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貝原益軒先生は牡丹が大変好きであった。花の咲くのを楽しみに丹精込め育てたそれらは、開花時期になると庭一面咲き乱れたそうである。
ある日の先生留守中の事、書生二人が庭で相撲を取ろうということになった。最初は気を付けていたがつい夢中になってしまい、先生の牡丹をほとんど踏みにじってしまう。
先生が帰ってくると二人はどんなに怒られても仕方がないとあやまりにあやまった。が、先生は「あ、そうか」といったきりである。
もしや聞こえなかったのかと、もっと大きな声で牡丹を踏みにじってしまったともう一度おおいにあやまったが、やはり「あ、そうか」というばかり。
困惑した二人は、「先生どうぞ私たちを叱ってください」というと、先生はこう云ったそうだ。
「私が牡丹を育てるのは花を楽しむために育てるのじゃ。ここで私が腹を立てたら、腹を立てるために育てたことになる」。
心の養生訓である。