気になるキーワードや製品のコレクション(IT編)

メルマガ、新聞、雑誌などに登場する(増田悦夫の)気になるキーワード、製品を取り上げ、ITの進展をフォローします。

"総合知"とは

2024-11-04 23:42:49 | 学術・サイエンス・概念など

専門家が持っている「専門知」やSNS上の意見を集約したような「ネット集合知」など様々な「知」が、単なる寄せ集めでなく有機的な形にまとめ上げられた「知」のことを指しているようです。別な言い方をすると、様々は要因の絡み合った複雑な問題や課題への対応策(即ち、とるべきアクション)の拠り所となる「知」のことのようです。ここで「知」は、知識、知性、知恵、知能といったものの総称と言えます。

総合知の普遍的な定義は現状存在しないと思われます。ですが、政府は、「第6期科学技術・イノベーション基本計画(※)」を踏まえた当該会議有識者懇談会による検討の中間とりまとめの内容を2024年3月に公開しています(注:下記参考文献2を参照)が、その中で「総合知」を以下のように表現しています:

「多様な『知』が集い、新たな価値を創出する『知の活力』を生むこと」

※ 関連ブログ("第6期科学技術・イノベーション基本計画(政府/文科省)"とは、2024.11.3、https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/b8e1569f3c84335c5742a330c391ca4e)を参照

総合知が求められる背景として、東日本大震災や新型コロナのような社会問題や課題への対応には、専門家が持つ「専門知」や「ネット集合知」だけの利用では限界があるとの見方があり、それらの問題や課題の解決のために関連する多様な「知」を持ち寄り、それらを融合させることにより最適な解を導きだすことが重要といった考え方があるようです。総合知は別名「現実対処知」などとも呼ばれたりするようです(注:下記参考文献1を参照)。

総合知の活用に向けた取り組みが今後活発化し、色々な事例が出てくることが期待されていますし、期待したいです。

<参考文献>

1.危機を乗り切る「知の形」とは?、読売クオータリー2022冬号、2022/1/31、https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/cksocialsports/20220127-OYT8T50041/

2.「総合知」の基本的考え方及び戦略的に推進する方策 中間とりまとめ、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局、2022.3.17、https://www8.cao.go.jp/cstp/sogochi/honbun_print.pdf


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"サイバーカスケード(Cyber cascade)"とは

2024-10-22 23:56:47 | 学術・サイエンス・概念など

例えば、以下の関連ブログを参照願います:

“エコーチェンバー”とは、2024.10.8、https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/919981b6f91a1289ec061307909e23ce

 


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"フィルターバブル(Filter bubble)"とは

2024-10-22 23:05:08 | 学術・サイエンス・概念など

例えば、以下の関連ブログを参照願います:

“エコーチェンバー”とは、2024.10.8、https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/919981b6f91a1289ec061307909e23ce

“フィルターバブル”とは、2017.8.24、https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/0e6637dd0e320f27e16caf4bf6f9a9d8


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“エコーチェンバー”とは

2024-10-08 23:44:07 | 学術・サイエンス・概念など

ネット上(デジタ空間)上のSNS利用により引き起こされる現象とされています。X(旧ツイッター)などのSNS上で自分と同じような意見を見聞きし続けることによって自分の意見が増幅・強化され、あたかも自分に対する異論が存在しないかのようになっている状況を指しているようです。自分と同じような意見があらゆる方向から返ってくることを「人工的に反響(エコー)を作り出す残響室(チェンバー)」に例えて、このように呼んでいます※1。

SNSの利用形態は、自分と同じような意見を持つ人をフォローしたり、その人の意見に共感(”いいね”)したりしながら、情報発信や検索・閲覧を繰り返していくといった形が基本です。さらに、SNSのサービス提供側は、収集した情報の分析結果に基づき利用者自身の興味・関心に沿った情報を届けるような戦略を取るのが普通です。SNS利用に関するこうした特徴から起こりやすい現象と考えられています。

類似の用語として、"サイバーカスケード(Cyber cascade)※2"や”フィルターバブル(Filter bubble)※3”と呼ばれるものが知られています。前者は、ネット上で特定の意見を持つ人たちが強力に結びついて先鋭化し他を排除していく様子を階段状に連続している滝に例えたもので、一方後者は、自分の見たい情報(自分と似た意見の情報)ばかりが集まり見たくない情報から隔離されて目に入らなくなる状況を孤立した泡に例えたものです。

これらの用語が意味する状況に陥ると、誤情報でも正しいと信じてしまったり、異なる考え方や価値観に触れにくくなって視野が狭まったり考えが偏ったりといった問題が生じ得ます。SNSの進展にAIの登場も相まって、これらが社会問題化する傾向にあります。情報化社会の健全化に向け、こうした問題の軽減・回避が望まれます。

※1 米国の法学者でハーバード大学教授の”キャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)"の2001年の著書『インターネットは民主主義の敵か』(石川幸憲訳、毎日新聞社、2003年)の中で、インターネット時代におけるエコーチェンバー現象に関して言及しているとのことです。

※2 米国の法学者でハーバード大学教授の”キャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)"の2001年の著書『インターネットは民主主義の敵か』(石川幸憲訳、毎日新聞社、2003年)の中で提唱されたとのことです。

※3 米国のインターネット活動家"イーライ・パリサー(Eli Pariser)"の2011年の著書『The Filter Bubble(邦題:閉じこもるインターネット、井口耕二訳、早川書房、2012年 )』で提唱されています。


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“アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias)”とは

2022-12-02 23:27:33 | 学術・サイエンス・概念など

直訳すると、”Unconscious (無意識の)”、”Bias(バイアス、先入観、偏見、思い込み)”です。即ち、過去の経験や知識、価値観、信念に基づき、物事の認知や判断を、人の属性などから無意識に行い、何気ない発言や行動をする様(さま)を指しているようで、だれにでも存在しているようです。

例えば、性別、世代、学歴、血液型などで相手を見てしまう、任せる仕事や役割を決めてしまう、などです。多くの事例が存在する(している)ようです。

アンコンシャス・バイアスによる行動は、それによって相手を知らず知らずのうちに傷つけたり、自分自身の可能性を狭めたり、することにつながりかねないため、その存在を理解し、そうならないようにする心掛けが必要のようです。研修機関もあるようです(※)。

※ 例えば、https://www.qualia.vc/unconscious-bias/about/(株式会社クオリア、2006年10月24日設立)を参照。また、研修の動画のサイトとして、例えば、https://www.youtube.com/watch?v=vrakdbhOe1I&t=2497sがあります。

”SDGs”、”ダイバーシティー(Diversity)”、”インクルーシブ(Inclusive)”などと言った言葉とともに、最近、注目されつつある言葉のようです。なお、”アンコンシャス・バイアス”を含む、日経新聞各紙の記事件数の推移は、下図のようになっています。

 


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"トポロジカル・フォトニクス"とは

2022-10-06 23:13:57 | 学術・サイエンス・概念など

私たちの生活に不可欠な存在となりつつある「光・フォトニクス技術」に、形を扱う数学の”トポロジー※1”という概念を導入することで、光を制御し活用の可能性を考えようというもので、新たな研究テーマとして注目され、ここ2、3年、年間100本以上の論文が発表されているようです。

※ 1「ものの形をざっくり区別する数学」などとも説明されています。通信の世界でも、バス型、リング型、スター型といったLANのネットワーク形状が「トポロジー」などと表現されたりします。

「バンドトポロジー」と呼ばれる概念を「フォトニック結晶」などの周期構造中の光に適用することで、新たな機能を発現・応用しようとする研究のようです(※2)。シリコン材料の半導体分野の起爆剤となり新たな革新を起こす可能性が期待されているようです。

※2 2020年1月21日、国立情報学研究所主催の市民講座にて、東京大学先端科学技術研究センターの岩本敏教授が、「トポロジーで光を操る-光はボールとドーナツを見分けるか-」と題する講演をされています。https://www.facebook.com/jouhouken/posts/2711117152304226を参照。

今後の研究動向が注目されます。


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"Well-being"とは

2022-04-09 23:49:48 | 学術・サイエンス・概念など

例えば、「デジタル大辞泉」によると、以下のように説明されています。

1. 幸福。安寧。

2. 身体的・精神的・社会的に良好な状態。特に、社会福祉が充実し、満足できる生活状態にあることをいう。

抽象度の高い漠然とした言葉ですが、であるが故に、多様性(ダイバーシティ)・包摂性(インクルージョン)が重要視される最近の社会において人間としての良い状態を一言で表現する際に適切な言葉として分野を問わず最近使用されるようになってきています。「Well-being社会」などと使われたりもします。

この言葉は、その昔、1948年のWHO(World Health Organization、”世界保健機関”)憲章の中で使用された※1ようですが、最近ではOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development 、経済協力開発機構)※2や2015年に国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)※3においても使用され注目されています。

※1)WHOの憲章の中で「健康」を、”Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity(健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう).”と定義しており、この定義の中でWell-beingという言葉を使用しています。

※2)例えば、以下を参照

『How's Life?: Measuring Well-being』, OECDPublishing, Paris, 2011年,

https://www.oecd-ilibrary.org/economics/how-s-life_9789264121164-en

※3 17の目標の中の3番目(Good Health and Well-Being)に登場します。

SDGsとの絡みなどから、最近では企業でもWell-beingの取り組みを重視する動きが出てきています。例えば、以下のブログ("NTT Green Innovation toward 2040(NTT)"とは、2022.3.19)を参照。

https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/3e427259c58acc4e8071730b64177d64


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“ABC予想(abc conjecture)”とは

2020-04-03 23:33:19 | 学術・サイエンス・概念など

1985年にスイスとフランスの数学者(ジョゼフ・オステルレ、デイヴィッド・マッサー)によって提示された、数学特に整数論の分野の難問です。両者の名前をとって“オステルレ–マッサー予想”とも呼ばれているようです。これまで35年間その予想の証明ができていなかったようです。

この予想を平たく表現すると、「1以外に共通の約数を持たない2つの正の整数a、bにおいて、a+b=cとし、a、b、cそれぞれの素因数(即ち、自然数の約数になる素数)を掛け合わせたものをdとするとき、c>dとなることは珍しい(注:定式表現は略)」というもので、この予想を証明することが難かしかったようです。

京都大学数理解析研究所(数理研)の望月新一教授が、自ら開発した新たな手法である“宇宙際(うちゅうさい)タイヒミュラー理論”というものを用いて2012年に証明し、その内容を同教授のホームページへ公表するとともに雑誌へ投稿していましたが、内容が難しく査読に時間を要した結果、2020年4月になってようやく正しさが検証されたとのことで、数理研が発行する国際的な数学誌「PRIMS(ピーリムス)」に掲載されることが決まったようです。これにより、35年間未解決となっていた“ABC予想”の正しさの証明がなされ難問が解けたということです。

ちなみに、この難問は、過去における“フェルマーの最終定理”や“ポアンカレ予想”と呼ばれるものと同等レベルの難しさだそうです。数学分野のノーベル賞にあたる“フィールズ賞”級の業績だそうです。なお、望月教授が開発した上記理論は他の整数論の問題を解く強力な道具にもなると期待されており、今回の証明の正しさが認められたことは他の様々な難問の解決へのインパクトも与えるのではないかと考えられています。

類似内容の動画のサイトは、https://www.youtube.com/watch?v=7BnxK_NMwaQです。


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“デジタル・トランスフォーメーション”とは

2019-03-05 23:15:04 | 学術・サイエンス・概念など

「デジタル変革」あるいは「DX」などとも呼ばれます。

アナログをデジタルに変換する「デジタル化」とは全く異なります。デジタル化を通しての変革と言えます。第4次産業革命時代、主に企業において起こりつつあるメガトレンドです。

この概念を説明する際、第4次産業革命、環境変化・ゲームチェンジ、産業境界の破壊、価値(コスト、体験、プラットフォーム等)の創出、企業の存続・生き残り、事業・組織・ビジネスモデル転換、戦略的・構造的転換、イノベーション、生活・働き方変革、などのキーワードが用いられています。

この概念は、2004年、スウェーデンのエリック・ストルターマン教授らによって提唱されました。以下の文献です。

E. Stolterman and A. C. Fors. “Information Technology and the Good Life,” in Information Systems Research:Relevant Theory and Informed Practice, B. Kaplan et al. (eds), London, UK: Kluwer Academic Publishers, 2004.

http://www8.informatik.umu.se/~acroon/Publikationer%20Anna/Stolterman.pdf

このp.687のAbstract内に以下のような記述があります。

「The position is also framed around an empirical and theoretical understanding of the evolving technology that we label the digital transformation in which an appreciation of aesthetic experience is regarded to be a focal methodological concept.」

デジタルトランスフォーメーションの成功事例として、UberやAirbnbが知られています。最近では、我が国でも、トヨタ自動車が「自動車をつくる会社」から「モビリティ・カンパニー」への変身を表明したり、パナソニックが「暮らしをアップデートする会社になる」と宣言したりしています。


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"ハイプ・サイクル(ガートナー)"とは

2017-10-18 23:17:46 | 学術・サイエンス・概念など

ガートナーによって提唱されたもので、以下のような説明がされています。

「ハイプ・サイクルは、市場に新しく登場したテクノロジーがまず過熱気味にもてはやされ、熱狂が冷める時期を経てから、市場が確立し、市場分野における意義や役割が理解されるようになるまでの典型的な経過を、横軸に「時間の経過」、縦軸に「市場からの期待度」を表す波形曲線で示したものです。」

新規テクノロジーが市場に受け入れられるまでにほぼ同じような経過をたどる、との考えの下に、市場の成熟の過程が、「黎明期」、「『過度な期待』のピーク期」、「幻滅期」、「啓蒙活動期」、「生産性の安定期」の5つの段階で示され、各キーワードがどのような段階のどの辺に位置するかが毎年ハイプ曲線※上に示されます。

※)関連ブログ(”ハイプ曲線”とは、2007.2.21)のサイト:https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/e55dccda2473d490386d8141c960dcd4

2017年版のガートナージャパンのサイトは、https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20171003-01.htmlです。

ハイプ・サイクルについての説明サイトは、http://www.gartner.co.jp/research/methodologies/hype_cycle.phpです。


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