脚本家の山田太一さんが亡くなりました。享年89歳。ご冥福をお祈りします。
さまざまな作品の中で、私にとっては『男たちの旅路』が印象に残っています。
私が高校生、大学生のときに放映されていました。当時、私はビデオデッキをもっていなかったので、毎回、見のがさないように注意していました。
大学でフランス語を専攻し、フランスへの短期の語学留学の資金を貯めるため、ガードマンのアルバイトをしたことも、このドラマに夢中になった理由の一つです。
ドラマでは、さまざまな人生経験を積んだ人々がガードマンをしていましたが、私が働いたガードマン会社もまた面白い人たちがいました。
会社が倒産して転職してきた「所長」。
「昔は『雷族』(暴走族)で鳴らしたものさ」が口癖の初老のガードマン。
大卒はほとんどおらず、中には八丈島で「島の女を回して」少年鑑別所からでてきたばかりという、19歳の青年もいました。
深夜、2交代で勤務して、一晩1万円もらえたと記憶します。
警備の場所(霞が関の総合庁舎)の裏口の電話ボックスのような詰所にただ座っていればいい。睡魔との闘いです。
1セット5万円ぐらいの高額なフランス語のテープ教材を、ラジカセでずっと流していました。
「男たちの旅路」に出てくるような事件や劇的な出来事のあるはずもない。
あるとき、居眠りをしていたところ、ボックスを敲く音がする。
残業して夜中にタクシー券で帰っていく官僚の一人が、声をかけてきたのです。
「道の真ん中に、猫が轢かれてるから、片付けといて」
(敷地内じゃないのに、ぼくの仕事なのかなあ)
寝ぼけまなこで、まだ温かい猫の死骸を脇に寄せておいたことがありました。
主演の鶴田浩二は、特攻隊の生き残りという設定でしたが、これは鶴田浩二自身の経験だと聞いたことがあります。
主な登場人物の水谷豊、桃井かおりもいい味を出していました。
今、朝ドラ『ブギウギ』でヒロインを演じている趣里さん(福来スズ子役)は、水谷豊と伊藤蘭(元キャンディーズ)の娘なんだそうですね。
時代の流れを感じます。
そういえば、在日韓国人作家の高史明さんが今年7月、91歳で亡くなりましたが、この方も特攻隊の生き残りでした。
高史明の場合
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