「渋谷・鹿児島おはら祭」は鹿児島の「おはら祭」の渋谷での再現だ。なぜ渋谷なのか不明だが、ともかく当時の渋谷区長の協力で平成10年に始まった。渋谷109前を交通止めにして、道玄坂・文化村通りを60以上の踊り蓮がパレードする。毎年5月中旬に行われているが、今年の第19回は梅雨入り後の6月12日に行われた。5月末の伊勢志摩サミットの影響である。
当日に街頭で配布されていた60ページほどのパンフレットにはつぎのような紹介がある。渋谷と鹿児島の縁は古く、鎌倉時代に渋谷氏が所領を得て、一族をあげて薩摩に移住した。そのうちの一つ東郷家から七百年後に出た連合艦隊司令長官の東郷元帥の東郷神社は渋谷にある。また忠犬ハチ公の銅像の作者は、あの鹿児島市城山の西郷隆盛像を建立した安藤照である。
アトランタから来日中の二人の祖母は昨年まで「おはら祭」に参加して踊っていたが、そろそろ引退を考えていた。しかし祭が6月にずれ込んだことで5月末に来日した孫たちと一緒に参加することが可能になった。二人にとっていい思い出になるに違いなかった。二人とも参加に乗り気であることを確かめた後に、引退を取り止めて急遽参加を願い出る。そして事前の全体の練習にも出かけたが、二人は楽しかったと言いながら帰宅した。
祭りの当日は会場のアナウンスで水分補給が連呼されるほどの好天に恵まれた。朝は7時前に出かけて、パレードはお昼ごろから3時間も続く。二人が参加したのは「関東二甲会踊り連」である。連の女性陣と男性陣に挟まれた中ほどで二人だけ並んで踊る。二人の前には女性陣の最後尾の祖母がいる。二人がよどみなく最後まで踊り通したことにギャラリーの私は感心しきりだった。二人の参加は遠く離れた鹿児島のMBCテレビでトピックとして当日に放映されたという。