(illustration/Toshio Saeki)
吾輩は銭である
朝には粒々辛苦の汗の値として払われ、夕には瑞兆紅閨の夢を購うの代となり、米となり酒となり月給となり家賃となり、さらに転じて貯蓄箱に入り芝居の木戸銭となり税金となり利息となり元金となり浮世の一喜一憂皆関係せずというもの無し。
吾輩の前には人間も頭を下げ、吾輩がなければ英雄も羽根なき鳥のごとく、吾輩があれば愚物も龍に翼を添えたるがごとし。
吾輩の勢力また偉大なるかな。
ー切抜/仰天百画より
それ本来はもともと高尚なものであったにしても、どう転ぶかわからんものにしがみつこうとは、手足をもがれたないように、と、自ら手足を退化させることに似たり。