スマホが普及して、若者が本を読まなくなったと言われます。
でも、本だけではない。テレビも見なくなった。よく行くバーの若いバーテンたちに話を聞いても、みな、スマホで映画はよく見るけれど、テレビは見ないという若者が多い。中には、テレビを持っていないという人も珍しくありません。
私の子どもの頃は、まさにテレビの時代でした。
私が物心ついたころ、わが家のテレビはまだ白黒でした。アポロ11号が月面着陸した時、私は近所の電気屋さんに、カラーの映像を見に行った記憶があります。
家に、ソニーの「トリニトロン」が入ったのは、小学校3年生のとき、つまり昭和45年頃でした。当時、新聞のテレビ欄には、カラー放送に「カラー」という表示がありました。
日曜日の朝、わが家はきまって「時事放談」という政治討論番組を見ていました。おばまりとく(小汀利得)とかほそかわりゅうげん(細川隆元)とかいうおじいさんが、口角泡を飛ばしていましたが、小学生の私には内容はチンプンカンプン。
そのあとの、「兼高かおる世界の旅」というカラーの番組を楽しみにしていました。
これは、兼高かおるさんという女性リポーターが、世界のいろいろな国々を訪れ、文化などを紹介する旅番組。今から50年ぐらい前の話です。
当時の日本は貧しく、外貨持ち出し制限などがあって、海外旅行は夢のような話でした。番組で紹介される国々の習俗は珍しく、子どもの好奇心をかきたてました。そのころの、外国に対する漠然とした憧れの気持ちが、大学生になったときのフランスへの語学留学、その後の西ヨーロッパ諸国の貧乏旅行につながったのかもしれません。
ところで、この番組の主人公、兼高かおるさん(本名兼高ローズさん)は、昨年(2019年)、90歳で亡くなり、追悼番組も組まれました。それから約2年経った今、なんで思い出したかというと、最近読んだ『パチンコ』という小説の中に、「兼高かおる世界の旅」をモデルにしたような番組が出てきたからです。
舞台は1979年の大阪、ソンジャの母親ヤンジンが胃がんで闘病しているとき、お気に入りの番組だったのが、『異国の空から』。この番組は、「樋口さん」という年配の女性レポーターが世界各国を訪れ、異国に移住した日本人を取材するというもの。それを、ソンジャとヤンジンは「新品のソニーのカラーテレビ」で見ているのですね。
樋口さんは、同世代の女性としては異色の存在だ。生涯独身で子供がおらず、世界中を旅した経験を持ち、どれほど立ち入った質問でもさらりと答えを引き出してしまう経験豊かなジャーナリストだ。コリアンの血を引いていると言われ、その噂を聞いた瞬間、ヤンジンとキョンヒは、どこへでも単身乗りこんでいく勇敢な樋口さんに共感を抱き、彼女にすっかり惚れ込んでいる。
「兼高かおる世界の旅」は、異国に移住した日本人を取材する番組ではありませんでしたし、兼高かおるさんの父親は、コリアンではなく、インド系イギリス人でしたので、これは、著者イ・ミンジン氏の創作でしょう。小説の中の在日コリアンは、「樋口さん」が取材する異国に住む日本人の苦労話に、自らの異国生活の苦労を重ね合わせているわけです。
イ・ミンジン氏は、2007年から2011年に日本に滞在していたそうですが、2008年から不定期で放送されていた『世界の村で発見! こんなところに日本人』という番組を見て、この架空の番組を思いついたのではないでしょうか。
でも、本だけではない。テレビも見なくなった。よく行くバーの若いバーテンたちに話を聞いても、みな、スマホで映画はよく見るけれど、テレビは見ないという若者が多い。中には、テレビを持っていないという人も珍しくありません。
私の子どもの頃は、まさにテレビの時代でした。
私が物心ついたころ、わが家のテレビはまだ白黒でした。アポロ11号が月面着陸した時、私は近所の電気屋さんに、カラーの映像を見に行った記憶があります。
家に、ソニーの「トリニトロン」が入ったのは、小学校3年生のとき、つまり昭和45年頃でした。当時、新聞のテレビ欄には、カラー放送に「カラー」という表示がありました。
日曜日の朝、わが家はきまって「時事放談」という政治討論番組を見ていました。おばまりとく(小汀利得)とかほそかわりゅうげん(細川隆元)とかいうおじいさんが、口角泡を飛ばしていましたが、小学生の私には内容はチンプンカンプン。
そのあとの、「兼高かおる世界の旅」というカラーの番組を楽しみにしていました。
これは、兼高かおるさんという女性リポーターが、世界のいろいろな国々を訪れ、文化などを紹介する旅番組。今から50年ぐらい前の話です。
当時の日本は貧しく、外貨持ち出し制限などがあって、海外旅行は夢のような話でした。番組で紹介される国々の習俗は珍しく、子どもの好奇心をかきたてました。そのころの、外国に対する漠然とした憧れの気持ちが、大学生になったときのフランスへの語学留学、その後の西ヨーロッパ諸国の貧乏旅行につながったのかもしれません。
ところで、この番組の主人公、兼高かおるさん(本名兼高ローズさん)は、昨年(2019年)、90歳で亡くなり、追悼番組も組まれました。それから約2年経った今、なんで思い出したかというと、最近読んだ『パチンコ』という小説の中に、「兼高かおる世界の旅」をモデルにしたような番組が出てきたからです。
舞台は1979年の大阪、ソンジャの母親ヤンジンが胃がんで闘病しているとき、お気に入りの番組だったのが、『異国の空から』。この番組は、「樋口さん」という年配の女性レポーターが世界各国を訪れ、異国に移住した日本人を取材するというもの。それを、ソンジャとヤンジンは「新品のソニーのカラーテレビ」で見ているのですね。
樋口さんは、同世代の女性としては異色の存在だ。生涯独身で子供がおらず、世界中を旅した経験を持ち、どれほど立ち入った質問でもさらりと答えを引き出してしまう経験豊かなジャーナリストだ。コリアンの血を引いていると言われ、その噂を聞いた瞬間、ヤンジンとキョンヒは、どこへでも単身乗りこんでいく勇敢な樋口さんに共感を抱き、彼女にすっかり惚れ込んでいる。
「兼高かおる世界の旅」は、異国に移住した日本人を取材する番組ではありませんでしたし、兼高かおるさんの父親は、コリアンではなく、インド系イギリス人でしたので、これは、著者イ・ミンジン氏の創作でしょう。小説の中の在日コリアンは、「樋口さん」が取材する異国に住む日本人の苦労話に、自らの異国生活の苦労を重ね合わせているわけです。
イ・ミンジン氏は、2007年から2011年に日本に滞在していたそうですが、2008年から不定期で放送されていた『世界の村で発見! こんなところに日本人』という番組を見て、この架空の番組を思いついたのではないでしょうか。
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