犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

劇場版「孤独のグルメ」の個人的な楽しみ方

2025-02-10 00:00:36 | 日々の暮らし(2021.2~)

写真:劇場版「孤独のグルメ」(公式サイト)

 遅ればせながら、妻と一緒に劇場版の「孤独のグルメ」を、家から最も近い映画館に観に行きました。

 妻と二人で映画を観るのはいつ以来だろう。最後に映画館で映画を観たのはいつだっけ?

 ソウルから帰国後の約20年、映画を映画館で観ることはほとんどなく、海外出張時の飛行機内で観ることが多かったのです。

 カンヌでパルム・ドールをとった「万引き家族」を観たような気がするけれども、夫婦二人じゃなく、だれか娘もいっしょだったような。

 封切りから時間が経っているので、上映回数は1日1回。それでも客席はまばらです。

※ 以下、ネタバレあり

 冒頭の舞台はフランス。

(海外ロケか)

 機内食を食べ損なった井之頭五郎がパリのレストランで最初に食べるのが、オニオングラタンスープビーフ・ブルギニョン

「あれ、フランスで食べたよね」

 隣の席の妻に小声でささやきます。

 10年ほど前、留学中の娘に会いにディジョンにいったとき、当地の名物料理のブフ・ブルギニョンを食べたことがあります(リンク)。

 注文された絵を納品したあと、依頼人であるパリ在住の日本人のおじいさんから

「子供の頃に飲んだ、母のスープが忘れられない。ぜひレシピを調べてほしい」

と頼まれた五郎。

 おじいさんの故郷は長崎県五島列島です。

 現地調査に行って、食材を求める過程で、海で遭難した五郎は、ある島に打ち上げられる。気がついてみると、その島は日本ではなく、韓国の南風島(ナムプンド)という孤島なのでした。

(韓国!)

 そこには食品研究所があり、韓国人スタッフとともに一人の日本人女性がいる。その夫は、フランス料理のシェフだったのに、こだわりのラーメン屋を始め、コロナ禍で経営が行き詰まったため、二人は別れてしまった。そして彼女は韓国の孤島に渡った…。

(フランス料理のシェフからラーメン屋!)

「西山屋と同じだね」


 また隣の妻を小突きます。

 西山屋というのは、わが街飯能にあるラーメンの名店。インターコンチの料理長だった人が始めたラーメン屋で、出汁や具材に徹底的にこだわっています。スープは、長崎県のトビウオからとった「あごだし」を使っているのです。(リンク

 さらに、研究所には「謎の米兵」がいて、名前はダニエル。

(ダニエルだって!)

 ダニエルというのは、私の三女の夫(フィリピン人)と同じ名前。

 韓国に不法入国した形になった五郎は、もっと大きい巨済島(コジェド)の旧助羅(クジョラ)という海岸の街に護送されます。韓国の法務部の係官を待っているうちに、空腹に耐えかねて、海岸の食堂で食べたのがファンテ・ヘジャングク

(ファンテ・ヘジャングク!!)

「あれもソウルで食べたよね」

 ファンテ・ヘジャングクというのは、スケソウダラの干物で出汁をとったスープのことで、別名ブゴグク。そこにごはんを投入してクッパのように食べるのが美味。ソウルの市庁近くに名店があり、駐在中によく行きました。10数年前、妻と二人で観光旅行に行ったときにも食べました(リンク)。現在、韓国を旅行中の知人にも、お勧めしたばかりでした。

 東京に帰った五郎は、五島列島で当たりをつけた食材を持ち帰り、おじいさんのスープの再現を試みますが、自分では料理できない。

 そこで孤島でお世話になった女性の元夫がやっているラーメン屋に協力を依頼します。

 五島列島で見つけた深海魚(エソ)の煮干しの出汁は、ほかの素材とマッチしない。

 このとき、五郎は、依頼人のおじいさんの言葉を思い出します。

(スープを作ってくれた母は、一時韓国に住んでいたんだよ)

「わかった! ファンテだ!」


 五郎は韓国のファンテを取り寄せ、「おじいさんのスープ」が完成します。

 ファンテを持ってきてくれたのが五郎の友人の滝山(村田雄浩)、それを使ってラーメンを作る店主を演じるのはオダギリジョー




「なんか、いつも見慣れた顔だね」

 今、昼の時間に再放送中のNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」を録画し、週末にまとめて見ているのですが、ちょうどこの日の午前中に見た回では、トランぺッターの錠一郎(オダギリジョーがコンテストに出ているとき、主人公のるいが身を寄せている洗濯屋の夫婦は映画館で「妖術七変化」という映画を観ている。洗濯屋の主人は村田雄浩、「妖術七変化」で立ち回りを演じているのが松重豊演じる伴虚無蔵

「孤独のグルメ」の主演・監督の松重豊は、「カムカム」が縁で懇意になったオダギリジョーと村田雄浩に、劇場版「孤独のグルメ」への出演を依頼したのかもしれません。

「おもしろかったね!」

 最後のエンドロールを見ていたら…

 映画の中でダニエルと呼ばれていた謎の米兵のフルネームが「ダニエル八田」(俳優名はマイケル・キダ)であることがわかり、二人で爆笑しました。

 私の娘の(つまりは私の)名字は「八田」なのです。

 ここで盛り上がっている観客は私たちだけ。当たり前ですね。

 この映画、個人的に大いに楽しめました。

 最後の最後、五郎が観客に向かって

「お腹、空いてきたでしょ?」

と語り掛ける。

 急に空腹を感じた私たちは、帰り道にあったスシローに入り、期間限定メニュー「鯛白湯ラーメン」を食べたのでした。



 蛇足ながら、前出「ダニエル」役のマイケル・キダは、朝ドラ「カムカム…」の終盤に、ハリウッド映画「サムライ・ベースボール」の主役、マット・ロリンズ役で出たんだそうです。

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