点と線という松本清張の著名作があります。
点⇒線⇒面と、つながることによって相が変わります。
線の話が面として受け取られると、食い違いが出てきます。
周囲が方形でないディスプレイが開発された話をしたら、そんなのはずっと前からあるという返事。
「四角でない」という言い方が「平らでない」と聞こえたらしいのです。
たしかに、四角な紙も、曲げて斜めから見れば四角には見えません。
周囲が曲線のフリーフォームディスプレイを、面を折り曲げできるフレキシブルディスプレイのことと思われたのでした。
「四角でない」⇒「曲がって見える」
抽象表現が具象想像に変わるときに、感覚のレイヤーを重ねそこなうと、こんな食い違いができます。
この食い違いがいったん出来てしまうと、話を合わせるまでにいろいろな言い換えが必要になります。
説明は簡単なほうがよいとよく言われますが、もっとも簡潔なつもりの「四角でない」は、言葉足らずであったようです。
枠のないディスプレイに、「枠が四角でなく曲線の」とは言いにくく、枠にとらわれたばかりに話の枠がずれてしまったのでした。