NHKには放送用語班という部署がある。全国の放送現場からひっきりなしに言葉の相談の電話が寄せられる。製作者の意図を電話でしっかり聞いて、一緒に考えるにはメールでなく電話が一番いいという。どのようなことばを使えば多くの人に違和感なく内容を伝えることができるかを検討する。
それぞれ得意なジャンルをもつメンバーが分担して執筆し「NHKが悩む日本語」という本ができた。ことばは新しく生れたり、ほとんど使われなくなったり常に変化している。回答に悩むときはメンバーのすべての知恵をかき集めて回答する。4コマ漫画あり、クイズありで気楽な読み物になっている。その内容の一端を記す。
まずは私があいまいだった四字熟語のクイズ。多士済々(たしせいせい)、上意下達(じょういかたつ)、同行二人(どうぎょうににん)、老若男女(ろうにゃくなんにょ)。「悲喜こもごも」は一人の人間の心境について用いるのが伝統的語法だ。「合格した人、不合格だった人、悲喜こもごもの光景」は本来のいい方ではない。
「知れてよかった」はやや舌足らずの感があるがという相談。「知れる」は「名の知れた会社」「たかが知れている」「お里が知れる」のように「自発」を意味し、「可能」を意味するものではなかった。しかし、もともとの自発に加え、若い人たちの間で可能の意味でも使われだした。幅広い年代層への配慮から「知れて」を「知ることができて」と字幕表示することにした。