身勝手だが、いつまでも発行され続けることを願いつつ、昨年暮れに週刊金曜日の定期購読を止めた。中央図書館に行けばいつでも手に取って読むことができる。ひさしぶりにバックナンバーを借りてきて読んでみた。「在日韓国人政治犯」という5回連載に出会い、思わず引き込まれて読んだ。「北のスパイ」として有罪判決を受け服役した在日韓国人のことだ。
1970~80年代に韓国の治安・軍機関は祖国に留学した在日韓国人学生らを「北のスパイ」として捕らえ投獄した。その数は数百人にのぼるとみられる。軍事独裁政権に抵抗する民主化運動を押さえ込むために反国家行為としてスパイ罪を持ってくるしかなかった。国内材料が枯渇したため、日本を経由するスパイ、すなわち在日韓国人が狙われた。学生だけでなく実業家などもいて在日は最も捕らえやすい魚とされていた。
1971年の「徐兄弟事件」で兄の徐勝さんの大火傷の法廷写真報道が衝撃と波紋を広げ全国で救援運動が起きた。この写真は私も記憶しているが、当時はその背景を正確には理解していなかった。同じころ朝鮮の機関工作員が日本に侵入して「日本人拉致事件」が頻発する。中学1年生・横田めぐみさんの拉致は1977年11月15日に起きている。南と北のお互いが相手の領域で地下組織を作り工作員を派遣する南北分断の状況が存在した。
2000年代に入って再審裁判が相次ぎ大半が当局による拷問で虚偽の自白をさせられ「捏造」された事件であるとして無罪宣告が続いている。2019年G20大阪サミットで来日した文在寅大統領が在日韓国人の「元良心囚」らに公式謝罪している。日本と異なり朝鮮戦争以後、台湾と韓国はものすごい犠牲を払いながら、民衆が自由と民主主義を獲得するための闘争を行いそして獲得したことを忘れないようにしたい。