北上した先の嘉陽地区にあった。