なぜ今まで放置していたのだろう。2015年に出版された加藤典洋の「戦後入門」(筑摩新書)を読んだ。慎重に頁をめくらないと、本がばらばらになるのではないか心配になるぐらい製本限度ぎりぎりの分厚い(635頁)本だ。戦後の歴史を克明に振り返り、憲法第九条について著者の改憲案が提示されている。2015年と言えば安保法制が成立した年である。加藤典洋は2019年に71歳で死去した。
現行の「日本国憲法」第九条①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。(写真はどちらもキンモクセイです)
加藤の改憲案①は現行通り。②以上の決意を明確にするため、以下のごとく宣言する。日本が保持する陸海空軍その他の戦力は、その一部を後項に定める別組織として分離し、残り全戦力はこれを国際連合待機軍として、国連の平和維持活動及び国連憲章第四七条による国連の直接指揮下における平和回復運動への参加以外には発動しない。また国連憲章第七章のめざす体制の完成後、国の交戦権はこれを認めない。③前項で分離した軍隊組織を、国土防衛隊に編成し直し、日本の国際的に認められている国境に悪意をもって侵入する者に対する防衛の用にあてる。ただし、この国土防衛隊は、国民の自衛権の発動であることから、治安出動を禁じられる。平時は高度な専門性を備えた災害救助隊として、広く国内外の災害救援にあたるものとする。④今後、われわれ日本国民は、どのような様態のものであっても、核兵器を作らず、持たず、持ち込ませず、使用しない。 以上が加藤が提示した案だった。