加藤典洋の憲法改正案は「米国との同盟から、国連との同盟」への転換を訴えるものだ。国連中心主義が米国と敵対関係に入ることなしに米国から独立し、互いに平等な友好関係に移行する唯一無二の方法という。9条が発案された当時は巨大な世界戦争の直後で、つかの間、理想主義が生きていて安全保障のイメージは国連との連携だった。
だが冷戦が始まったことで、米国は日本を手放せなくなり米国との連携に切り替えた。国連中心への転換は、9条を初期設定に戻す行為にすぎないと著者はいう。国連中心主義を安全保障の基本に据え、米軍基地の撤廃を目指す。フィリピンは米軍基地の撤去を実現している。いいお手本があるのだ。(小金井桜復活事業)
「なぜ日本は自分のかつて行った過ちについてアジアの隣国にしっかり謝罪できないのでしょうか。このことは、なぜ日本政府は原爆投下という誰が目から見ても非人道的な行為について、米国に対し抗議できず、謝罪要求を行えないで来たかという問いと一対です。
米国が抗議と謝罪要求に応えない場合でも日本はいわば、一方的に贈与を申し出て自らの報復的権利を放棄し、今後日本は未来永劫どの国に対しても徹底した非核の態度を貫くと宣言するのです。私案の④項の非核条項にはこうした意味も含まれます。謝罪要求と、それへの対応。こうした深いやりとりを交わしてようやく日本は東アジア諸国とも米国とも堅固な友好関係、信頼関係を作り上げることができるのだと思うのです」