南無煩悩大菩薩

今日是好日也

壽の夢ここに

2013-04-24 | 壹弍の賛詩悟録句樂帳。

やまのあなたのむこうには 寿ぎが満ちている

千歳もの緑を湛える松の枝には鶴の純白が優雅に栄え

万歳もの揺ぎ無き巌石の傍では亀がゆったりと遊んでいる

・・・

男は急いで山のあなたを探しにいった。

山を幾つも越えたところに茅屋の茶屋が一軒、酒旗を春風が撫で揺らし、新緑の山々がなだらかに重なる一望に鶯一声、景色に溶け込んで老婆が一人小川で椀を洗っていた。

「やまのあなたはありますか?」

老婆は答えた。

「やまのあなたにいきなさる?ああ、あるある、あっちの方の山を越えたところじゃて。今まで何人も行きなさったが、だれも帰ってきませんけん、なんぼかええとこじゃろの」

男は老婆にあなたは行かないのですか、と聞くと

「あっちからみたらこっちがやまのあなたじゃけん。帰ってこれんなんだらこまるけの。あなたをおもえるこなたが一番ぞなもし」

そしてちょっと間をおいてつぶやくようにこう続けた。

「そう急いでいかんともここでゆっくりなされ。そのうちお迎えが来ますけんのぉ」
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