そうだ、鳥取行こう!
と思い立ったのは11月のこと。
娘の引っ越し手伝いとこれからお世話になる勤め先へのご挨拶を兼ねて鳥取市を訪れたのは3月上旬。
勤務先の方が開口一番、
「残念、調度蟹終わったところなんですよ」
終わったって? 全て食べ尽くされた後ということ? と事情がよくわからず
「・・・・・・」と反応すると、なにやら解禁の時期を過ぎたとのこと。
地のものを限られた期間だけ食すという自然の理に従う生活とは縁遠いから、解禁に対して生活実感がわかない。冷凍でいいから食べたいのに・・・・・・と思うが、しかしそこは、地元の方は譲りませんよ。
「時期の蟹でないと美味しくない!」
を強調され、そういうもんなんだと納得。
その後
「解禁の時期に来て下さいね」
という地元の方の言葉はずーっと反芻され、醸成され、そして11月ふっと浮かんだ。
今、行こう、と。
スケジュールを調整しまず移動の確保。
今回の楽しみの一つなんだけど、それは夜行バスで鳥取に行ってみること。
夜浜松町を出発して朝起きたら、そこは鳥取ってすごくね!的なのりで夫との2名分即予約。帰路はANAマイレージで特典航空券予約。これで移動は完璧。
TX経由で浜松町に行き、まず夜行バス乗り場を確認しコロコロを近くのコインロッカーに預ける。身軽になり腹ごしらえにと街へ繰り出す。街はどこもクリスマスイルミネーションで華やかなのに加え、仕事帰りの人でわさわさしている。適当に店に入ると「予約されてますか?」 そうか巷は忘年会シーズンでしたか。グルグル回りようやく居酒屋2席ゲットできた。高速バスの時間まで居座るのは混んでいる店に悪いので、出発時刻まであと1時間を残して退店。そして時間つぶしにと世界貿易センタービル最上階の展望室へ。
「終了まであと30分ですがよろしいですか?」
受付のお姉さんに確認され、JAFカード見せて少し割り引いてもらい階段を数段上ると、なんとそこには東京の夜景が一望できるゾワッと来る回廊が続いていた。
ピカピカの東京の街がグルーッと眼下に広がる。終了間近ということもあってか、人気の少ない絨毯敷きの薄暗い回廊をゆったり歩くと、もうすっかり気分は20代。
「東京タワー、あれがスカイツリー。あっちの方が家か」
などとミニデート気分で夜景を楽しみ、さてようやく高速バス乗り場へ向かう。
すでに乗り場前には乗客が数人集まっていた。この人達みんな鳥取へ行くんだ。いや、帰る人たちなのかもしれない。ということはここにいる人は皆鳥取の人?
とそこに、なんとも「とっとりー」な男子3人組がほろ酔いで登場。
地味な3人組だけど酔っているからなのか見た目以上に声でかい。あー、あの人達車内で騒ぐかもしれない。席近くだったらちょっとやだな。
乗り場に登場した3人はすぐに場の空気を読んで声のトーンを落としたけど、「楽しかったー」と言い合う声だけははっきり聞こえる。
バスが到着すると先の3人組男子のうちの一人が「じゃあな」と手を挙げた。乗るのは2人で、1人は見送りということが判明。
そうか、そういうことか!
うーん、なんかこういうのいいね。
見送る青年は少し飲み過ぎた友人を気遣いつつ、郷里に帰る友に何かを託すというこの感じ。さっきまでのあの男子やだねが、いい子達だねに変わった瞬間。
バスに乗り込む時に青年2人組が「お先にどうぞ」とさりげなく手で合図したのから、好感度は更にアップ。さすが、鳥取男子。噂に聞いていたとおりじみーで口数少なく、控えめではないですか。これなら席近くてもいいや。
と、ここまでは良かった。
さて、これから長い、長ーい、バスの旅が始まるのでした。
浜松町を夜9時に出発して、鳥取駅到着は朝6:30。9時間半の旅。
寝てしまえばどうってことない。寝てしまえばね。
高速バスが初体験というわけではない。新宿発福井行きに乗ったことがある。その時の反省を活かし、2度目の今回は準備万端だった。
我が席に乗り込みバッグを足下に置いたり、コートやマフラー片付け、飲み物をホルダーに装着し、キンドル充電セット。そしてヘッドレストの位置を合わせようと下に引っ張ると、力入れ過ぎてマジックテープがベリッとはがれてしまった。付け直そうと後ろ向きにシートに膝立ちしたところで、バスは出発したのだった。
浜松町バスターミナルをグルーリと大きく回転するのに合わせて、頭も後ろ向きのままグルーリと回った。もうこの瞬間に、だめ。
きた、車酔い。
子どもの頃から車に酔いやすかった。でも自分が運転するようになってあまり酔わなくなったから自分が車酔いすることを忘れていた。久しぶりに味わうぐうっとくる感じ。今回の酔いはそれほど深くないから、しばらくじっとしていればなんとか吹き飛ばせそう。なのに、よせばいいのに、せっかく準備したからとネックピローを膨らませようと一気に息を吐き出してしまうという酸欠を導く行為により、バス酔いは深く、深く体に浸透していった。そこから先はもうバス酔いとの戦いのみ。気持ち悪いだけでなく、そのうちお腹まで痛くなってきた。皆が静かーに寝ている中、ひとりだけ気持ち悪い、苦しいと静かな車内で遠慮がちにゴソゴソ体の位置を変えるのだった。カーテンの隙間から車窓見ると、見えるのはトンネルの壁か、横を走るトラックの車体。だめだ、これじゃ外見るともっと酔う。
途中サービスエリアで2回トイレ休憩タイムが入った。みんなぐっすり寝ていると思っていたら、ほとんどの人がバス降りるから、「みんなも寝ていないんだ」と少ーしほっとし、朝までの時間を指折り数え、ようやく到着した鳥取駅バスターミナル。
「どこにいるの?」
娘からラインに着信があった。ぐるりと見回すと、3月まで乗っていた懐かしい我が車が、鳥取駅前にあった。到着時刻は連絡しておいたけど、どうせ寝坊しているだろうから直接アパートに乗り込むつもりでいたけど、駅まで車で迎えに来ていた。
その顔と車を見ると、さっきまでの不快感はふっとんだ。
まずはこの足で、朝湯行こう!
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ようやく鳥取駅到着しました。次回は蟹三昧編へ。
と思い立ったのは11月のこと。
娘の引っ越し手伝いとこれからお世話になる勤め先へのご挨拶を兼ねて鳥取市を訪れたのは3月上旬。
勤務先の方が開口一番、
「残念、調度蟹終わったところなんですよ」
終わったって? 全て食べ尽くされた後ということ? と事情がよくわからず
「・・・・・・」と反応すると、なにやら解禁の時期を過ぎたとのこと。
地のものを限られた期間だけ食すという自然の理に従う生活とは縁遠いから、解禁に対して生活実感がわかない。冷凍でいいから食べたいのに・・・・・・と思うが、しかしそこは、地元の方は譲りませんよ。
「時期の蟹でないと美味しくない!」
を強調され、そういうもんなんだと納得。
その後
「解禁の時期に来て下さいね」
という地元の方の言葉はずーっと反芻され、醸成され、そして11月ふっと浮かんだ。
今、行こう、と。
スケジュールを調整しまず移動の確保。
今回の楽しみの一つなんだけど、それは夜行バスで鳥取に行ってみること。
夜浜松町を出発して朝起きたら、そこは鳥取ってすごくね!的なのりで夫との2名分即予約。帰路はANAマイレージで特典航空券予約。これで移動は完璧。
TX経由で浜松町に行き、まず夜行バス乗り場を確認しコロコロを近くのコインロッカーに預ける。身軽になり腹ごしらえにと街へ繰り出す。街はどこもクリスマスイルミネーションで華やかなのに加え、仕事帰りの人でわさわさしている。適当に店に入ると「予約されてますか?」 そうか巷は忘年会シーズンでしたか。グルグル回りようやく居酒屋2席ゲットできた。高速バスの時間まで居座るのは混んでいる店に悪いので、出発時刻まであと1時間を残して退店。そして時間つぶしにと世界貿易センタービル最上階の展望室へ。
「終了まであと30分ですがよろしいですか?」
受付のお姉さんに確認され、JAFカード見せて少し割り引いてもらい階段を数段上ると、なんとそこには東京の夜景が一望できるゾワッと来る回廊が続いていた。
ピカピカの東京の街がグルーッと眼下に広がる。終了間近ということもあってか、人気の少ない絨毯敷きの薄暗い回廊をゆったり歩くと、もうすっかり気分は20代。
「東京タワー、あれがスカイツリー。あっちの方が家か」
などとミニデート気分で夜景を楽しみ、さてようやく高速バス乗り場へ向かう。
すでに乗り場前には乗客が数人集まっていた。この人達みんな鳥取へ行くんだ。いや、帰る人たちなのかもしれない。ということはここにいる人は皆鳥取の人?
とそこに、なんとも「とっとりー」な男子3人組がほろ酔いで登場。
地味な3人組だけど酔っているからなのか見た目以上に声でかい。あー、あの人達車内で騒ぐかもしれない。席近くだったらちょっとやだな。
乗り場に登場した3人はすぐに場の空気を読んで声のトーンを落としたけど、「楽しかったー」と言い合う声だけははっきり聞こえる。
バスが到着すると先の3人組男子のうちの一人が「じゃあな」と手を挙げた。乗るのは2人で、1人は見送りということが判明。
そうか、そういうことか!
うーん、なんかこういうのいいね。
見送る青年は少し飲み過ぎた友人を気遣いつつ、郷里に帰る友に何かを託すというこの感じ。さっきまでのあの男子やだねが、いい子達だねに変わった瞬間。
バスに乗り込む時に青年2人組が「お先にどうぞ」とさりげなく手で合図したのから、好感度は更にアップ。さすが、鳥取男子。噂に聞いていたとおりじみーで口数少なく、控えめではないですか。これなら席近くてもいいや。
と、ここまでは良かった。
さて、これから長い、長ーい、バスの旅が始まるのでした。
浜松町を夜9時に出発して、鳥取駅到着は朝6:30。9時間半の旅。
寝てしまえばどうってことない。寝てしまえばね。
高速バスが初体験というわけではない。新宿発福井行きに乗ったことがある。その時の反省を活かし、2度目の今回は準備万端だった。
我が席に乗り込みバッグを足下に置いたり、コートやマフラー片付け、飲み物をホルダーに装着し、キンドル充電セット。そしてヘッドレストの位置を合わせようと下に引っ張ると、力入れ過ぎてマジックテープがベリッとはがれてしまった。付け直そうと後ろ向きにシートに膝立ちしたところで、バスは出発したのだった。
浜松町バスターミナルをグルーリと大きく回転するのに合わせて、頭も後ろ向きのままグルーリと回った。もうこの瞬間に、だめ。
きた、車酔い。
子どもの頃から車に酔いやすかった。でも自分が運転するようになってあまり酔わなくなったから自分が車酔いすることを忘れていた。久しぶりに味わうぐうっとくる感じ。今回の酔いはそれほど深くないから、しばらくじっとしていればなんとか吹き飛ばせそう。なのに、よせばいいのに、せっかく準備したからとネックピローを膨らませようと一気に息を吐き出してしまうという酸欠を導く行為により、バス酔いは深く、深く体に浸透していった。そこから先はもうバス酔いとの戦いのみ。気持ち悪いだけでなく、そのうちお腹まで痛くなってきた。皆が静かーに寝ている中、ひとりだけ気持ち悪い、苦しいと静かな車内で遠慮がちにゴソゴソ体の位置を変えるのだった。カーテンの隙間から車窓見ると、見えるのはトンネルの壁か、横を走るトラックの車体。だめだ、これじゃ外見るともっと酔う。
途中サービスエリアで2回トイレ休憩タイムが入った。みんなぐっすり寝ていると思っていたら、ほとんどの人がバス降りるから、「みんなも寝ていないんだ」と少ーしほっとし、朝までの時間を指折り数え、ようやく到着した鳥取駅バスターミナル。
「どこにいるの?」
娘からラインに着信があった。ぐるりと見回すと、3月まで乗っていた懐かしい我が車が、鳥取駅前にあった。到着時刻は連絡しておいたけど、どうせ寝坊しているだろうから直接アパートに乗り込むつもりでいたけど、駅まで車で迎えに来ていた。
その顔と車を見ると、さっきまでの不快感はふっとんだ。
まずはこの足で、朝湯行こう!
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ようやく鳥取駅到着しました。次回は蟹三昧編へ。