(cartoon/Shigeru Mizuki)
まだ吉原在りしの時分のこと、容姿は人並み以下なのにとても売れっ子の花魁がおったそうだ。
絢爛豪華容姿端麗のを押しのけての贔屓万来であったという。
皆が「なぜ?」と問えばその花魁はこういったという。
「皆は自分に惚れさせようとしりゃんす。人にはすき好みもありんす。そうではなくて、お客がお客を好きになるようにすればよござんす」
つまり、自分を売り込まずに、お客のいいところを心よりほめて気持ち良く自分に自信を持って自分を好きになるように過ごしてもらうということだ。
その昔、ナルシスと言う男は自分の顔を川面に見てそれに惚れこんで自分を糞づまりにしたという悲劇もあるが、
あるボス犬が不敵に暮らして御馳走を盗るがままにしていた。その日も仲間からぶんどった獲物を口にくわえて歩いていてふと橋の上から川面を観た。そこに美味そうなものを咥えている犬を観て吠えかかった。ポチャン。元も子もなくなったということである。
これらの噺にはいやに共通することがあるようだ。