どの日本の新聞も16日夕刊と翌日の朝刊はイチローの「日米通算4257安打」を大きく報じていた。17日の朝日新聞の朝刊に偉業達成の記事に挟まれて「イチローが教えてくれたこと」という全面広告があった。稀に見る秀逸な広告だと思った。若きイチローがナイトゲームにおいて緑の芝生の上をライトの守備位置へと向かう後姿の写真が使われていた。その写真の縦半分に白抜きの比較的小さな文字が2行づつ縦に8連並んである。
<ヒットの数に注目するという、新しい野球の見方> <個性は教えられるものではなく 自分でつくるものだという事実> <打つ、走る、守る、投げる、 すべてがハイレベルの選手を見る喜び> <パワーとパワーがぶつかり合うベースボールに スピードで勝負するという挑戦>
<徹底的に自己管理し、 万全すぎる準備をして臨むという意識> <道具にこだわり、 それを大事に手入れして使うことの大切さ> <子供の頃から大好きなことを 大人になっても追求できる幸福> <絶対に破られるはずのない大記録でも 破ることができるという奇跡>
まるでコクのある詩を読んでいるかのような心地がした。詩の最後に「祝 日米通算4257安打 オリックスグループ」とある。気になって調べるとこの広告は朝日だけで他の有力紙にはない。イチローのトレーニングマシンを作っているのは、動作科学の研究者である小山裕史(59歳)氏が経営する鳥取市にある会社だ。イチローは小山氏の考案したスパイクを15年から使用している。一塁に到達するまでの平均タイムは昨季ベスト5に入る3秒98で、マリナーズに入団した01年よりも速いという。