かってこの場所には、樹齢2000年以上の欅が祠と共に立っていた。
神木である。
八方に伸びたまま、残された根が、ゆうに一抱えは超えるところにもかっての欅の巨木さを物語る。
その跡に設えられた石塚。
一つ一つ積み上げては、じねんの森羅万象を司るなにものかに、祈りを持つ。
枯れている榊に時の陰影が漂うようだ。
土佐では、大風呂敷を広げ見果てぬ夢をのたまう傾(かぶき)者を、天喰郎(てんくろう)という。
かってのてんくろうが、神聖なる石塚に汚点を刻んでみる。
もう芽が出るはずも無い男が、せめてと禿頭を出してみる。
神木は想っているはずだろう。
また罰当たりが帰ってきた。と。