一本の細く見えない糸が、二つの枯葉を結びつける。
彷徨うように揺れる二枚の葉は、同心円を描きながらも決してその軌道を外れようとはしない。
浮揚力と拘束力と重力の均衡の上で、私の目に映る枯葉は地に落ちることを拒み続けている。
ある意図が、この糸にあったはずはなく、いくつかの偶然が産みだした束の間の景色でしかない。
蜘蛛はどこにいった。
糸は何故残った。
葉はいつ枯れた。
風化。という営みの中で、偶然にもそのランデブーを余儀なくされた時のいたずらである。
早める必要も遅らせる必要も無い。やがてはなくなるその途中。
たまたまここでめぐり見ただけの風化の途中。あるひとつの偶然。
あとは野となれ山となれ。
通り過ぎるおいて、これほどふさわしい言葉はないのだと私は言い聞かせた。