犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

男たちの旅路

2023-12-09 22:20:27 | 思い出

 脚本家の山田太一さんが亡くなりました。享年89歳。ご冥福をお祈りします。

 さまざまな作品の中で、私にとっては『男たちの旅路』が印象に残っています。

 私が高校生、大学生のときに放映されていました。当時、私はビデオデッキをもっていなかったので、毎回、見のがさないように注意していました。

 大学でフランス語を専攻し、フランスへの短期の語学留学の資金を貯めるため、ガードマンのアルバイトをしたことも、このドラマに夢中になった理由の一つです。

 ドラマでは、さまざまな人生経験を積んだ人々がガードマンをしていましたが、私が働いたガードマン会社もまた面白い人たちがいました。

 会社が倒産して転職してきた「所長」。

「昔は『雷族』(暴走族)で鳴らしたものさ」が口癖の初老のガードマン。

 大卒はほとんどおらず、中には八丈島で「島の女を回して」少年鑑別所からでてきたばかりという、19歳の青年もいました。

 深夜、2交代で勤務して、一晩1万円もらえたと記憶します。

 警備の場所(霞が関の総合庁舎)の裏口の電話ボックスのような詰所にただ座っていればいい。睡魔との闘いです。

 1セット5万円ぐらいの高額なフランス語のテープ教材を、ラジカセでずっと流していました。

 「男たちの旅路」に出てくるような事件や劇的な出来事のあるはずもない。

 あるとき、居眠りをしていたところ、ボックスを敲く音がする。

 残業して夜中にタクシー券で帰っていく官僚の一人が、声をかけてきたのです。

「道の真ん中に、猫が轢かれてるから、片付けといて」

(敷地内じゃないのに、ぼくの仕事なのかなあ)

 寝ぼけまなこで、まだ温かい猫の死骸を脇に寄せておいたことがありました。

 主演の鶴田浩二は、特攻隊の生き残りという設定でしたが、これは鶴田浩二自身の経験だと聞いたことがあります。

 主な登場人物の水谷豊、桃井かおりもいい味を出していました。

 今、朝ドラ『ブギウギ』でヒロインを演じている趣里さん(福来スズ子役)は、水谷豊と伊藤蘭(元キャンディーズ)の娘なんだそうですね。

 時代の流れを感じます。

 そういえば、在日韓国人作家の高史明さんが今年7月、91歳で亡くなりましたが、この方も特攻隊の生き残りでした。

高史明の場合

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